ご家族向け・身柄拘束中に止まってしまう行政手続|住民税・国民健康保険・国民年金の納付、在留カードの住居地届出、マイナンバーカード、在留期間更新の期限が来るとき
2026/09/14
「本人が逮捕されてから、家に届く郵便物をどうすればいいのか分からない」。ご家族からのご相談は、事件の内容だけでなく、生活の手続に及びます。住民税の納付書、国民健康保険の保険証の更新、年金の納付案内、そして在留カードの有効期限。ご本人が留置施設や拘置所にいる間、これらの期限は止まりません。放置すれば延滞金が積み上がり、在留カードの期限切れは不法残留として、刑事事件とは別の退去強制事由を生みます。他方で、ご家族が代わりにできることには制度上の限界があり、善意で動いた結果が在留審査で不利に働くこともあります。この記事では、中国籍のご本人が身柄を拘束されている間に、ご家族が何をすべきか、何をしてはいけないかを、期限の順に整理いたします。
本記事の要点
- 逮捕から勾留決定までの約72時間はご家族の面会ができず、その後も接見等禁止(刑事訴訟法81条)が付けば面会も手紙も制限されるため、生活の手続の情報は弁護人を通じて伝える必要があります。
- 住民税には徴収猶予(地方税法15条)、国民健康保険料には減免・徴収猶予(国民健康保険法77条)、国民年金保険料には申請免除(国民年金法90条)の制度があり、ご家族が窓口で相談を始めることができます。
- 在留カードの住居地の届出(入管法19条の9)は新住居地に移転した日から14日以内が原則で、届出をしないと20万円以下の罰金の対象となり、90日以内に届け出なければ在留資格の取消事由(同法22条の4第1項9号)になりますが、留置施設や拘置所は住居地に当たらず、転出の届出をする必要はありません。
- 在留期間の満了日が拘束中に来る場合、更新の申請は本人が行うことが原則であり、申請をしないまま満了日を過ぎると不法残留(入管法24条4号ロ)となるため、弁護人を通じて入管に事情を説明し、申請の方法を早急に調整する必要があります。
- 刑事事件の帰結とは別に、在留資格は退去強制事由(入管法24条4号リ・4号の2)、在留資格の取消し(22条の4)、更新の不許可(21条3項)という3つの入口で失われ得るため、不起訴処分を最優先の目標に置くことが在留を守る道です。
まず知っておくべきこと。本人は動けず、ご家族ができることにも限界があります
逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。この間、ご家族は面会することができません。ご本人と会えるのは弁護人だけです(刑事訴訟法39条1項)。勾留が決まった後は原則として面会が可能になりますが、裁判所が接見等禁止の決定(同法81条)を付すと、弁護人以外との面会と手紙のやり取りが禁じられます。共犯者がいる事件や、被害者との接触が懸念される事件では、この決定が付くことが珍しくありません。
したがって、生活の手続に関する情報は、多くの場合、弁護人を通じてご本人に伝え、弁護人を通じてご本人の意思を確認することになります。どの郵便物が届いたのか、口座の残高はどうなっているのか、在留カードの期限はいつか。これらをご家族が整理し、弁護人に渡すことが、最初の一歩です。
一方で、ご家族が代わりにできることには限界があります。ご本人の署名を要する書類にご家族が代筆すること、ご本人の印鑑を使って手続をすること、ご本人名義の口座から勝手に送金することは、後に問題となり得ます。窓口での相談や情報の収集はご家族が進め、意思表示が必要な手続は弁護人を介してご本人の指示を受ける、という役割分担を基本にしてください。
住民税・国民健康保険・国民年金の納付はどうなりますか
納付義務は止まりません。ただし、いずれにも支払を先送りし、あるいは減らす制度があります。
住民税については、地方税法15条が徴収猶予の制度を定めています。納税者が病気にかかった場合や事業を廃止・休止した場合など、一定の事実があって一時に納付できないと認められるときに、申請により1年以内の期間、徴収を猶予することができるものです。身柄の拘束そのものが猶予事由として明記されているわけではありませんが、拘束に伴って収入が途絶え、事業を休止したという事情は、この制度の相談の入口になります。ご家族が市区町村の窓口で事情を説明し、必要な書類を確認することができます。
国民健康保険料については、国民健康保険法77条が、市町村は条例の定めるところにより、特別の理由がある者に対し保険料を減免し、又は徴収を猶予することができると定めています。減免の基準は市区町村ごとに条例で異なりますので、お住まいの自治体の窓口で確認してください。なお、保険証の更新時期が拘束中に重なる場合、新しい保険証は住所地に郵送されるのが通常ですので、ご家族が受け取って保管しておくことになります。
国民年金保険料については、国民年金法90条が、前年の所得が一定額以下である場合などに、申請により保険料の納付を要しないものとする申請免除の制度を定めています。免除された期間は年金の受給資格期間に算入されます。所得の状況によっては、収入が途絶えた年の翌年に初めて要件を満たすこともありますので、免除の申請時期は年金事務所に確認してください。
いずれの手続も、ご本人の署名や委任状を求められることがあります。その場合は、弁護人が接見の際に署名を得る、あるいは弁護人が代理人として手続を行うといった方法で対応します。納付書をそのまま放置して延滞金が膨らむことだけは避けてください。延滞の事実は、後の在留審査で納税義務の履行状況として確認されることがあります。
在留カードの住居地の届出はどうすればよいですか
結論から申し上げますと、留置施設や拘置所に収容されている間、住居地の変更届出をする必要はありません。入管法19条の9第1項は、中長期在留者が住居地を変更したときは、新住居地に移転した日から14日以内に、新住居地の市区町村の長を経由して届け出ることを義務付けています。届出をしなかった者は20万円以下の罰金の対象となり(同法71条の5第2号)、届け出た住居地から退去した日から90日以内に新住居地を届け出ないことは、在留資格の取消事由となります(同法22条の4第1項9号)。しかし、留置施設や拘置所は、ご本人が生活の本拠として選んだ場所ではなく、在留カードに記載すべき住居地には当たりません。
注意していただきたいのは、ご家族が善意で住民票の転出届を出してしまうことです。家賃の負担を減らすために自宅を引き払い、住民票を抜いてしまうと、届け出た住居地から退去したことになり、90日を過ぎると取消事由に該当し得るうえ、釈放後の帰る場所がなくなり、勾留の判断でも不利に働きます。自宅を維持できない事情がある場合は、必ず弁護人に相談し、釈放後の居所と住居地届出の段取りを決めてから動いてください。
また、在留カードは、入管法23条2項により常時携帯が義務付けられており、携帯しなかった者は20万円以下の罰金の対象となります(同法75条の3)。逮捕時に在留カードが押収されたり、自宅に置いたままになっていたりすることがありますが、身柄拘束中はこの点が問題とされることは通常ありません。釈放時に在留カードが本人の手元に戻るよう、弁護人が確認します。
マイナンバーカードの期限が来たら
マイナンバーカードには、カード本体の有効期限と、電子証明書の有効期限があり、期限が近づくと自宅に通知が届きます。カードの更新や電子証明書の更新は、ご本人が窓口で行うのが原則ですが、多くの市区町村では、本人が来庁できないやむを得ない事情がある場合に、必要な書類を揃えた代理人による受取りや更新の手続を認めています。手続の可否と必要書類は自治体によって異なりますので、通知に記載された窓口に、ご家族から事情を説明して確認してください。
期限が過ぎても、マイナンバーそのものが失われるわけではなく、後日改めて申請できます。在留カードや年金の手続と比べれば、緊急性は高くありません。優先順位としては、在留期間の更新と住民税・保険料の手続を先に進めるべきです。
在留期間の満了日が拘束中に来るときは
この問題が、身柄拘束中に起こる行政手続の中で最も重大です。在留期間の更新は、入管法21条2項により、ご本人が申請しなければならず、同条3項により、更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されます。申請をしないまま在留期間の満了日を過ぎると、同法24条4号ロの不法残留として退去強制事由に該当し、同法70条1項5号の罪にもなります。刑事事件で不起訴になったとしても、在留期間が切れていれば、釈放と同時に入管に収容されるという事態が現実に起こります。
したがって、在留カードの有効期限を確認し、満了日が拘束中に来る可能性がある場合は、直ちに弁護人に伝えてください。弁護人は、入管に対して身柄拘束中である事情を説明し、申請書類の準備と提出の方法を調整します。申請に必要な書類(在職証明、課税証明、配偶者の戸籍など)は、ご家族が集めることができます。申請が受理されれば、満了日までに処分がされない場合でも、処分の時又は満了日から2か月を経過する日のいずれか早い時までは、従前の在留資格で在留を続けることができます(同法21条4項が準用する20条6項)。
ただし、更新が許可されるかどうかは別の問題です。逮捕・勾留されている事実、退学や解雇の有無、納税の状況は、いずれも審査の対象になります。更新の申請と刑事弁護は、同じ弁護人が一体として進めることが望ましく、刑事事件で不起訴を得ることが、更新の許可にも直結します。
学校・勤務先への届出と、在留資格の取消し
留学生であれば、大学や専門学校から退学処分を受けると、留学の活動を行っていない状態となり、入管法22条の4第1項5号又は6号の在留資格取消事由が問題になります。就労資格の方であれば、勤務先との契約が終了したときは、同法19条の16により、14日以内に入管への届出が必要です。技能実習生が実習先から離脱した場合も同様です。
ご家族にお願いしたいのは、学校や勤務先に対して、ご本人に無断で退学や退職の意思を伝えないことです。学校や勤務先から連絡が来た場合は、弁護人から説明する旨を伝え、対応を弁護人に委ねてください。学校や勤務先が在留の基礎である以上、そこでの地位をできる限り保つことが、刑事事件の帰結にかかわらず在留を守る前提になります。
想定される刑事手続の流れ
ご家族の目線で整理いたします。逮捕の連絡が来てから48時間以内に警察から検察官への送致があり、その後24時間以内に勾留の請求がされるかどうかが決まります。勾留が認められれば原則10日間、延長されれば最大でさらに10日間の拘束が続き、その間に起訴か不起訴かが判断されます。起訴されれば、保釈が認められない限り拘束は公判まで続きます。
この流れの中で、ご家族が動けるのは、最初の72時間に弁護人を選任し、生活と在留に関する情報を弁護人に集約することです。在留カードの期限、納付書、学校や勤務先からの連絡、口座の状況を一覧にして弁護人に渡してください。ご本人が留置施設にいる間、外の期限を管理できるのはご家族と弁護人だけです。
在留資格への影響は、3つの入口で考えます
刑事事件の帰結と在留の帰結は、別々に考える必要があります。入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を掲げ、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除いています。他方、留学や就労などの別表第一の在留資格の方については、4号の2が、刑法の窃盗や詐欺、傷害、文書偽造など一定の章に属する罪で拘禁刑に処せられた場合を、執行猶予の有無を問わず退去強制事由としています。さらに、本記事で触れた不法残留(4号ロ)は、刑事事件とは無関係に、在留期間の管理だけで生じます。
これに加えて、在留資格の取消し(22条の4第1項5号・6号・9号)と、在留期間更新の不許可(21条3項)があります。国や地方公共団体の職員は、退去強制事由に該当すると思料する外国人を知ったときは通報する義務を負っており(同法62条2項)、刑事手続の情報は入管に伝わることを前提に考えるべきです。
不起訴処分を最優先の目標とする理由
当事務所は、外国籍の方の刑事事件では、執行猶予判決を目標に置くのではなく、起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先の目標としています。別表第一の在留資格の方は、罪名によっては執行猶予でも4号の2により在留を失い得ますし、別表第二の方であっても、有罪判決の存在は更新や取消しの審査で不利に働きます。そして本記事で触れたとおり、身柄拘束が長引くほど、納付の遅れ、学校や勤務先との関係、在留期間の管理という周辺の問題が積み重なり、在留の審査に響きます。早期の釈放と不起訴処分は、刑事の結論であると同時に、在留を守る手段でもあります。
ご家族が最初にすべき3つのこと
第1に、黙秘権をご本人に伝えることです。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べに先立って供述を拒めることを告げるよう求めています。ご家族が面会できない最初の72時間にご本人が何を話すかは、弁護人を通じて方針を伝えるほかありません。「正直に全部話せば早く出られる」という助言は、多くの場合、逆の結果を招きます。
第2に、できる限り早く私選の弁護人を選任することです。刑事弁護と在留の手続、生活の手続の調整を一体として担えるのは、事件を継続して担当する弁護人だけです。逮捕直後の当番弁護士は一度きりの接見が原則であり、その後の手続には関与しません。
第3に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳は捜査のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から公判まで、依頼者ご本人のために動く通訳をご利用いただけます。中国本土にお住まいのご家族との連絡も、通訳を介して直接に行います。
当事務所のご案内と解決事例
舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。身柄拘束中の生活と在留の手続は、刑事弁護と切り離せませんので、担当を分けずに一人の弁護士がご家族との窓口を務めます。外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、ご家族が日本語に不慣れであっても、直接にご相談いただけます。
在留資格を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現させ、入管が公表する過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例があります。在留期間が切れた後であっても、道が閉ざされるわけではないことを示す事例です。
また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べへの抗議と主張立証を重ね、全件について不起訴処分を得た事例があります。拘束が長期に及ぶ事件で、ご家族と連絡を取り合いながら生活と在留の手続を並行して進めた経験は、この記事の内容の基礎になっています。
結語
ご本人が身柄を拘束されている間、外の世界の期限は止まりません。しかし、住民税も保険料も年金も、猶予や減免の制度が用意されており、在留カードの住居地は動かす必要がなく、在留期間の更新も弁護人を通じて手当てすることができます。必要なのは、ご家族が慌てて独自に動くことではなく、届いた書類と期限を整理して弁護人に集約し、役割を分担することです。事件の結論を待つ間にも、生活と在留の土台は守ることができます。そのための最初の一歩を、早い段階で踏み出してください。
本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。
過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年9月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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中文版(简体字):写给家属・羁押期间会停滞的行政手续|住民税、国民健康保险、国民年金的缴纳,在留卡的住址申报,个人编号卡,在留期间更新期限到来时怎么办
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東京を中心に刑事事件の弁護
東京にて行政事件に関する対応
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