舟渡国際法律事務所

無銭飲食・食い逃げ・無賃乗車で警察に呼ばれたとき|詐欺罪(刑法246条)が成立する場合としない場合、在留への影響

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無銭飲食・食い逃げ・無賃乗車で警察に呼ばれたとき|詐欺罪(刑法246条)が成立する場合としない場合、在留への影響

無銭飲食・食い逃げ・無賃乗車で警察に呼ばれたとき|詐欺罪(刑法246条)が成立する場合としない場合、在留への影響

2026/09/14

「財布を忘れたことに気づいて、怖くなって店を出てしまった」「タクシーを降りるときに、持ち合わせが足りなかった」。居酒屋やラーメン店での無銭飲食、タクシー料金の不払いは、一見すると些細な出来事に思えます。しかし日本では、これらの行為が詐欺罪として立件され、外国人の方については在留資格の問題に直結することがあります。他方で、同じ食い逃げに見えても、法律上は犯罪が成立しない場合もあります。境界を分けるのは、注文したとき、乗車したときに、支払う意思があったかどうかという一点です。本記事では、詐欺罪が成立する場合としない場合の境界を条文と判例に即して整理し、警察に呼ばれたときの対応と在留への影響を説明します。

本記事の要点

  • 注文や乗車の時点で支払う意思も能力もなかった場合は、刑法246条1項(財物)又は2項(役務などの利益)の詐欺罪が成立し、法定刑は10年以下の拘禁刑で罰金の定めがありません。
  • 注文時には支払うつもりがあり、食べ終えた後に黙って逃げただけの場合は、店を欺いて支払を免れたとはいえず、いわゆる利益窃盗として処罰規定がないため詐欺罪は成立しません。
  • 食べ終えた後でも「財布を取ってくる」などと店員を欺いて店外に出た場合は、2項詐欺が成立し得ます。
  • 詐欺罪は法定刑に罰金がないため、起訴されれば略式手続による罰金では終わらず、別表第一の在留資格の方は執行猶予判決でも入管法24条4号の2に当たり得ます。
  • 被害額が少額で弁償が済んでいれば微罪処分や不起訴処分で終わる可能性が十分にあり、初動で支払意思の存在を正確に説明することが決定的に重要です。

無銭飲食は、どの条文のどの罪になるのですか

詐欺罪です。刑法246条1項は、人を欺いて財物を交付させた者を10年以下の拘禁刑に処すると定め、同条2項は、同じ方法で財産上不法の利益を得た者も同様とすると定めています。飲食店で料理や酒を注文して提供を受ける行為は、料理という財物の交付を受けるものですから、最初から代金を支払う意思がないのに注文すれば、注文という行為自体が「支払う客である」と装う欺く行為に当たり、店は誤信して料理を提供したことになります。これが1項詐欺です。

タクシーや宿泊はやや異なります。運送や宿泊は財物ではなく役務ですから、乗車時や宿泊時に支払う意思がないのに利用すれば、役務という財産上の利益を欺いて得たものとして2項詐欺が問題になります。いずれも法定刑は10年以下の拘禁刑であり、窃盗罪(刑法235条)と違って罰金刑の定めがない点が、後で述べる在留への影響の分かれ目になります。

なお、詐欺罪には未遂の処罰規定があります(刑法250条)。注文したものの、料理が出てくる前に店員に気づかれた場合でも、未遂として立件される余地があります。

注文したときは払うつもりだった場合、罪になりますか

詐欺罪は成立しません。詐欺罪の欺く行為は、財物や利益を受け取る時点で存在しなければなりません。注文時に支払う意思と能力があり、料理も普通に食べたのであれば、店は欺かれて料理を出したのではなく、通常の取引として料理を出しています。食べ終えた後に財布を忘れたことに気づき、あるいは支払いたくなくなって、店員の目を盗んで黙って店を出た場合、その時点で欺く行為はなく、店員が誤信して支払を免除したという処分行為もありません。

このような、代金債務を免れるという利益を相手の処分行為なしに得る行為は、講学上「利益窃盗」と呼ばれます。窃盗罪(刑法235条)は「財物」を窃取した場合だけを処罰し、利益の窃取を処罰する規定は置かれていないため、利益窃盗は不可罰とされています。日本の刑法が財物と利益を区別して定めていることの帰結です。

この境界を示した判例として、最高裁昭和30年7月7日決定(刑集9巻9号1856頁)があります。飲食後に代金を支払わずに店を出た事案について、店側が支払を猶予するなどの処分行為をしていない以上、単に逃走しただけでは2項詐欺は成立しないという理解が、この決定を基礎に定着しています。

もっとも、刑事上は不可罰でも、代金を支払う民事上の義務は当然に残ります。また、注文時に支払意思があったかどうかは、ご本人の内心の問題であり、所持金の額、注文の内容と量、退店の仕方、過去の同種行為の有無などの客観的事情から推認されます。所持金がほとんどないのに高額の注文を重ねていれば、「払うつもりだった」という説明は通りにくくなります。

「財布を取ってくる」と言って店を出た場合はどうなりますか

2項詐欺が成立し得ます。食べ終えた後に、「車に財布を忘れたので取ってくる」「近くのATMで下ろしてくる」と店員に告げ、店員がそれを信じて店外に出ることを許した場合、その言葉は店員を欺く行為であり、店員が一時的に支払を猶予して退店を認めたことが処分行為に当たります。これにより代金の支払を免れるという財産上の利益を得たものとして、刑法246条2項が適用されます。

つまり、同じ食い逃げでも、黙って逃げれば不可罰、嘘をついて逃げれば詐欺罪という、一見すると逆転したように見える結論になります。これは、日本の刑法が処罰の対象を条文の文言に厳格に限定していることの現れであり、弁護の場面では、退店の際にどのような言葉のやり取りがあったのかが、成否を分ける最重要の事実になります。

さらに、店員に呼び止められた際に暴行や脅迫を加えて逃げた場合には、代金債務を免れるために暴行・脅迫を用いたものとして、2項強盗(刑法236条2項)が問題になります。強盗罪は法定刑が5年以上の有期拘禁刑と格段に重く、事案の性質が全く変わりますので、店員に止められても決して手を出さないでください。

タクシー料金や電車の運賃を払えなかった場合はどうなりますか

タクシーは、乗車の時点で支払う意思や能力があったかどうかで分かれます。乗車時に所持金がなく支払う当てもないのに行き先を告げて乗車した場合は、運送という役務を欺いて受けたものとして2項詐欺が成立し得ます。他方、乗車時には支払えると思っており、降車時に所持金が足りないと判明した場合は、詐欺の故意がなく、料金債務が残るだけの民事の問題です。この場合、運転手に事情を説明し、身分を明らかにして後日の支払を約束することが、刑事事件化を避ける最善の対応です。運転手の目を盗んで走り去れば、利益窃盗として詐欺罪は成立しないとしても、警察は詐欺の疑いで捜査を始め、乗車時から支払う意思がなかったのではないかという方向で調べます。

電車の無賃乗車は、詐欺罪のほかに鉄道営業法に不正乗車を処罰する規定があり、実務上は鉄道会社が定める割増運賃の請求で処理されることが多い類型です。ただし、他人の定期券や交通系ICカードを不正に使うなど態様が悪質な場合や、繰り返している場合には、詐欺罪や電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)として立件されることがあります。

被害額が少額なら、逮捕されずに済みますか

その可能性は高いですが、対応を誤ると逮捕されます。無銭飲食の多くは、店員が現行犯として取り押さえ、警察に通報する形で発覚します。現行犯逮捕は誰でも逮捕状なしに行うことができ(刑訴法213条)、外国人の方については、住居が不明である、逃亡のおそれがあると判断されると、そのまま警察署に連行されて逮捕手続が取られます。所持していた在留カードで住居と身分が確認でき、代金をその場で支払い又は支払の約束ができれば、逮捕されずに任意の事情聴取で済むことも多いです。

被害額が少額で、弁償が済み、被害者が処罰を望まず、前科前歴がない場合には、警察限りで手続を終える微罪処分(刑訴法246条ただし書に基づき検察官が指定した事件について送致を省略する運用)となることがあります。微罪処分は前科にならず、検察官にも送致されませんから、外国人の方にとっては在留への影響を最小限に抑えられる終わり方です。ただし、微罪処分にするかどうかは警察の判断であり、詐欺罪については窃盗罪ほど広く運用されているわけではありません。

送致された場合でも、弁償と謝罪、店側の宥恕があれば、検察官が刑訴法248条に基づいて起訴猶予とする可能性は十分にあります。そのためには、店との連絡と弁償を速やかに、かつ適切な方法で行う必要があります。ご本人やご家族が直接店に押しかけて謝罪するのではなく、弁護人を通じて店側の意向を確認したうえで進めることが、後に述べる証拠隠滅の疑いを避けるためにも重要です。

想定される刑事手続の流れ

逮捕された場合、警察は48時間以内に事件を検察官に送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。無銭飲食の事案では、被害額が少なく、住居が確認できれば、勾留請求されずに釈放されることも多いですが、外国人であることを理由に逃亡のおそれがあると判断され、勾留が請求される例も見られます。勾留されれば原則10日、延長でさらに最長10日です。

勾留の判断で重要なのは、住居と身分の安定、勤務先や学校の存在、家族の監督です。在留カード、雇用契約書、在学証明書などを弁護人が速やかに裁判官に提出し、勾留の必要性がないことを示すことで、早期の釈放が期待できます。釈放後は在宅事件として捜査が続き、弁償と示談の状況を踏まえて検察官が起訴・不起訴を判断します。

在留資格への影響

詐欺罪は法定刑に罰金の定めがありません。したがって、起訴されれば略式手続による罰金で終わることはなく、公判請求されて拘禁刑の判決を受けることになります。ここに、外国人の方にとっての最大の危険があります。

入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、経営・管理、技能、留学、家族滞在、技能実習、特定技能など)で在留する者が、刑法第2編第37章(詐欺及び恐喝の罪)などの罪により拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由としており、執行猶予の有無による除外はありません。無銭飲食で起訴され、拘禁刑6月に執行猶予3年の判決を受けた留学生や技能実習生は、この号に当たります。

日本人の配偶者等、永住者、定住者などの別表第二の在留資格の方には4号の2は適用されず、同条4号リの「無期又は1年を超える拘禁刑」が基準になります。無銭飲食の単発の事案で1年を超える実刑となることは通常考えにくく、全部執行猶予が付けば同号からは除かれます。もっとも、退去強制事由に当たらなくても、在留期間更新の許可は入管法21条3項により「相当の理由」があるときに限られ、有罪判決は素行の評価に影響します。また、勾留により就学や就労が中断すれば、在留資格の取消し(同法22条の4第1項5号・6号)の問題も生じます。

不起訴処分を最優先の目標にする理由

上記のとおり、無銭飲食は罪名としては軽く見えても、詐欺罪である以上、起訴されれば必ず拘禁刑の判決になり、別表第一の方は執行猶予でも退去強制事由に当たります。有罪か無罪か、実刑か執行猶予かではなく、起訴か不起訴かが在留を分ける類型です。当事務所は、この構造を踏まえ、逮捕直後から不起訴処分の獲得を最優先の目標に据えます。

不起訴に向けた手段は2つあります。第1に、注文時に支払意思があったことを客観的事情から示し、詐欺罪の成立自体を争うことです。所持金の状況、注文の経緯、退店時のやり取りを正確に整理すれば、利益窃盗として不可罰である、あるいは故意が認められないという主張が成り立つ事案は少なくありません。第2に、速やかな弁償と店側の宥恕を得て、起訴猶予(刑訴法248条)を求めることです。被害額が少額であれば、弁償と反省が示されている限り、検察官が公判請求を選ぶ必要性は低くなります。

警察に呼ばれたら、まず何をすべきか

第1に、黙秘権の理解です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑訴法198条2項は取調べに先立ってその旨を告げることを求めています。無銭飲食の事案では、「最初から払うつもりがなかったのではないか」という問いに対して、恐怖や混乱の中で「はい」と答えてしまえば、それが詐欺の故意を認める調書として残ります。注文時の気持ちと、退店時の気持ちは別のものです。この区別を正確に説明できる状態になるまで、供述を急がないことが重要です。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。無銭飲食は、店との弁償交渉が速やかに進めば早期に終わる事案です。しかし、ご本人やご家族が店に直接連絡すると、被害者への働きかけとして証拠隠滅を疑われ、かえって身柄拘束が長引くことがあります。弁護人が店側の意向を確認し、弁償と示談を進める窓口になることで、最短で不起訴に近づくことができます。

第3に、通訳の質です。「払うつもりがなかった」と「払えなかった」は、中国語でも日本語でも微妙な違いですが、法律上は詐欺罪の成否を分ける決定的な違いです。捜査機関の通訳は捜査のための通訳であり、この違いをご本人の利益のために丁寧に訳し分ける立場にはありません。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見から示談、公判まで一貫して依頼者のために対応します。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。無銭飲食のような軽微に見える事案でも、外国人の方にとっては在留の帰趨を左右する事件であることを踏まえ、事実関係の整理と店側との示談を、逮捕直後から迅速に進めます。

特殊詐欺の出し子とされた20代の女性の事案では、指示役からの欺罔と脅迫的な状況、犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得しました。詐欺罪では、故意の有無が成否を分けます。無銭飲食においても、注文時の支払意思という故意の問題を正面から争うことが、防御の中核になります。

特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方の事案では、不当な取調べに抗議し、事実関係の主張立証を重ねて、全ての事件について不起訴処分を得ました。取調べで不利な調書を作られないための初動対応が、結論を左右した例です。

在留を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現し、入管の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例もあります。刑事事件の帰結が在留に及んだ場合にも、次の手を準備しています。

結語

無銭飲食やタクシー料金の不払いは、誰にでも起こり得る一瞬の判断の誤りから始まります。しかし、その一瞬に「最初から払うつもりがなかった」という評価が加わるかどうかで、不可罰の民事問題と、拘禁刑しかない詐欺罪との間に分かれ、外国人の方にとっては在留の有無にまで結び付きます。警察に呼ばれたとき、あるいは店で呼び止められたときに、その場で何を言い、何を言わないかが、その後の全てを決めます。迷ったら、まず弁護人にご相談ください。当事務所は、その最初の判断からご一緒いたします。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):吃霸王餐、逃单、坐霸王车被警察传唤时|诈骗罪(刑法246条)成立与不成立的界线,以及对在留的影响

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