舟渡国際法律事務所

解体現場・建設現場で死傷事故が起きたとき|業務上過失致死傷罪・労働安全衛生法違反と、経営者・現場責任者の在留資格

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解体現場・建設現場で死傷事故が起きたとき|業務上過失致死傷罪・労働安全衛生法違反と、経営者・現場責任者の在留資格

解体現場・建設現場で死傷事故が起きたとき|業務上過失致死傷罪・労働安全衛生法違反と、経営者・現場責任者の在留資格

2026/09/11

解体中の建物の一部が崩れて作業員が下敷きになった、重機の旋回範囲に人が入っていた、足場から人が落ちた。こうしたご相談を、事故の当日にお受けすることがございます。報道によれば、出入国在留管理庁は今秋から関係省庁と合同で立入調査を行う方針を固め、まず国土交通省とともに、10月にも解体業者を対象に実施する予定とされております。解体・建設の現場は、いま行政の強い注視を受けている状況にあると申し上げてよいでしょう。もっとも、現場で人が死傷したときに真っ先に問われるのは在留カードの確認ではなく、業務上過失致死傷罪と労働安全衛生法違反という刑事責任です。本記事では、その全体像と、外国人の経営者・現場責任者にとって在留にどう跳ね返るのかを整理いたします。

本記事の要点

  • 現場の死傷事故では、刑法211条前段の業務上過失致死傷罪と、労働安全衛生法違反とが同時に問題となる例が多くございます。
  • 労働安全衛生法には両罰規定(同法122条)があり、実際に違反行為をした個人と、法人である会社の双方が処罰され得ます。
  • 過失犯である以上、予見可能性と結果回避可能性が最大の争点となり、そこでの主張立証は、後の入管手続における第二・第三の防御線を準備する意味も持ちます。
  • ご遺族・被害者との示談は生命・身体という個人的法益に対応するものですが、労働安全衛生法違反は社会的法益に関わるため、示談だけでは評価が解消しにくい面がございます。
  • 「経営・管理」等の在留資格をお持ちの方は、入管法24条4号リの退去強制事由に加えて、入管法21条3項に基づく在留期間更新の審査を別途検討する必要がございます。

現場で作業員が亡くなった場合、経営者や現場責任者の個人が罪に問われるのですか

結論から申し上げますと、問われ得ます。刑法211条前段は、業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者を、5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金に処すると定めております。ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う行為のうち、他人の生命・身体に危険を及ぼすおそれのあるものを指し、解体工事や建設工事の遂行はこれに当たります。

注意すべきは、この罪の主体が会社ではなく自然人である点です。捜査機関は、誰がどの範囲の注意義務を負っていたかを分解して検討します。作業を直接指揮していた職長や作業主任者、工事全体を統括していた現場代理人、そして安全管理の体制そのものを整えるべき立場にあった経営者が、それぞれ別個に対象となり得ます。事故現場にいなかった経営者であっても、体制構築上の落ち度を理由に立件されることがある。ここが、外国人の経営者の方にとって最も見落とされやすい点でございます。

「注意義務を怠った」とは、具体的に何を指すのか

注意義務の内容は現場ごとに異なりますが、捜査機関が着目する項目はおおむね共通しております。次のような点が、供述調書と実況見分調書の中で丹念に詰められてまいります。

  • 作業計画を定め、これを作業員に周知していたか(解体の手順、使用する機械、立入禁止区域の設定)
  • 墜落・転落を防ぐ措置を講じていたか(作業床、手すり、開口部の養生、安全帯を取り付ける設備)
  • 重機の作業範囲への立入りを禁じ、誘導者を配置し、合図の方法を統一していたか
  • 有資格者を配置していたか(作業主任者の選任、車両系建設機械の運転資格、玉掛けの資格等)
  • 安全衛生教育を実施していたか。とりわけ日本語を母語としない作業員に、内容が実際に伝わる形で行っていたか
  • 建物の構造、残置物、埋設物について事前の調査を尽くしていたか

これらは、労働安全衛生法20条から25条までが事業者に課している措置義務と大きく重なり合っております。そのため実務では、同法違反として認定された事実が、そのまま業務上過失致死傷罪における注意義務違反を基礎づける事実として用いられることが少なくありません。逆に申しますと、安全衛生法上の措置を尽くしていたことを具体的に立証できれば、過失そのものを争う足場が生まれるということでもございます。

会社と個人の両方が処罰されることがあるのはなぜですか

労働安全衛生法が両罰規定を置いているためです。同法122条は、法人の代表者や従業者がその法人の業務に関して同法119条等の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対しても罰金刑を科する旨を定めております。119条に定める法定刑は、6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金です。

実務上重要なのは、会社が罰金を納めれば個人の責任が消えるという関係にはないこと、そして、会社に対する罰金であっても、その会社を経営する外国人の方にとっては、事業の適正性に関する不利な事情として在留審査の場面で参照され得ることです。刑事手続の中では「会社に罰金が科されただけで済んだ」と受け止められがちな結末が、数か月後の在留期間更新の場面で重い意味を持って戻ってくることがございます。

予見できなかった、避けられなかったという主張は、どこまで争えるのですか

業務上過失致死傷罪は過失犯であり、その成否は予見可能性と結果回避可能性という二本の柱で決まります。事故が起きた以上は過失があるはずだ、という発想は法的に正しくありません。具体的には、事故の態様が当該作業から通常想定される危険の範囲にあったといえるか、被害者側の突発的な行動が介在していないか、仮に措置を講じていたとしても結果を回避できたといえるか、そして問題となっている注意義務が本当にその方の立場に配分されていたといえるか(経営者と現場責任者の間の権限と情報の配分)が、争点になります。

そして、ここでの主張立証は、刑事事件の中だけで完結する話ではございません。刑事事件では故意・過失の有無を論ずることが当然の出発点であるのに対し、入管実務では、退去強制事由の判断に故意・過失は要件とされないとする運用が長年踏襲されてまいりました。松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすべきかという憲法論・行政法論の根本問題として、この実務を問う訴訟に取り組んでおります(後掲の事例D-2)。これは現在も議論の続く重要論点であり、結論を先取りして申し上げることはできません。もっとも、刑事事件の段階で予見可能性・結果回避可能性を丁寧に争い、その記録を残しておくことは、将来の入管手続における主張の基礎を成します。刑事の第一防御線が崩れた場合に備えて、第二・第三の防御線をあらかじめ準備しておく。外国人事件では、この構えが結果を分けることがございます。

ご遺族や被害者の方との示談は、どこまで効くのですか

業務上過失致死傷罪が侵害するのは、被害者個人の生命・身体という個人的法益です。この類型では、被害弁償と示談によって侵害された利益が個別的に回復され、反社会性の評価が具体的に和らぐ余地が広いといえます。ご遺族の宥恕のお気持ちが示されるかどうかは、起訴・不起訴の判断にも量刑にも相応の重みをもって働きます。

他方で、労働安全衛生法違反が守ろうとしているのは、個々の被害者の利益にとどまらず、労働者一般の安全という社会的法益です。この部分については、ご遺族との示談が成立したからといって「素行に問題がない」という評価に直結するものではございません。罪名の表面ではなく、何が守られようとしている利益なのかで考える。当事務所が示談交渉の設計にあたって最初に確認しているのは、この点でございます。労災保険による給付と、事業者としての損害賠償との関係をどう整理するかも、示談書の文言に直結いたします。

許可・登録・事前調査の不備が、別の違反として問われることがあります

解体・建設の現場では、死傷事故を契機として、それまで見過ごされてきた手続の不備が一斉に表面化することがございます。建設業法に基づく建設業の許可、建設リサイクル法に基づく解体工事業の登録、石綿障害予防規則に基づく解体前の事前調査とその結果の報告などがこれに当たります。無許可・無登録での施工や、必要な事前調査を欠いたままの着手は、それ自体が独立の違反として立件されることがございます。

加えて、就労資格のない外国人を現場に入れていた場合には、入管法73条の2の不法就労助長罪が別途問題となります。冒頭で触れた合同立入調査の方針は、まさにこの点に向けられたものです。事故対応と並行して、雇用している方の在留資格・資格外活動許可の有無、下請業者を通じて入っている作業員の把握状況を、早い段階で棚卸ししておくことをお勧めいたします。

想定される刑事手続の流れ

労働災害の事案では、必ずしも当日に逮捕されるとは限らず、在宅のまま捜査が進む例も多くございます。もっとも、事故態様が重い場合には身柄を拘束されることがあります。逮捕されますと、警察は48時間以内に検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この合計72時間が、身柄拘束が長期化するかどうかを分ける最初の関門です。

勾留が決まりますと原則10日間、延長されてさらに10日間、身体の拘束が続き得ます。この間に検察官が起訴・不起訴を判断いたします。労災事案では、これと並行して労働基準監督署の司法警察員による捜査が進み、書類送検という形をとることも少なくありません。会社の帳簿、作業日報、安全衛生教育の記録などが早期に押収されますので、どの資料がどのような文脈で作成されたものかを、弁護人と早い段階で共有していただくことが大切です。

外国人事件特有のリスク(退去強制と在留資格)

外国籍の方にとって、刑事事件の結末は在留の可否に直結いたします。入管法24条は退去強制事由を号ごとに定めており、次の各号の理解が出発点となります。

  • 4号リ:無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者を除く)
  • 4号チ:麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚醒剤取締法等の規定に違反して有罪の判決を受けた者(薬物事犯は刑の重さを問わず該当し得ます)
  • 4号ニ:旅券法23条1項(6号を除く)から3項までの罪により刑に処せられた者(罰金でも該当し得ます)
  • 3号の4:他の外国人に不法就労活動をさせた等の者(入管法73条の2の不法就労助長罪)
  • 4号ロ:在留期間の経過後の残留(不法残留)
  • 4号イ:資格外活動(入管法19条1項に違反して専ら在留資格に属しない収入活動を行っていると明らかに認められる者)
  • 4号の2:一定の特定犯罪(別表第一の在留資格をお持ちの方に限られます)

業務上過失致死傷罪の法定刑は5年以下の拘禁刑ですので、実刑で1年を超える判断がされた場合には4号リに触れ得ます。ここでよく生じる誤解が、「執行猶予が付いたのだから日本に居られる」というものです。4号リが執行猶予者を除いているのは事実ですが、それは退去強制事由に当たらないというだけであって、在留資格を維持できることを意味しません。在留資格取消し(入管法22条の4)の検討が別途あり、さらに在留期間の更新は入管法21条3項により法務大臣の裁量に委ねられ、更新・変更のガイドラインが掲げる素行善良の要件が独立に審査されます。「経営・管理」の在留資格の場合には、事業の継続性・適正性という観点からも見られますので、有罪判決と会社への罰金という二つの事実が重なることの意味は小さくございません。

不起訴処分を最優先目標に置く理由

当事務所は、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先目標として弁護活動を組み立てております。入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま「執行猶予なら大丈夫」とご説明することは、結果として在留資格の喪失につながり得るからです。不起訴となれば有罪判決という事実そのものが生じませんので、その後の更新審査における出発点がまったく異なってまいります。労災事案で不起訴を目指す具体的な作業は、注意義務の配分に関する反証、安全管理体制が実際に機能していたことを示す客観資料の提出、事故後の再発防止措置の実施と報告、そしてご遺族・被害者との誠実な示談交渉です。これらを起訴・不起訴の判断がされる前に間に合わせることが要となります。

初動対応で押さえていただきたい3つのこと

第一に、黙秘権の行使です。事故直後は記憶が混乱しており、「自分の責任だ」というお気持ちが先に立ちがちです。その状態で「私の指示が不十分でした」と述べた調書が作られますと、後から注意義務の配分を争うことが著しく難しくなります。事実関係を弁護人と整理するまでは、供述を留保するという選択肢があることをご承知おきください。

第二に、早期の弁護人選任です。逮捕された場合には当番弁護士を呼ぶことができますが、労災事案は技術的な検討を要しますので、継続的に対応する私選弁護人を早期に選任される意義が大きい類型です。

第三に、通訳の質です。接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。また、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般にわたってご利用いただけます。安全管理の用語や工法の名称は、通訳の理解が浅いと供述が別の意味に変わってしまう領域ですので、この点は労災事案でとりわけ大きな意味を持ちます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野としております。松村大介弁護士は、国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された事件への対応経験を重ねてまいりました。中国籍の方の重大事件にも多数対応しており、事故態様の分析、鑑定書の吟味、現場関係者の供述の突き合わせといった、事実に踏み込んだ弁護を得意としております。

事業者の方が被害者の側に回る場面にも対応いたします。卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。刑事手続と民事の回収を組み合わせて設計するという発想は、事故後の求償や下請関係の整理においても活きてまいります。

入管手続についても、刑事と切り離さずに扱っております。冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性の事案では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務に対し、責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を提起し、上訴審まで争いました。その後、入管から在留特別許可が認められております。訴訟の帰趨と在留特別許可の獲得はそれぞれ別個の経緯によるものですが、刑事の段階で過失を丁寧に争っておくことが、その後の局面で確かな支えになるという経験を、この事案から得ております。

加えて、提携の行政書士による在留資格・ビザのサポート体制を備えており、刑事手続の終了後に必要となる在留期間更新や在留資格変更の申請についても、途切れなくご相談いただけます。出入国在留管理庁が公表している在留特別許可の許可・不許可事例を分析し、同種の事情を有する先例との対照を丁寧に行うことも、当事務所が重視している作業です。

おわりに

現場で人が死傷したという事実の重さは、どのような法律論をもってしても軽くなるものではございません。だからこそ、ご遺族に対して誠実に向き合うことと、法的に争うべき点を正確に争うことは、両立させなければならないと考えております。事故直後の数日間に何を語り、どの資料をどう保全したかが、数か月後の起訴・不起訴の判断を、そして年単位の先にある在留の可否を左右いたします。お心当たりのある方は、できるだけ早い段階でご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):拆除工程与建筑工地发生伤亡事故时|业务上过失致死伤罪、劳动安全卫生法违反与经营者、现场负责人的在留资格

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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