舟渡国際法律事務所

他人名義のカードでの買物・引出しを頼まれたとき|支払用カード電磁的記録不正作出等の罪と在留資格

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他人名義のカードでの買物・引出しを頼まれたとき|支払用カード電磁的記録不正作出等の罪と在留資格

他人名義のカードでの買物・引出しを頼まれたとき|支払用カード電磁的記録不正作出等の罪と在留資格

2026/09/11

「このカードで買ってきてくれれば、報酬を渡す」。仕事を探しておられた矢先にそう持ちかけられ、言われるままに家電量販店やコンビニエンスストアへ向かった。数日後、警察官が訪ねてきて、事情が飲み込めないうちに身柄を拘束される。他人名義のカードをめぐる事件は、しばしばこのような経緯をたどります。この類型は、外から見ると単純な「買物」に見えるにもかかわらず、法定刑が非常に重く、在留資格への影響も大きい領域です。本記事では、どの規定が適用され得るのか、「知らなかった」という説明はどこまで通るのか、そして在留にどう跳ね返るのかを、制度の仕組みとして整理してご説明いたします。

本記事の要点

  • 他人名義の支払用カードをめぐる行為は、刑法163条の2以下の支払用カード電磁的記録不正作出等の罪という、非常に重い類型に位置付けられ得ます。
  • 支払用カード電磁的記録不正作出罪(刑法163条の2第1項)の法定刑は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金であり、初犯であっても実刑が選択されることも少なくありません。
  • 「言われたとおりに買物をしただけ」という説明が通るかどうかは、未必の故意、すなわち不正なカードかもしれないと思いながらあえて受け入れていたと認定されるかどうかにかかっています。
  • 1年を超える拘禁刑の実刑は入管法24条4号リの退去強制事由に直結するため、起訴される前に不起訴処分を得ることが決定的な意味を持ちます。
  • 防犯カメラの映像、押収された端末の解析結果、共犯者とされる方の供述が、主要な証拠になります。

頼まれて買物をしただけでも、罪になるのでしょうか

結論から申し上げますと、なり得ます。しかも、想像されているよりはるかに重い罪に問われることがあります。

刑法は、支払用カードの電磁的記録、すなわち磁気ストライプやICチップに記録された情報を不正に作り出す行為を、163条の2第1項で処罰しています。法定刑は10年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。同条は、不正に作られたカードを人の財産上の事務処理の用に供する行為(同条2項)や、譲り渡し・貸し渡し・輸入する行為(同条3項)も、同じ重さで処罰しています。

加えて、不正に作られたカードを所持する行為は163条の3(5年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)で、カード情報を取得・提供・保管する行為や、いわゆるスキマーのような器械・原料を準備する行為は163条の4(3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)で、それぞれ処罰されます。163条の5は、163条の2の罪と163条の4第1項の罪について未遂も処罰する旨を定めています。

これらは単独で成立するとは限りません。他人名義のキャッシュカードを使って現金自動預払機から現金を引き出せば窃盗罪(刑法235条)に、店舗で商品を購入すれば加盟店に対する詐欺罪(刑法246条1項)に、インターネット上で決済すれば電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)に、それぞれ問われ得ます。売上票に他人の名前を書けば、私文書偽造・同行使の問題も生じます。ご本人の感覚では一つの行為であっても、法的には複数の罪が重なり合う構造になっています。

カードは友人のものだと聞いていた、という説明は通るのでしょうか

この点が、この類型における最大の争点です。犯罪が成立するには、原則として故意が必要です。もっとも、日本の実務でいう故意には、確定的に知っていた場合だけでなく、「不正なカードかもしれない」と思いながら、それでも構わないとして行為に及んだ場合、いわゆる未必の故意も含まれます。

そして、この未必の故意は、ご本人が「知らなかった」と述べれば否定されるというものではなく、外形的な事情の積み重ねから認定されます。報酬が不自然に高額であったか、面識の乏しい相手からの依頼であったか、身分証の提示を伴わない募集であったか、短時間に多数の店舗を回るよう指示されていたか、連絡手段が消去機能付きの通信アプリに限られていたか、といった事情です。

したがって、弁護活動においては、依頼の経緯、提示された条件、当時のご本人の生活状況や日本語能力、指示役との力関係を、一つひとつ具体的に主張立証していく作業が中心になります。この作業は、記憶が新しく、資料が残っているうちに始めるほど成果が上がります。

なお、故意や過失の問題は、刑事手続だけの話ではありません。入管の実務では、退去強制事由の判断に故意や過失は要件とされないという運用が長年踏襲されてまいりました。松村大介弁護士は、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすべきかという憲法上・行政法上の根本問題として、この実務を問う訴訟に取り組んでまいりました。これは現に争われている重要論点であり、刑事事件の段階から故意・過失を丁寧に争っておくことが、将来の入管手続における主張の基礎を成すとお考えいただければと思います。

組織の中で一番下の役割だったのに、なぜ正犯なのでしょうか

刑法60条は、2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とすると定めています。判例上、実行行為を分担していなくても、共謀に加わっていれば正犯としての責任を負うという考え方、いわゆる共謀共同正犯が確立しています。

そのため、組織的な役割分担の中で、買物をする役、現金を引き出す役、受け取った物品を運ぶ役といった末端の位置にいたとしても、それだけで従属的な地位が当然に量刑へ反映されるわけではありません。もっとも、共謀の成否そのものを争う余地はありますし、共謀が認められる場合であっても、関与の程度、得た利益の額、離脱の有無、置かれていた立場は、量刑上の重要な事情になります。

特に外国人の方の場合、来日直後で生活の基盤がなく、日本語の理解も十分でない状況につけ込まれる形で関与に至っている例が見受けられます。こうした事情は、放っておいても記録には現れません。弁護人が意識的に主張し、裏付けを収集して初めて評価の対象になります。

どのような証拠で認定されるのでしょうか

主要な証拠は3つです。第1に、店舗や現金自動預払機の防犯カメラの映像です。日時と場所が特定されるため、行為の外形はほぼ動かせません。第2に、押収された端末の解析結果です。通信アプリのやり取り、位置情報、写真の撮影日時などが対象になります。第3に、共犯者とされる方の供述です。

このうち争いの余地が大きいのは、第2と第3です。通信アプリのやり取りは、削除されていても復元されることがあり、断片的な文言が不利に引用されることもあります。他方で、前後の文脈を丁寧に示すことによって、指示役との関係や認識の程度を、依頼者に有利な形で明らかにできる場合もあります。共犯者とされる方の供述についても、その方自身の刑事責任を軽くする動機の有無を含め、慎重に吟味する必要があります。

捜査の初期に、事実と異なる調書に署名してしまいますと、後の段階でその修正に多大な労力を要します。この点は、次に述べる初動対応と直結いたします。

逮捕から処分が決まるまでの流れ

逮捕された場合、警察は48時間以内に検察官へ身柄を送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断いたします。裁判官が勾留を認めますと、まず10日間、延長されればさらに最大10日間、身柄を拘束したまま捜査が続きます。この類型では共犯者が多数に及ぶことがあり、別の店舗や別の日の行為について再逮捕が繰り返されることも珍しくありません。

したがって、最初の72時間の対応が、その後の身柄拘束の長さと処分の内容の双方を大きく左右いたします。勾留期間の満了までに検察官が起訴・不起訴を決め、起訴されれば公判に進みます。不起訴には嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予といった種類があり、いずれの場合も前科は付きません。

在留資格には、どのように影響するのでしょうか

入管法24条4号リは、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由と定めています。括弧書きで刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれていますので、執行猶予が付けば、この号を理由に退去強制の対象となることはありません。

問題は、この類型が、実刑が選択されることも少なくない重い類型だという点にあります。刑法163条の2第1項の法定刑の上限は10年以下の拘禁刑であり、組織的な犯行の一部と評価されれば、初犯であっても1年を超える実刑となる可能性は現実のものです。そうなりますと、24条4号リに直接該当し、退去強制手続へと進んでまいります。

加えて、執行猶予が付いた場合であっても安心はできません。在留期間の更新は入管法21条3項により法務大臣の広範な裁量に委ねられており、在留資格の変更・在留期間の更新に係るガイドラインは素行が善良であることを求めています。有罪判決を受けた事実は、この評価に直接響きます。また、在留資格の取消し(入管法22条の4)の問題も併存いたします。「執行猶予が付いたから日本に居られる」という理解は、正確ではありません。

なお、別表第一の在留資格をお持ちの方については、一定の特定犯罪に関する入管法24条4号の2の問題も別途生じ得ます。ご自身の在留資格が別表第一に属するのか別表第二に属するのかによって影響の及び方が変わってまいりますので、この点も含めた確認が必要です。

なぜ、起訴される前の段階が決定的なのか

当事務所は、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くのではなく、起訴される前の段階で不起訴処分を得ることを最優先の目標として、弁護活動を組み立てております。

この類型では、その意味が特にはっきりしています。実刑となれば24条4号リに直結し、執行猶予であっても更新審査に影響が残る以上、そもそも有罪判決を受けない道筋を最初から追求することが、在留を守るうえで最も堅実な方法だからです。入管法24条各号の構造を正確に把握しないまま「執行猶予なら大丈夫」とご説明することは、結果として在留資格の喪失につながりかねません。当事務所は、刑事手続の段階から退去強制手続を一体的に視野に入れ、必要な資料を刑事手続の中で先に整えてまいります。

最初にしていただきたい3つのこと

第1に、黙秘権を行使できることを知っておいていただくことです。この類型では、取調べにおいて「知っていたはずだ」という前提で質問が重ねられることがあります。曖昧なまま同意してしまった一言が、未必の故意を認めた供述として調書に残ることは避けなければなりません。まずは弁護人と方針を相談してから話すという順序をお守りください。

第2に、できる限り早く弁護人を選任することです。逮捕された場合には、1回に限り無料で接見に来てもらえる当番弁護士の制度があります。ただし、当番弁護士がその後の弁護を当然に担当するわけではありませんので、継続的な弁護人の選任は別途ご検討いただく必要があります。

第3に、通訳の質を確保することです。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。捜査機関が手配する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、接見から公判に至る手続全般で利用していただけます。この類型は、認識の有無という微妙な内心の問題が争点になるため、通訳の正確さがそのまま結論に響きます。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行っておりません。中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と、その先に続く入管手続を、一体のものとしてお引き受けしております。

解決事例を3件ご紹介いたします。まず、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性の事案です。指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意が存在しなかったことなど、主観面に関する事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。本記事の類型と、争点の構造がよく似た事案です。

次に、特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案です。徹底した取調べ対応を行い、不当な取調べには抗議を重ね、主張立証を尽くした結果、全件について不起訴処分を獲得いたしました。再逮捕が繰り返される類型では、一件ごとに方針を組み直す粘り強さが求められます。

さらに、卸業を営む依頼者が取り込み詐欺の被害に遭われた事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、被害額を大きく上回る7,500万円の解決金を獲得いたしました。被害を受けた側のお立場からのご依頼も承っております。

在留資格やビザに関する手続については、提携する行政書士と連携してサポートを行っております。また、退去強制手続や在留特別許可の場面についても、1回の申請で在留特別許可を獲得した事案や、強制退去の危機に瀕した方について在留特別許可が認められた事案など、入管手続の実績を有しております。

おわりに

「買物を頼まれただけ」という説明が、法的にどう評価されるのか。その分かれ目は、外形的な事情の積み重ねと、それをどう提示するかにあります。そして、この類型は法定刑が重いだけに、刑事処分の結果がそのまま在留の可否に跳ね返ります。逮捕された、あるいは警察から連絡があったという段階で、刑事と入管の双方を見据えた方針を立てることに、大きな意味があります。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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