舟渡国際法律事務所

マッチングアプリを使った「美人局」に関わったとき|恐喝罪・詐欺罪の共同正犯と誘い役とされた女性の弁護、在留資格への影響

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マッチングアプリを使った「美人局」に関わったとき|恐喝罪・詐欺罪の共同正犯と誘い役とされた女性の弁護、在留資格への影響

マッチングアプリを使った「美人局」に関わったとき|恐喝罪・詐欺罪の共同正犯と誘い役とされた女性の弁護、在留資格への影響

2026/09/13

「アプリで知り合った人と食事をしただけなのに、恐喝の共犯だと言われて連れて行かれました」。ご本人が女性で、逮捕の連絡を受けたご家族からそのようなご相談をいただくことがあります。マッチングアプリで男性を誘い出し、ホテルや個室に着いたところで「夫」「恋人」を名乗る男が現れ、慰謝料や示談金の名目で金銭を要求する。いわゆる美人局と呼ばれる手口について、近時、関東地方で複数の外国籍の男女が恐喝の疑いで逮捕されたという報道が続いています。この類型では、誘い役とされた女性にも共同正犯としての責任が及び得るうえ、在留資格によっては執行猶予付きの判決でも退去強制事由に該当し得ます。他方で、その女性が指示役からの脅迫や借金による支配下にあったという事情が隠れていることも少なくありません。争点と防御線を順に整理してまいります。

本記事の要点

  • 「妻に手を出した」「慰謝料を払え」と告げて金銭を要求する行為は刑法249条の恐喝罪に当たり、法定刑は10年以下の拘禁刑で、金銭を受け取る前でも同法250条により未遂として処罰されます。
  • 男性を誘い出した女性も、計画を知って役割を担っていれば刑法60条の共同正犯とされ得ますが、指示役からの脅迫や支配のもとで関与した場合には、共謀の有無や幇助にとどまるかが重要な争点になります。
  • 被害者が「示談書」への署名を求められる構図そのものが恐喝の手段であり、署名した書面があっても犯罪の成立は妨げられません。
  • 恐喝罪と詐欺罪は刑法第2編第37章の罪であるため、別表第一の在留資格の方は入管法24条4号の2により、執行猶予が付いても拘禁刑に処せられれば退去強制事由に該当し得ます。
  • このため、執行猶予判決ではなく起訴前の不起訴処分を最優先目標に据え、逮捕直後から黙秘権と弁護人選任権を正しく使うことが在留を守る鍵になります。

美人局はどの罪に当たりますか。脅すだけで金銭を受け取っていない場合は

中心となるのは恐喝罪です。刑法249条1項は、人を恐喝して財物を交付させた者を10年以下の拘禁刑に処すると定め、同条2項は財産上不法の利益を得た場合も同様としています。「妻に手を出したのだから慰謝料を払え」「未成年と知って会ったのだろう。警察に言われたくなければ金を出せ」と告げる行為は、相手の名誉や社会的地位に害を加える旨の告知として脅迫に当たり、それによって畏怖した相手が金銭を渡せば恐喝罪が既遂となります。

金銭を受け取る前に相手が逃げた、警察に通報された、という場合でも安心はできません。刑法250条は、詐欺及び恐喝の罪の未遂を罰すると定めていますから、脅迫を始めた時点で未遂として処罰の対象になります。また、金銭ではなく「後日振り込む」との念書や、クレジットカードでの決済を強いた場合も、2項の財産上の利益として同様に扱われます。

詐欺罪(刑法246条)が併せて検討されることもあります。例えば、女性が既婚でないのに「夫」を名乗る男が現れる、実際には存在しない「慰謝料の相場」を示す、といった欺罔の要素が含まれるからです。もっとも、脅迫によって相手を畏怖させて金銭を得る構図が中心であれば、実務上は恐喝罪として立件されることが一般的で、詐欺罪と恐喝罪のいずれで構成するかは捜査機関の事実認定に左右されます。いずれにせよ法定刑は同じ10年以下の拘禁刑であり、後述する在留への影響の枠組みも共通です。

誘っただけの女性も共犯になりますか

なり得ます。刑法60条は、2人以上共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とすると定めており、実務では、脅迫の場面に直接加わらなくても、計画を知り、自分の役割として男性を誘い出し、部屋に連れ込むという行為を分担していれば、共謀共同正犯として恐喝罪の責任を負うとされています。アプリのメッセージ、待ち合わせ場所の指定、部屋の予約、指示役との連絡履歴といった客観的な記録は、この「役割分担」を裏付ける証拠として扱われます。

しかし、共同正犯の成立には、犯罪を共同して実行するという意思の連絡が必要です。ここに防御の出発点があります。当初は交際目的や食事の相手として会うよう言われただけで、金銭を要求する計画を知らされていなかった場合、あるいは知ったのが男が部屋に入ってきた後であった場合には、恐喝についての共謀そのものが否定される余地があります。刑法38条1項が罪を犯す意思のない行為を罰しないと定めるとおり、故意の有無と、それがいつ生じたのかは、取調べで最初にどう述べたかによって大きく左右される争点です。

仮に計画をある程度知っていたとしても、果たした役割が周辺的であれば、正犯ではなく幇助(刑法62条1項)にとどまると主張する余地があります。従犯の刑は正犯の刑を減軽するとされており(同法63条)、量刑だけでなく、起訴・不起訴の判断や在留への影響にも差が生じます。

指示役に脅されて関与した場合、責任はどうなりますか

この類型で最も見過ごされやすいのが、誘い役とされた女性自身が支配下に置かれていたという事情です。来日の費用や生活費の名目で負ったとされる借金を理由に「言うとおりにしなければ家族に知らせる」「在留カードを預かっている」と告げられていた、交際相手を名乗る男から日常的に暴力を受けていた、自分の写真や動画を握られていた、というご相談は珍しくありません。

こうした事情は、いくつかの法的な意味を持ちます。第1に、共謀の任意性です。脅迫によって役割を強いられていた場合、対等な立場で犯罪計画を共有していたとは評価し難く、共同正犯の成立自体を争う根拠になります。第2に、責任の程度です。自らも脅迫や強要の被害者であった事実は、起訴・不起訴を判断する際の「犯人の性格、年齢及び境遇」「犯罪の情状」(刑事訴訟法248条)として考慮されるべき事情であり、起訴猶予の判断に結び付き得ます。第3に、指示役との関係が人身取引に近い構造を持つ場合には、ご本人を加害者ではなく保護の対象として位置付ける方向の主張が可能になります。

ただし、これらの事情は、ご本人が取調べの初期に「自分から誘った」「分け前をもらった」と述べてしまうと、後から主張しても信用されにくくなります。指示役から受けていた脅迫の内容、時期、証拠(メッセージ、通話履歴、傷の写真、借用書と称する書面)を、弁護人が早期に整理し、捜査機関に対して能動的に示すことが必要です。

被害者側が「示談」を持ちかけられる構図と、その意味

美人局の特徴は、被害者が届け出にくい立場に置かれる点にあります。既婚の男性がアプリで女性と会っていた、相手が未成年かもしれないと言われた、といった事情から、被害者は「警察に知られるくらいなら払った方がよい」と考え、その場で「示談書」「和解書」への署名を求められます。加害者側はこの書面を「合意のうえで支払われた慰謝料だ」と主張する材料にしようとします。

しかし、脅迫によって畏怖した状態で作成された書面に、犯罪の成立を妨げる効果はありません。恐喝罪は、相手が畏怖して財産を交付したこと自体を処罰するものであり、形式上の合意があっても評価は変わらないからです。むしろ、あらかじめ書面の雛形を用意していた事実は、計画性を示す証拠として扱われます。被疑者側から見れば、「合意があった」「本人が納得して払った」という弁解は通りにくく、そこに防御線を引くべきではありません。防御の重点は、前述のとおり、ご本人の関与の範囲と、共謀の有無・時期に置くべきです。

なお、被害に遭った側からご相談をいただく場合には、支払ってしまった後であっても被害届や告訴を検討する余地があること、金銭の返還請求が可能であることをご説明しております。

想定される刑事手続の流れ

逮捕されると、警察は48時間以内に事件と身柄を検察官に送致し(刑事訴訟法203条1項)、検察官は受け取りから24時間以内、逮捕から通じて72時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します(同法205条)。裁判官が勾留を認めれば原則10日間、やむを得ない事由があれば最大10日間延長され(同法208条)、その間に起訴か不起訴かが決まります。

美人局の類型では、被害者が複数に及ぶことが多く、1件ごとに再逮捕が繰り返される可能性があります。また、共犯者が複数いるため、口裏合わせを防ぐという理由で、弁護人以外との接見を禁止する決定(同法81条)が付されることが通例です。この場合、ご家族は面会も手紙のやり取りもできず、ご本人と外部をつなぐのは弁護人だけになります。指示役との間で誰が主導したのかをめぐって供述が食い違うことも多く、他の共犯者が先に供述を固めてしまう前に、ご本人の立場を整理しておく必要があります。

在留資格への影響。執行猶予でも退去強制事由に当たる場合があります

恐喝罪と詐欺罪は、刑法第2編第37章「詐欺及び恐喝の罪」に置かれています。この点が在留への影響を決定的に左右します。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者が刑法第2編第37章の罪などにより拘禁刑に処せられた場合を退去強制事由として定めており、4号リと異なり、刑期の長短や執行猶予の有無を問いません。技術・人文知識・国際業務、経営・管理、留学、家族滞在、特定技能、技能実習などの資格で在留している方は、この号の対象です。つまり、執行猶予付きの拘禁刑判決であっても、判決が確定すれば退去強制手続に進み得ます。

これに対し、日本人の配偶者等、永住者、定住者など別表第二の資格で在留する方については、4号の2は適用されず、4号リが問題となります。4号リは無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を対象とし、刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者は除かれますから、執行猶予が付けば直ちに退去強制事由には当たりません。もっとも、在留期間の更新は、法務大臣が更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り許可されるものであり(入管法21条3項)、有罪判決を受けた事実は素行の評価として不利に働きます。

さらに、勾留が長期化して就労や就学ができない状態が続けば、別表第一の資格については、本来の活動を継続して3か月以上行っていないことを理由とする在留資格の取消し(入管法22条の4第1項6号)も視野に入ってきます。正当な理由がある場合は除かれますが、刑事手続の帰趨とは別に、在留資格の維持のための対応を並行して進めなければなりません。

なぜ不起訴処分を最優先の目標にするのか

当事務所は、この類型において、執行猶予判決の獲得を最終目標に置くことはしておりません。前述のとおり、別表第一の在留資格の方は、執行猶予が付いても入管法24条4号の2により退去強制事由に該当し得るからです。刑事手続で「有利な結果」とされる執行猶予判決が、在留の観点では在留資格の喪失に直結し得るという構造を正確に把握しないまま「執行猶予なら大丈夫」とご説明することは、結果としてご本人の生活基盤を失わせることになりかねません。

不起訴処分を目指す道筋は、大きく2つあります。1つは、共謀の不存在や関与の周辺性を主張して嫌疑不十分による不起訴を求める道です。もう1つは、関与を認めたうえで、指示役の支配下にあった事情、被害者への弁償と謝罪、再発防止の環境を示し、起訴猶予(刑事訴訟法248条)を求める道です。どちらの道を取るかは、証拠の状況とご本人の供述の一貫性によって決まりますから、最初の取調べでの対応が、その後の選択肢の幅を決めてしまいます。

逮捕の連絡を受けたときの初動の三点

第1に、黙秘権です。黙秘権は憲法38条1項が保障し、刑事訴訟法198条2項は取調べに先立って供述を強いられない旨を告知するよう求めています。黙秘したことを不利益に扱うことは許されません。美人局の類型では、「自分も脅されていた」という事情を捜査官に分かってもらおうとして、経緯を最初から全部話してしまい、その中の「分け前を受け取った」「男が来ることは知っていた」という部分だけが調書に残る、ということが起こりがちです。何を話し、何を話さないかを、弁護人と相談してから決めることが重要です。

第2に、早期の私選弁護人の選任です。勾留状が発せられれば国選弁護人を請求できますが(刑事訴訟法37条の2)、それは逮捕から最大72時間が経過した後です。共犯者が複数いる事件では、その72時間のうちに他の関係者の供述が固まっていきます。ご家族は、ご本人と独立して弁護人を選任することができます(同法30条2項)。

第3に、通訳の質です。捜査機関が手配する通訳は、捜査のための通訳であり、ご本人のために働く立場ではありません。「誘った」「呼んだ」「会う約束をした」という言葉のニュアンスの違いは、共謀の有無の認定に直結します。当事務所には外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しており、接見の場からご本人の言葉を正確に伝える体制を整えています。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。中国語の専属通訳が常駐しており、捜査機関の通訳とは別に、ご本人の立場で動く通訳を接見から公判まで一貫してご利用いただけます。刑事手続と並行して、提携する行政書士とともに在留資格の維持に向けた対応も行います。

指示役の支配下で関与させられた女性の弁護には、実績がございます。特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、指示役からの欺罔や脅迫的な状況に置かれていたこと、犯意が存在しなかったことを主張立証し、不起訴処分を獲得いたしました。美人局の誘い役とされる女性の事案も、指示役との関係をどう証拠化するかという点で、同じ構造を持っています。

また、特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された方について、不当な取調べに対して抗議を重ね、主張立証を尽くした結果、全件について不起訴処分を獲得した事例がございます。被害者が複数に及び再逮捕が繰り返される類型で、取調べへの対応と各件の証拠関係の整理を一貫して行った経験は、本類型にも直接生きてまいります。

このほか、国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された事件への対応経験があり、中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。

結語

美人局と呼ばれる事案では、金銭を受け取った男だけでなく、誘い役とされた女性にも重い責任が及び得る一方で、その女性自身が誰かの支配のもとに置かれていたという事情が、しばしば見過ごされています。共謀の有無と時期、関与の範囲、指示役との関係。これらは最初の取調べでどう述べたかによって形が決まってしまう争点です。そして別表第一の在留資格の方にとっては、執行猶予判決であっても在留の喪失に結び付き得る類型であることを、最初に知っておいていただきたいと思います。逮捕の連絡を受けたご家族が最初にすべきことは、経緯を推測して説明を組み立てることではなく、方針を立てられる弁護人に早くご相談いただくことです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):通过交友软件实施的“仙人跳”,参与者如何被追责|恐喝罪、诈骗罪的共同正犯,被视为引诱者的女性如何辩护,以及对在留资格的影响

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