舟渡国際法律事務所

一審で実刑判決を受けたとき|控訴の期限14日・控訴趣意書・判決後の保釈と、刑の確定から退去強制までの時間

お問い合わせはこちら

一審で実刑判決を受けたとき|控訴の期限14日・控訴趣意書・判決後の保釈と、刑の確定から退去強制までの時間

一審で実刑判決を受けたとき|控訴の期限14日・控訴趣意書・判決後の保釈と、刑の確定から退去強制までの時間

2026/09/13

「執行猶予が付くと思っていた」。法廷で実刑の判決を聞き、そのまま法廷から連れ戻された方のご家族から、その日の夕方にご連絡をいただくことがあります。一審の判決は終わりではありません。しかし、次の手を打てる時間は驚くほど短く、しかも外国籍の方の場合、刑事手続の時計と入管手続の時計が同時に動き始めます。控訴の期限はいつまでか、控訴趣意書には何を書くのか、判決後に保釈は認められるのか、そして刑が確定した後、退去強制の手続はどのように進むのか。実刑判決を受けた直後のご本人とご家族に向けて、順に整理いたします。

本記事の要点

  • 控訴の提起期間は判決宣告の翌日から起算して14日であり(刑訴法373条・55条1項)、この期間を過ぎると一審判決が確定します。
  • 控訴趣意書は控訴裁判所が定める期限までに提出する必要があり(刑訴法376条1項)、量刑不当(同法381条)や事実誤認(同法382条)などの理由を記録上の事実を引用して主張します。
  • 拘禁刑の判決宣告後は権利保釈(刑訴法89条)が適用されず、裁量保釈(同法90条)も不利益の程度が著しく高い場合などに限られます(同法344条)。
  • 無期又は1年を超える拘禁刑の実刑が確定すると入管法24条4号リの退去強制事由に当たり、刑の執行終了後に退去強制令書が執行されるのが原則です(同法63条2項)。
  • 控訴審では示談・被害弁償・監督体制など判決後の情状も取り調べ得るため(刑訴法393条2項)、控訴審の準備は在留特別許可の主張の準備でもあります。

控訴の期限はいつまでですか。判決の日から14日です

控訴の提起期間は14日です(刑訴法373条)。上訴の期間は裁判が告知された日から進行し(同法358条)、日で計算する期間は初日を算入しませんから(同法55条1項)、判決宣告の翌日を1日目として数え、14日目の終わりが期限となります。控訴の申立書は、控訴裁判所ではなく、判決をした第一審裁判所に提出します(同法374条)。

期限を1日でも過ぎれば、原則として控訴はできず、一審判決がそのまま確定します。ご本人が収容されている拘置施設からも控訴申立書を提出することはできますが、実刑判決の直後は移送や面会の制限が重なり、ご本人だけで手続を進めるのは容易ではありません。原審の弁護人は被告人のために控訴を申し立てることができ(同法355条)、ご本人の明示の意思に反しない限り有効です(同法356条)。判決の当日に、控訴するのか、しないのかを弁護人と確認しておくことが何より大切です。

なお、控訴の申立て自体は短い書面で足り、理由を詳しく書く必要はありません。理由は後述の控訴趣意書で述べます。迷っている間に期限が来てしまうくらいであれば、まず申し立てておき、後に取り下げるという選択もあります。

控訴趣意書には何を書きますか。期限は裁判所が指定します

控訴を申し立てた後、控訴裁判所から控訴趣意書の提出期限が通知されます。控訴趣意書は、裁判所の規則で定める期間内に控訴裁判所へ提出しなければならず(刑訴法376条1項)、この期限を守れないと控訴が棄却される危険があります。実務では、記録の量に応じて数週間から1か月程度の期限が指定されることが多く、その間に一審の記録全体を読み直し、主張を組み立てることになります。

控訴の理由として実務上多いのは、刑の量定が不当であるという主張(同法381条)と、事実の誤認が判決に影響を及ぼすことが明らかであるという主張(同法382条)です。いずれも、訴訟記録と一審で取り調べた証拠に現れている事実を援用して述べることが求められています。したがって、控訴趣意書は感想文ではなく、一審の証拠のどこに、どのような評価の誤りがあるのかを、頁を示して具体的に指摘する書面になります。訴訟手続の法令違反(同法379条)や法令適用の誤り(同法380条)が問題になる事案もあります。

被告人側だけが控訴した事件では、原判決より重い刑を言い渡すことはできません(同法402条)。控訴したことで刑が重くなる心配はないという意味で、この規定は控訴を検討するうえでの安心材料です。控訴に理由があれば控訴裁判所は原判決を破棄し(同法397条1項)、記録と証拠によって直ちに判決できるときは自ら判決をします(同法400条ただし書)。量刑不当を理由とする事件の多くは、控訴裁判所が自判し、刑を軽くする、あるいは執行猶予を付けるという形で決着します。

実刑判決の後でも保釈は認められますか。権利保釈ではなく裁量保釈です

認められる余地はありますが、一審の途中よりも格段に厳しくなります。拘禁刑以上の刑を言い渡す判決の宣告があった後は、一定の除外事由がない限り保釈を許さなければならないとする権利保釈の規定(刑訴法89条)が適用されません(同法344条1項)。判決後の保釈は、裁判所の裁量による保釈(同法90条)だけが根拠となります。

しかも、判決宣告後に裁量保釈を許すには、身体拘束の継続によって被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益その他の不利益の程度が著しく高い場合でなければならないとされ、逃亡のおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときはこの限りでないと定められています(同法344条2項)。要するに、判決後の保釈請求では、なぜ身体拘束を続けると著しい不利益があるのか、あるいは、なぜ逃亡のおそれが高くないのかを、具体的な資料で示す必要があります。

外国籍の方の場合、裁判所は帰国による逃亡のおそれを重く見がちです。これに対しては、旅券を弁護人が預かること、日本に配偶者や子がいて生活の本拠が日本にあること、身元引受人が監督すること、勤務先が復職を認めていること、控訴審の準備のために本人と弁護人の打合せが不可欠であることなどを、書面で積み上げていくことになります。一審判決前に保釈されていた方は、実刑判決の宣告と同時に保釈の効力を失い、その場で収容されますので、判決後の保釈は改めて請求する必要があります。

控訴審で量刑と在留のためにできること

控訴審は、一審の記録を前提に判決の当否を審査する手続ですが、必要があると認めるときは、第一審判決後の刑の量定に影響を及ぼすべき情状についても取り調べることができます(刑訴法393条2項)。この規定があるため、一審判決の後に示談が成立したこと、被害弁償を完了したこと、贖罪寄付を行ったこと、監督を引き受ける家族や雇用主の体制が整ったことは、控訴審で新たに主張し、立証することができます。

刑法25条1項によれば、3年以下の拘禁刑の言渡しを受けた者について、情状により刑の全部の執行を猶予することができます。一審で実刑となった事件を控訴審で執行猶予に変えるには、一審の時点と何が変わったのかを、裁判所が納得できる形で示さなければなりません。一審判決の後に整えた事情は、すべてこの一点に向けて組み立てます。

このとき、在留の観点から重要なのが、入管法24条4号リの構造です。同号は、無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者を退去強制事由としつつ、刑の全部の執行猶予を受けた者と、刑の一部の執行猶予を受けた者で猶予されなかった部分の期間が1年以下のものを除いています。つまり、控訴審で目指すべき結果は、事案によっては執行猶予だけではありません。刑期を1年以下に短縮すること、あるいは刑の一部の執行猶予(刑法27条の2)によって実際に服役する部分を1年以下にすることも、退去強制事由から外れるという点では同じ意味を持ちます。控訴趣意書の量刑主張は、この線を意識して書く必要があります。

さらに、控訴審で集めた資料は、後の入管手続でそのまま生きてまいります。退去強制手続では、法務大臣が在留特別許可を判断するにあたり、家族関係、素行、在留期間、人道上の配慮の必要性などを考慮するものとされています(入管法50条5項)。示談書、家族の陳述書、雇用主の上申書、通院や治療の記録は、量刑資料であると同時に、在留特別許可の資料でもあります。控訴審の準備を、刑事だけのものとして進めるのは、もったいないことです。

想定される刑事手続の流れ。一審判決までと、その後

刑事手続の流れをおさらいしますと、逮捕から48時間以内に警察が検察官へ送致し、検察官は24時間以内に勾留を請求するかどうかを判断します。勾留は原則10日、延長でさらに10日まで認められ、起訴されれば公判に移ります。公判では、自白事件であれば1回か2回の期日で結審し、およそ1か月後に判決が言い渡されるのが通常です。

判決の後は、14日以内の控訴、控訴趣意書の提出、控訴審の第1回公判という順に進みます。控訴審の第1回公判は、控訴趣意書の提出から1か月から2か月ほど先に指定されることが多く、判決後の情状に関する事実の取調べを行う場合には、もう1回程度期日が入ることがあります。控訴審の判決に対しては上告の道もありますが、上告の理由は憲法違反や判例違反などに限られており(刑訴法405条)、量刑の軽重だけを理由に争える手続ではありません。

控訴をしなければ、判決宣告の翌日から14日を経過した時点で一審判決が確定します。控訴をして控訴審で控訴が棄却された場合には、控訴審判決に対する上告期間の経過によって確定します。確定した裁判は執行され(同法471条)、実刑であれば刑事施設での服役が始まります。

刑の確定と退去強制手続は、どのような時間関係になりますか

入管手続は刑事手続の終了を待ってはいません。入管法63条1項は、退去強制対象者に当たる外国人について刑事訴訟や刑の執行の手続が行われている場合でも、退去強制の手続を進めることができると定めています。実務では、刑事施設に収容されている間に入国警備官による違反調査(同法27条)や入国審査官の審査(同法45条)が行われることが珍しくありません。

入国審査官が退去強制対象者に当たると認定すると、その旨が本人に通知され(同法47条3項)、本人は口頭審理の請求と在留特別許可の申請ができることを告げられます(同条4項)。認定に服した場合、3日以内に在留特別許可の申請をしなければ退去強制令書が発付されます(同条5項2号)。在留特別許可の申請は、退去強制令書が発付された後はできません(同法50条3項)。服役中に届く書類の意味を理解しないまま署名してしまうと、取り返しのつかない結果になり得るのは、この構造のためです。

退去強制令書が発付されても、刑の執行が終わるまでは執行されないのが原則ですが、刑の執行中であっても、検事総長又は検事長の許可があれば執行することができます(同法63条2項)。実務上は、刑期の途中で仮釈放と同時に送還されるという流れが見られ、送還を前提に釈放時期が調整されることがあります。刑の確定から送還までの間に何が起きるのかを、判決の直後から見通しておく必要があります。

なお、令和5年改正により、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた方については、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限って在留特別許可が認められることになりました(同法50条1項ただし書)。厳しい枠組みですが、公表されている許可事例を見る限り、日本人の子の監護養育などの事情があれば許可された例もあります。同種の事情で許可された事例があるにもかかわらず不許可とすることは、平等原則(憲法14条1項)の観点から争う余地があります。当事務所は、入管庁が公表する在留特別許可の事例集を分析し、本件に近い事例を引いて主張を組み立てております。

本来は起訴前の不起訴処分が最優先の目標です

本記事は一審判決の後を扱っていますが、あえて申し上げておきたいことがあります。一審で実刑となる事件の多くは、起訴された時点で、執行猶予の獲得だけでは在留を守れない構造になっていました。入管法24条4号リの除外規定は執行猶予の場合に限られており、その手前で不起訴処分を得ることができれば、この号の問題そのものが生じません。刑事事件のご相談は、早ければ早いほど選択肢が広いということを、実刑判決を受けた方のご家族にこそお伝えしなければなりません。

もっとも、判決後であっても手は残っています。控訴審での刑期短縮や執行猶予、判決後の保釈、在留特別許可の準備。これらを一体として進めることが、いま取れる最善の方針です。

判決直後のご本人とご家族が押さえるべき3点

第1に、黙秘権です。憲法38条1項は自己に不利益な供述を強要されないことを保障し、刑訴法198条2項は取調べに先立つ告知を求めています。判決後であっても、余罪の取調べや入管の違反調査で供述を求められる場面はあり、そこで述べた内容が控訴審や在留特別許可の判断に影響します。何を話し、何を話さないかは、弁護人と相談してから決めることです。

第2に、弁護人の選任です。一審の国選弁護人の職務は一審の判決で終了し、控訴審では改めて選任が必要です。控訴期限の14日は、新しい弁護人を探す時間としてはあまりに短く、控訴趣意書の期限もすぐに来ます。控訴審から私選弁護人に依頼する場合は、判決の直後に動き出す必要があります。

第3に、通訳の質です。捜査機関や裁判所が手配する通訳は、手続のための通訳であり、ご本人の利益のために動く立場ではありません。控訴趣意書の内容をご本人が正確に理解し、判決後の事情をご本人の言葉で弁護人に伝えるためには、ご本人の側に立つ通訳が要ります。当事務所には、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しております。

当事務所のご案内と解決事例

舟渡国際法律事務所では、接見の初動から公判の結審まで、松村大介弁護士が全工程を直接担当いたします。控訴審から受任した事件でも、一審の記録を弁護士自身が読み込み、控訴趣意書を起案し、控訴審の公判に立ち、判決後の入管手続まで一貫して対応いたします。中国語の専属通訳が常駐しており、接見にも同行いたします。

覚醒剤取締法違反の営利目的所持で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問を積み重ね、無罪判決を獲得した事例がございます。証拠を一つずつ読み解き、供述の矛盾を法廷で明らかにする作業は、控訴審で一審の事実認定を争う場面でも中核を成します。

在留資格を失い不法滞在で起訴された方について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、入管の過去の許可事例を分析して主張を組み立て、在留特別許可を一度の申請で獲得した事例がございます。刑事手続と入管手続を同時に見据えて資料を整えるという方針は、実刑判決の後に在留特別許可を目指す場面でも同じです。

このほか、国際的な刑事事件、裁判員裁判の対象となる事件、世界的に報道された事件への対応経験を積んでまいりました。中国籍の方の重大事件にも多数対応しております。

結語

一審で実刑判決を受けた日は、ご本人にとってもご家族にとっても、最も苦しい日の一つです。しかし、その日から14日という期限が動き始めており、控訴審には、判決後の事情を取り込んで結論を変え得る仕組みが用意されています。刑期を執行猶予に変えること、1年以下に短縮すること、判決後の保釈を得ること、在留特別許可の資料を整えること。どれも判決直後の動き出しで結果が変わります。落ち着いて、しかし早く、方針を立てられる立場の者にご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。

過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年9月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

中文版(简体字):一审被判实刑之后|控诉期限14日、控诉趣意书、判决后的保释,以及刑罚确定与退去强制之间的时间关系

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。