過失運転致死傷罪で在留資格は失われるか|刑事処分と入管手続の要点
2026/08/13
人身事故を起こすと、自動車運転死傷行為処罰法5条の過失運転致死傷罪として捜査が始まります。中国籍の方からは、罰金で済むのか、在留資格に響くのかというご相談が多く寄せられます。この罪は刑法犯ではなく特別法の過失犯であるため、入管法24条4号の2の列挙罪には当たらず、罰金や執行猶予にとどまる限り退去強制事由には結びつきにくい類型です。もっとも、1年を超える実刑となれば同条4号リの問題となり、更新申請では素行が審査されます。処分の見通しと在留への影響を具体的に整理します。
本記事の要点
- 過失運転致死傷罪の法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金で、傷害が軽いときは刑の免除もあり得ます。
- 刑法犯ではないため、入管法24条4号の2による退去強制のリスクは生じません。
- 1年を超える拘禁刑の実刑は入管法24条4号リに該当するため、重大な結果の事案では実刑回避が課題になります。
- 不起訴処分を得られれば前科が残らず、その後の在留期間更新でも説明が容易になります。
過失運転致死傷罪の法定刑と処分の見通しはどうなりますか
過失運転致死傷罪の法定刑は7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金であり、傷害が軽いときは情状により刑を免除することができます。実務上、被害が軽微で示談が成立している事案では不起訴となることが少なくなく、通院期間が短い事案は起訴猶予の余地があります。他方、死亡事案や重い後遺障害が残る事案、飲酒や無免許が併存する事案では公判請求もあり得ます。無免許運転が伴う場合は同法6条により加重され、法定刑の上限が引き上げられます。中国籍の方の場合、罰金であっても前科として記録が残り、後の在留審査で申告を求められる場面があるため、略式手続に同意するかどうかも含めて検討が必要です。
事故直後の対応で気をつけることは何ですか
まず、救護と報告という道路交通法72条1項の義務を確実に果たすことが出発点です。負傷者の救護と警察への報告を怠れば、ひき逃げとして別個の重い罪責を負い、在留への影響も大きく変わります。そのうえで、過失の内容に関する説明は慎重に行う必要があります。動揺した状態で全面的に自分の不注意を認める発言をすると、被害者側の飛び出しや信号の状況といった有利な事情が検討されないまま過失が固まってしまいます。ドライブレコーダーの映像や防犯カメラは早期に保全しなければ上書きされます。日本語での事情聴取に不安がある場合は、通訳の同席を求め、調書の内容を訳し戻してもらってから署名することが大切です。
在留資格にはどのような影響がありますか
結論として、この罪だけで直ちに在留資格を失う場面は限られています。入管法24条4号の2は別表第一の在留資格者が刑法の列挙罪で拘禁刑に処せられた場合の規定であり、特別法の過失犯である本罪は対象外です。薬物事犯に関する同条4号チにも当たりません。退去強制が問題になるのは、1年を超える拘禁刑の実刑となり同条4号リに該当する場合が中心です。ただし、在留期間更新や在留資格変更は入管法21条3項等に基づく裁量判断であり、ガイドラインは素行が善良であることを求めています。人身事故の前科は不利な事情として考慮され得ますので、賠償の完了、反省、再発防止の状況を疎明することが実務上重要になります。
不起訴を目指す弁護活動はどのように進めますか
弁護活動の目標は、まず不起訴処分の獲得に置きます。具体的には、被害者との示談交渉を早期に開始し、任意保険による賠償の進捗と併せて、被害回復が図られていることを検察官に示します。過失の内容についても、事故態様の実況見分結果や映像資料を精査し、予見可能性や回避可能性が乏しい事情があれば積極的に主張します。処分が罰金となる場合でも、略式命令を受け入れるか正式裁判で争うかは、在留への影響を踏まえて判断すべき事項です。執行猶予が見込まれる事案でも、更新申請の段階で説明を求められることを前提に、判決謄本や示談書、勤務先の状況説明を整えておくことをお勧めします。
よくあるご質問
罰金刑になった場合、在留資格の更新はできますか
罰金刑は入管法24条4号リの1年を超える拘禁刑に当たらず、同条4号の2の対象でもないため、それ自体で退去強制となることはありません。もっとも更新は裁量判断ですので、賠償の完了や再発防止の状況を示す資料を添えて申請することが望まれます。申告漏れは後の審査で不利に働きますので、正確に説明することが大切です。
被害者が全治二週間程度でも起訴されますか
軽傷で示談が成立している事案では起訴猶予となる例が多く、法律上も傷害が軽いときは刑の免除が認められています。ただし飲酒や無免許が併存する場合、あるいは同種前科がある場合は、軽傷でも起訴されることがあります。処分の見通しは診断書の内容と治療期間によって変わりますので、資料を確認しながら方針を決めます。
会社の車で事故を起こしました。在留に影響しますか
業務中の事故であっても刑事責任は運転者本人に生じます。在留面での評価も同様ですが、勤務先が再発防止措置を講じ、雇用を継続する旨を示す書面は、更新審査において生活の安定を裏付ける資料として意味を持ちます。また、勤務先が事故を理由に雇用を打ち切ると、在留資格該当性そのものが問題となり得ます。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の分析と被告人質問・反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------