暗号資産をめぐる詐欺事件で捜査を受けたら|罪名と在留資格の問題
2026/08/13
暗号資産の高配当運用やマイニング事業をうたって資金を集める行為、あるいは他人名義の取引所口座を用いて資金を移動させる行為は、刑法246条1項の詐欺罪や資金決済法の無登録営業として捜査対象になります。ブロックチェーン上の送金記録は消えないため、関与の程度が客観的に追跡される点に特徴があります。本稿では、暗号資産事案で問われる罪名、資金の受け皿となった方の責任、そして有罪となった場合の在留資格への影響を整理します。
本記事の要点
- 架空の運用益を示して暗号資産や現金を交付させれば、刑法246条1項の詐欺罪が成立します。
- 登録を受けずに暗号資産交換業を営めば、資金決済法63条の2に違反し107条の罰則の対象となります。
- 取引所口座を提供した方も、被害金の受け皿であるとの認識があれば共犯として立件され得ます。
- 別表第一の在留資格では、詐欺罪の執行猶予付き判決でも入管法24条4号の2に該当します。
暗号資産の勧誘はどのような場合に詐欺罪になりますか
元本保証や高配当を約束し、実際には運用の実体がないのに資金を集めた場合、刑法246条1項の詐欺罪が成立します。法定刑は10年以下の拘禁刑です。暗号資産は財物ではなく財産上の利益として扱われる場面もあるため、送金の態様によっては同条2項の適用が問題となることもあります。また、取引所を運営したり、他人のために暗号資産の売買や交換、管理を業として行ったりする場合には、資金決済法63条の2の登録が必要であり、無登録営業には同法107条により3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科という罰則があります。相場の下落によって結果的に元本を返せなくなった事案と、当初から運用の実体がなかった事案とでは評価が全く異なり、当初の資金使途が最大の争点となります。
取引所の口座を貸した場合の責任はどうなりますか
被害金の受け皿であることを認識していれば、詐欺の共同正犯や幇助犯としての責任を負い得ます。暗号資産の移転記録はブロックチェーン上に残り、取引所の本人確認記録と突き合わせることで資金の流れが明確に立証されるため、否認が通りにくい類型です。捜査機関は、口座開設時の本人確認書類、送金の頻度と金額、換金後の現金の交付先などを詳細に調べます。報酬を受け取っていた事実が判明すると、認識を推認させる強い間接事実となります。他方、家族や知人に頼まれて口座を開設したにすぎず、資金の性質を知らなかったという事案も存在します。取調べにおいては、いつ、誰から、どのような説明を受けたのかを、時系列に沿って正確に述べることが重要です。
有罪となった場合、在留にはどのような影響がありますか
詐欺罪で拘禁刑に処せられれば、別表第一の在留資格の方は執行猶予付きであっても入管法24条4号の2の退去強制事由に該当します。経営・管理や技術・人文知識・国際業務の在留資格で暗号資産関連の事業に従事していた方は、この点をとくに注意する必要があります。資金決済法違反のみで罰金にとどまる場合は同号に該当しませんが、在留期間更新の審査においては素行が善良であることが求められるため、不許可の可能性が生じます。永住者や定住者などの別表第二の在留資格には24条4号の2の適用がなく、1年を超える実刑を対象とする24条4号リが問題となります。退去強制手続に進んだ場合には、入管法50条の在留特別許可を求めるとともに、44条の2以下の監理措置の活用も検討します。
初動でどのような点に注意すべきですか
ウォレットの秘密鍵や取引履歴の取扱いを、弁護人と相談してから決めることが重要です。証拠隠滅と評価される行為は、勾留の必要性の判断や量刑に直結するため、資産を移動させたり履歴を消去したりしてはいけません。他方で、自らの正当な取引を裏づける記録は、故意を否定する重要な資料となり得るため、保全の方法を検討します。取調べでは、暗号資産の仕組みに関する技術的な説明が通訳を介して正確に伝わらないことが少なくありません。ブロックチェーンや取引所の用語が誤訳されると、認識の内容が実際と異なる形で調書化されます。専門用語を理解できる通訳が確保されているかを確認し、疑問があれば署名を留保して弁護人に相談してください。
よくあるご質問
相場が下がって返金できないだけでも詐欺になりますか
当初から運用の実体があり、相場の変動によって返金が困難になったにすぎない場合は、欺く行為がなく詐欺罪は成立しにくいと考えられます。もっとも、集めた資金を当初から個人的に費消していた場合には、当初の欺罔が認定され詐欺罪となります。資金の使途を裏づける記録の保全が、故意の有無を判断するうえで決定的な意味を持ちます。
海外の取引所を使っていれば日本の捜査は及びませんか
日本国内で勧誘や資金の受渡しをしていれば、日本の捜査権が及びます。海外取引所であっても、国際的な捜査共助や取引所への照会により記録が取得される例があります。所在地のみを理由に処罰を免れると考えるべきではありません。国内での勧誘や現金の授受を裏づける資料は、関与の範囲を画する重要な証拠となります。
経営・管理の在留資格で事業をしていた場合の影響は
詐欺罪で拘禁刑に処せられれば、執行猶予でも入管法24条4号の2に該当します。加えて、事業の実体が失われれば在留資格該当性そのものを欠くと判断され、22条の4による取消しの対象となることもあります。刑事と入管の両面での検討が必要です。事業の継続可能性についても、早い段階で現実的な見通しを立てておく必要があります。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区・高田馬場駅から徒歩約5分)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。刑事事件と在留の問題を別々の専門家に分けて依頼するのではなく、同一の弁護士が最初の接見から入管手続まで一貫して担当いたします。
当事務所には外国人事件専属の中国語通訳が在籍しており、接見、取調べへの立会い、ご家族との打合せに対応いたします。中国国内にいらっしゃるご家族からのご連絡も、微信(WeChat)で直接お受けしております。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更については、提携する行政書士とともに対応いたします。
これまでの解決実績の一部をご紹介いたします。
- 特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案において、取調べへの対応と主張立証を尽くし、全件について不起訴処分を獲得した事例。
- 特殊詐欺の出し子とされた20代の依頼者について、指示役からの欺罔的・威圧的状況と犯意の不存在を主張し、不起訴処分を獲得した事例。
- 在留資格を失って不法残留で逮捕・起訴された依頼者について、婚姻と認知の手続を実現させたうえで、公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を収集し、一度の申請で在留特別許可を獲得した事例。
本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
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