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入管庁の公表事例から読む在留特別許可|平等原則という視点の使い方

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入管庁の公表事例から読む在留特別許可|平等原則という視点の使い方

入管庁の公表事例から読む在留特別許可|平等原則という視点の使い方

2026/08/13

在留特別許可について調べていくと、法務大臣の広い裁量という言葉に行き当たり、そこで手が止まってしまう方が多くいらっしゃいます。裁量が広いということは、こちらの主張が届く余地がないという意味なのでしょうか。そうではございません。出入国在留管理庁は、平成16年以降、在留特別許可の許可事例と不許可事例を年度別に公表してまいりました。これらは、行政自身が許可に値すると判断した先例の集積です。本記事では、この公表事例をどのように読み、どのように主張へ組み立てるのかを、入管法50条5項と憲法14条1項の平等原則を手がかりにご説明いたします。

本記事の要点

  • 出入国在留管理庁は平成16年以降、在留特別許可の許可事例・不許可事例を年度別に公表しています。
  • 公表事例は、行政自身が許可相当と判断した先例の集積であり、主張の基礎資料として用いることができます。
  • 入管法50条5項が考慮要素を法定したことにより、公表事例との対照はより構造的に行いやすくなりました。
  • 同種の事情で許可の実績があるにもかかわらず異なる扱いをすることの合理性は、憲法14条1項の平等原則の観点から問うことができます。
  • 公表事例に実績があることは許可を保証するものではなく、結論はあくまで個別の事情によって左右されます。

同じような事情で許可された人がいるなら、自分も許可されますか

許可されますと申し上げることはできません。在留特別許可の判断は個別の事情に左右されるものであり、先例と同じ結論が保証される仕組みにはなっていないからです。この点について、当事務所は期待を持たせる説明をいたしません。

その一方で、公表事例には確かな使い道がございます。行政庁が過去に許可相当と判断した事情の類型を具体的に知ることができ、そこから、本件で何を示せば判断の土俵に乗るのかを逆算できるからです。主張の当てずっぽうを避け、資料の収集を焦点化するための地図として機能いたします。

公表事例とは、どのようなものですか

出入国在留管理庁は、平成16年以降、在留特別許可を与えた事例と与えなかった事例を、年度ごとに整理して公表しております。違反の態様、在日期間、家族構成、発覚の経緯、素行といった事情が、簡潔な形で示されているのが特徴です。

もっとも、個人情報や処分理由への配慮から、記載はかなり抽象化されております。したがって、本件と細部まで一致する事例を探すという読み方は現実的ではございません。事情の本質的な類似性、すなわち、どの要素が判断を支えたと読めるかという観点から対照していくことになります。

入管法50条5項の考慮要素と、どう接続するのか

入管法50条5項は、法務大臣が考慮するものとして、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を挙げ、そのほか内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものと定めております。

考慮要素が法律上明記されたことの意味は小さくありません。公表事例を読む際にも、この項目に沿って要素を分解し、本件の事情を同じ枠組みで並べることができるからです。かつては印象論に流れがちであった対照作業を、条文の項目ごとに構造化できるようになった、と申し上げてよいかと存じます。

  • 在留を希望する理由が、生活の実態に裏づけられているか
  • 家族関係について、同居・扶養・養育の具体的な事実があるか
  • 在留期間とその間の法的地位が、どのように積み重ねられてきたか
  • 退去強制の理由となった事実の評価に、事案の実質が反映されているか
  • 人道上の配慮を要する事情が、客観的な資料で裏づけられているか

憲法14条1項の平等原則という組み立て方

同種の事情を有する事案について過去に許可の実績があるにもかかわらず、本件についてのみ異なる扱いをするのであれば、その区別に合理的な理由があるのかが問われることになります。この問いは、法の下の平等を定める憲法14条1項に照らした主張として構成することができます。

実務的には、単に類似事例を列挙するだけでは足りません。公表事例のどの要素が許可を支えたと読めるのか、本件にはその要素が備わっているのか、備わっていない要素があるとすればそれを補う事情は何か。この三段の整理を経てはじめて、区別の合理性を問う主張として成立いたします。

薬物事案における難所と、それでも残る足がかり

率直に申し上げて、薬物事案は不利な出発点に立たされます。50条5項の考慮要素のうち、素行と退去強制の理由となった事実の二つが、いずれも重い方向に働くからです。この現実を伏せて楽観的な見通しを述べることは、誠実な説明とはいえません。

他方で、条文の構造には見落とされがちな足がかりがございます。入管法50条1項但書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者等を除く)又は24条3号の2、3号の3、4号ハ若しくはオからヨまでに該当する者について、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情がある場合に限る、という加重を課しております。この列挙に、薬物事犯を定める4号チは含まれておりません。すなわち、1年を超える実刑でない限り、加重要件ではなく通常の枠組みで判断されることになります。

公表事例を実際に抽出する手順

作業としては地道なものです。年度ごとの公表資料を通覧し、本件と本質的に近い要素を持つ事例を拾い上げ、50条5項の項目ごとに要素を並べ替えていきます。そのうえで、本件に足りない要素を洗い出し、収集すべき資料の一覧に落とし込みます。

この過程で、思いがけない発見があることも少なくありません。ご本人やご家族が当たり前だと思っておられた日常の事実が、実は公表事例において重視されてきた要素と重なっている、という場面です。だからこそ、生活の細部を丁寧に伺うことから始めております。

  • 年度別の公表資料を通覧し、本件と近い類型を抽出する
  • 抽出した事例を50条5項の項目ごとに分解して整理する
  • 本件の事情を同じ枠組みで並べ、共通点と相違点を可視化する
  • 相違点を補うために必要な資料を特定し、収集の計画を立てる

当事務所の体制と、関連する解決事例

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語については外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、中国語以外の言語については事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更については、提携の行政書士とともに対応しております。

観光目的で来日された相談者が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了であったため一旦は不受理とされたところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況の中で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することにより、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。また、冤罪により不法就労助長罪に問われた女性の事案では、責任主義の射程を問う訴訟を係争中であり、同事件において前例のない在留特別許可を獲得した実績もございます。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

公表事例は、行政庁が自ら書き残した判断の記録です。そこに示された要素を丁寧に読み解き、条文の枠組みに沿って本件の事情を並べていく。この作業の積み重ねが、広い裁量という言葉の前で立ち止まらないための方法になります。結論をお約束することはできませんが、主張を届けるための道筋は確かに存在いたします。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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