舟渡国際法律事務所

退去強制された後、もう一度日本に来られますか|入管法12条1項の上陸特別許可という唯一の道

お問い合わせはこちら

退去強制された後、もう一度日本に来られますか|入管法12条1項の上陸特別許可という唯一の道

退去強制された後、もう一度日本に来られますか|入管法12条1項の上陸特別許可という唯一の道

2026/08/13

日本を離れることになった後で、最も多く寄せられるお尋ねが、いつになったらまた日本に入れるのか、というものです。ご家族が日本におられる場合、この問いは生活そのものに直結いたします。薬物の刑に処せられた方については、他の退去強制歴の場合とは事情が異なり、年数が経てば自動的に扉が開く、という仕組みにはなっておりません。本記事では、入管法5条1項5号の構造を確認したうえで、残された手段である12条1項の上陸特別許可について、期待を煽ることなく、また過度に諦めを促すこともなく、制度の形をご説明いたします。

本記事の要点

  • 入管法5条1項5号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する法令に違反して刑に処せられたことのある者を上陸拒否事由として定めており、期間の定めがありません。
  • 同項9号が定める1年・5年・10年という期間は退去強制歴等に対応するもので、5号にはこれに相当する年限が置かれていません。
  • 5号は刑に処せられたことで足り、罰金でも該当します。日本国以外の国の法令違反も含まれます。
  • したがって、通常の上陸許可の枠組みでは入国できず、入管法12条1項の上陸特別許可を求める以外に道がありません。
  • 上陸特別許可は法務大臣の裁量に委ねられており、認められるかどうかを事前にお約束できるものではございません。

何年か経てば、また日本に入国できますか

薬物に関する法令違反で刑に処せられた方については、年数の経過だけで上陸拒否事由が消えるという仕組みにはなっておりません。入管法5条1項5号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者を掲げておりますが、そこには期間の定めが置かれていないからです。

この点は、一般の退去強制歴の場合と大きく異なります。同項9号は、退去強制された経緯に応じて1年、5年、10年という期間を定め、その期間を経過していない者を上陸拒否の対象としております。期間の定めがあるということは、裏を返せば、その期間が過ぎれば当該事由による拒否は解けるということです。5号には、その仕組みがありません。

入管法5条1項5号を条文どおりに読む

5号が定める要件は、薬物に関する取締法令に違反して刑に処せられたことがある、という一点です。刑の重さは問われておりません。したがって、罰金であっても該当いたします。また、条文は日本国以外の国の法令違反をも含めておりますので、他国で薬物により刑に処せられた経歴も同様に扱われます。

この構造は、退去強制事由である入管法24条4号チと通じております。4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、又は刑法第2編第14章に違反して有罪の判決を受けた者を掲げ、刑種も刑期も限定しておりません。入る側の扉も、出される側の扉も、薬物については同じ厳しさで設計されているということになります。

  • 刑種の限定がなく、罰金でも該当する(5条1項5号)
  • 外国の法令違反による刑も含まれる(同号)
  • 参考として、5条1項4号は1年以上の拘禁刑又はこれに相当する刑に処せられたことのある者を定める
  • 5条1項6号は、麻薬・覚醒剤等を不法に所持する者そのものを上陸拒否事由とする

それでも残されている手続、入管法12条1項の上陸特別許可

通常の上陸許可の枠組みで入国できない以上、残されているのは入管法12条1項の上陸特別許可を求める道です。これは法務大臣の裁量による特別の許可であり、要件を満たせば当然に与えられるという性質のものではございません。したがって、可能性があるという言い方はできても、見込みを数字でお示しすることはできません。

実務上重要なのは、なぜ日本に入国する必要があるのかを、抽象的な希望としてではなく、具体的な生活の事実として示すことです。日本におられる配偶者やお子様との関係、その方々の生活状況、離れて暮らすことによって生じている支障。そして、退去後に積み重ねてこられた事実です。

退去後の時間をどう積み上げるか

上陸特別許可を求める場面では、退去強制の理由となった事実が消えることはありません。その前提のうえで、その後の年月に何があったのかが問われます。就労と納税の記録、医療機関への通院や再乱用防止に向けた取組みの継続、家族との交流の実態。いずれも、書面と客観資料の形で残しておかなければ、後から再現することが難しいものばかりです。

ご家族が日本におられる場合には、日本側で保管できる資料も少なくありません。送金の記録、往復した書簡、面会や渡航の記録、お子様の学校生活に関する資料。これらは、離れていてもなお家族としての実質が保たれていることを示す素材になります。

  • 本国での就労・納税・居住の継続を示す資料
  • 医療機関の受診状況や治療プログラムの参加記録
  • 日本にいるご家族との連絡・送金・面会の記録
  • お子様の就学状況や、養育に関する現実的な必要性を示す資料

送還される前にできることの方が、はるかに多いという現実

率直に申し上げますと、退去強制の後に扉を開くことは、退去強制の前に在留を維持することよりも、はるかに難しい作業です。入管法50条は在留特別許可の枠組みを定めておりますが、同条3項は退去強制令書が発付された後は申請ができない旨を明記しております。時間の順序が、そのまま選択肢の広さを決めているのです。

だからこそ当事務所は、外国人の薬物事件においては、公判での執行猶予獲得を最終目標に据える弁護方針は、在留という観点からは目標設定を誤っていると考えております。有罪判決は刑種を問わず24条4号チに該当し、その先には5条1項5号が待っております。起訴前段階における不起訴処分の獲得こそが、在留を守る完全な出口です。

当事務所の体制について

舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。海外におられるご本人と、日本におられるご家族の双方から事情を伺いながら手続を組み立てる必要がある場面も少なくありません。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しております。中国語以外の言語については、事案に応じて通訳人を手配いたします。

在留資格に関する手続については、提携の行政書士とともにワンストップで対応しております。ご相談は、ウェブサイト又は微信からお受けしております。

参考となる解決事例

観光目的で来日された相談者が、日本人女性との間にお子様を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了であったため一旦は不受理とされたところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を成立させました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況の中で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することにより、一度の申請で在留特別許可を獲得しております。

当事務所は、国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績も有しております。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

入管法5条1項5号に年限が置かれていないという事実は、確かに重いものです。しかし、制度が完全に閉じているわけではなく、12条1項という別の入口が用意されていることも、また事実です。その入口に立つために何を積み上げるかは、今日からの過ごし方に懸かっております。安易な見通しをお示しすることはいたしませんが、ご事情を伺ったうえで、現実的に採り得る道を一緒に整理することはできます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


東京にて中国人の方をサポート

東京を中心に刑事事件の弁護

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。