舟渡国際法律事務所

裁決と退去強制令書発付処分の取消訴訟、そして執行停止|在留特別許可が認められなかった後の選択肢

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裁決と退去強制令書発付処分の取消訴訟、そして執行停止|在留特別許可が認められなかった後の選択肢

裁決と退去強制令書発付処分の取消訴訟、そして執行停止|在留特別許可が認められなかった後の選択肢

2026/08/13

在留特別許可が認められず、退去強制令書が発付されたとき、多くのご家族が「これでもう打つ手はないのだろうか」とお感じになります。行政の判断が最終のものであるとは限りません。行政庁の処分については、裁判所に対してその取消しを求め、あわせて効力の停止を求める道が制度として用意されております。もちろん、それは容易な道ではなく、結果をお約束できるものでもございません。本記事では、薬物事件により退去強制事由に該当してしまわれた方のご家族に向けて、行政訴訟という枠組みで何を争うことになるのか、そのために手元に残しておくべきものは何かを、静かに整理してまいります。

本記事の要点

  • 在留特別許可が認められなかった場合でも、法務大臣の裁決及び退去強制令書発付処分については、行政事件訴訟による取消しを求める道があります。
  • 争点の中心は、入管法50条5項が法定する考慮要素が適切に考慮されたか、裁量権の逸脱又は濫用があったかという点になります。
  • 入管法50条10項により、不許可の際には理由を付した書面が交付されます。この書面が主張を組み立てる出発点になります。
  • 訴訟の提起だけでは送還の手続が当然に止まるわけではないため、執行停止の申立てを併せて検討することになります。
  • 出入国在留管理庁が公表してきた在留特別許可の事例は、憲法14条1項の平等原則に基づく主張の基礎資料となり得ます。

在留特別許可が認められなかったら、もう終わりですか

行政庁の判断が出た時点で、法的な手段がすべて尽きるわけではございません。法務大臣の裁決及び退去強制令書発付処分は行政処分ですので、行政事件訴訟の枠組みで取消しを求めることが考えられます。あわせて、判決までの間に送還が実施されないよう、執行停止の申立てを検討することになります。

ただし、訴訟は時間も労力も要する手続であり、見通しを軽々にお示しできるものではございません。当事務所は勝訴の予測を申し上げません。どのような主張が可能で、そのためにどの資料が必要かを率直にご説明することを方針としております。

訴訟では、実際に何を争うのですか

中心となるのは、法務大臣の判断が裁量の範囲を超え、又はこれを濫用したものといえるかどうかです。従来、在留特別許可については広い裁量が語られてまいりましたが、入管法50条5項が考慮要素を法律上明記したことにより、議論の立て方は明確になりました。すなわち、法が考慮せよと定めた事情を考慮していない、あるいは考慮すべきでない事情に重きを置いた、という形で判断過程そのものを問うことができるからです。

薬物事案では、素行及び退去強制の理由となった事実が不利に働くことは避けられません。しかし、50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、人道上の配慮の必要性をも並べて掲げております。これらが具体的にどう評価されたのかが記録に表れていない場合、考慮不尽の主張が成り立つ余地が生じます。

  • 50条5項の各考慮要素が、事案に即して個別に検討されたか
  • 家族関係や在留期間の実態が、資料に照らして正確に把握されていたか
  • 退去強制の理由となった事実の評価が、事案の実質を離れて画一的になっていないか
  • 同種の事情について過去に許可された事例との均衡が図られているか

50条10項の理由付記書面が出発点になります

入管法50条10項は、在留特別許可をしないこととするときは、速やかに理由を付した書面で通知しなければならないと定めております。この書面は、行政庁が何を重く見て、何を軽く扱ったのかを示す一次資料です。したがって、これを受け取られた際には、内容を確認したうえで大切に保管していただく必要がございます。

理由の記載が抽象的である場合、それ自体が争点になり得ます。法が考慮要素を法定した以上、その項目に対応した具体的な検討が示されているかどうかが、判断過程の適否を測る手がかりになるからです。

執行停止という時間の確保

取消訴訟を提起しても、それだけで送還の手続が当然に止まるわけではございません。そこで、判決までの間に既成事実が作られてしまうことを避けるため、執行停止の申立てを併せて行うことが検討されます。申立てが認められるかどうかは、事案の具体的事情に左右され、一般論として結果を申し上げることはできません。

この場面で効いてくるのは、送還により何が回復不能となるのかを、抽象論ではなく個別具体の事実として示せるかどうかです。同居するお子様の年齢と就学の状況、療養を要するご家族の状態、就労と生計の実態。日々の暮らしの記録が、そのまま主張の素材になります。

公表事例と平等原則という視点

出入国在留管理庁は、平成16年以降、在留特別許可の許可事例と不許可事例を年度別に公表してまいりました。これらは、行政自身が許可相当と判断した先例の集積にほかなりません。同種の事情を有する事例で許可の実績があるにもかかわらず、本件についてのみ異なる扱いをすることに合理的な理由があるのか。この問いは、憲法14条1項の平等原則に基づく主張として構成することができます。

50条5項が考慮要素を法定したことにより、公表事例との対照は、より構造的に行いやすくなりました。もっとも、公表事例は個人情報への配慮から記載が抽象化されておりますので、完全な一致ではなく、事情の本質的な類似性を基準に対照いたします。同種の実績は許可を保証するものではございません。

当事務所の考え方と体制

当事務所は、刑事弁護と入管手続を一つの流れとして設計することを基本としております。刑事事件での不起訴処分の獲得が第一の防御、退去強制事由該当性を争うことが第二の防御、在留特別許可が第三の防御であり、行政訴訟はその延長線上に位置づけられます。前の段階で残した記録が、後の段階を支えます。

松村大介弁護士が、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語については外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、中国語以外の言語については事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の手続は、提携の行政書士とともに対応いたします。

関連する解決事例

冤罪により不法就労助長罪に問われ、強制退去の危機に瀕した女性を救済する裁判において、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を問い直すべく、責任主義・過失責任主義の射程を争う訴訟を現在も係争中です。同じ事件では、不法就労助長罪の認定事件としては前例のない在留特別許可を獲得した実績もございます。

また、在留資格を失い不法滞在で逮捕・起訴された相談者の事案では、婚姻と認知の成立に向けて当局と交渉し、過去の許可事例を分析することにより、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。刑事事件では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴されたご依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例もございます。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

行政訴訟は、行政庁の判断を裁判所の目にさらす手続です。そこで問われるのは、法が定めた考慮要素が、その方の人生の具体に即して本当に検討されたのか、という一点に尽きます。結果をお約束することはできませんが、争う筋道が制度として存在することは、知っておいていただく価値があると考えております。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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