監理措置と薬物事犯|収容によらない形をどう求め、在留特別許可へどうつなげるか
2026/08/13
収容が長く続くことは、ご本人の心身にも、ご家族の生活にも、大きな負担をもたらします。令和5年の改正によって導入された監理措置は、収容によらずに退去強制手続を進める仕組みとして設けられたものです。ご家族から「うちの場合も使えるのでしょうか」というお尋ねをいただくことが増えてまいりました。率直に申し上げますと、薬物事犯の事案でこの仕組みが認められることは、容易ではないと考えております。それでも、主張すべきことは確かにございます。本記事では、期待を煽ることなく、しかし諦めることもなく、この制度をどう位置づけるかを整理いたします。
本記事の要点
- 監理措置は、令和5年改正により導入された、収容によらずに退去強制手続を進めるための仕組みです。
- 入管法50条2項は、在留特別許可の申請主体として、収容令書により収容された外国人と並んで、監理措置決定を受けた外国人を挙げております。
- 薬物事犯の事案で監理措置が認められることは容易ではなく、見通しを断定的に申し上げることはできません。
- 監理人となる方の存在と、その方が生活をどのように把握できるかが、実務上の要点になります。
- 収容が続く場合であっても、在留特別許可に向けた準備を止める理由にはなりません。
監理措置とは、どのような仕組みなのでしょうか
監理措置は、退去強制の手続を、収容という形をとらずに進めるための仕組みでございます。令和5年の入管法改正によって設けられ、監理人となる方を定めたうえで、その監督のもとで手続を進めることが想定されております。
この仕組みの位置づけを条文のうえで確認できる箇所の一つが、入管法50条2項です。同項は、在留特別許可の申請について、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により法務大臣に対して行うものと定めております。つまり、監理措置決定を受けた方は、収容されている方と同じく、在留特別許可の申請主体として明記されているということです。
薬物事犯では、監理措置は認められにくいのでしょうか
率直に申し上げます。容易ではないと考えております。ここを曖昧にしたまま期待をお持ちいただくことは、かえってご家族の負担になると思いますので、はっきりお伝えしておきたいところです。
薬物事犯は、入管法24条4号チにより、刑の重さを問わず退去強制事由に該当いたします。加えて、事案によっては、背景に組織的な要素がある場合や、依存の問題が継続している場合があり、これらは収容によらない形を求めるうえで不利に働きうるものです。統計の面でも、警察庁の令和7年の資料によれば覚醒剤事犯の再犯者率は64.6%とされております。
もっとも、薬物事犯であれば一律に認められないという定めがあるわけではございません。事案の態様、関与の程度、依存の有無とその治療の状況、監督体制の実質、これまでの在留の状況。こうした個別の事情によって判断は異なりうるものと考えております。結論を予断せず、主張できる事情を丁寧に示していくことが、この場面での取り組み方になります。
監理人となる方をどう考えるか
実務上、最初に直面するのが、監理人となっていただける方をどのように見つけるかという問題です。ここは制度の入口にあたる部分でございます。
求められるのは、単に名前を貸してくださる方ではありません。ご本人の生活を実際に把握でき、日々の連絡が取れ、必要なときに手続へ同行できる関係にある方が望ましいと考えております。同居されているご家族、長年の雇用主、地域で継続的に関わってこられた方など、関係の実質が示せることが要点になります。
- 同居又は近隣に居住し、日常的に連絡を取れる関係にあること
- ご本人の就労や通院の状況を把握できる立場にあること
- これまでの関わりを示す客観的な資料(住民票、写真、やり取りの記録など)
- 監理人となる方自身の生活の安定を示す資料
監理措置は、在留特別許可への入場口でもあります
当事務所は、外国人の薬物事件について、防御を三段階で設計しております。第一が刑事事件における不起訴処分の獲得、第二が退去強制事由該当性を争うこと、そして第三が在留特別許可でございます。
この第三の防御線に立つためには、手続上の要件を満たしている必要があります。50条2項が定める申請主体は、収容令書により収容された外国人か、監理措置決定を受けた外国人です。すなわち監理措置は、収容によらない生活を実現するという意味だけでなく、在留特別許可の申請という道に立つための一つの経路でもあるということになります。
さらに、収容によらない状態にあることは、第三の防御線を戦ううえで実際上の利点をもたらします。医療機関への継続的な受診、就労の継続、家族との生活の実態。これらはいずれも、50条5項が挙げる素行や家族関係、人道上の配慮の必要性といった項目に直接つながる事柄です。
収容が続く場合にも、できることがあります
監理措置が認められなかった場合も、その判断を待っている間も、在留特別許可に向けた準備を進めることはできます。資料の収集は、ご家族でなければ進められない部分が多くございます。戸籍や住民票、お子さまの在籍証明や通知表、納税証明、在職証明、雇用主からの書面、監督に当たる方の誓約書。医療につながる必要がある事案では、受診の手配や付添いの体制を整えておくことも意味を持ちます。
見通しについて、私たちが申し上げられること
監理措置についても、在留特別許可についても、結果をお約束することはできません。制度の運用は事案ごとに異なり、判断する側の評価にも幅がございます。当事務所が申し上げられるのは、主張しうる事情を漏れなく示し、資料によって裏づけるという作業を尽くすことができる、という点にとどまります。
ただ、その作業には確かな意味があると考えております。50条10項は、不許可処分をするときは速やかに理由を付した書面で通知しなければならないと定めております。判断の理由が示されるということは、こちらの主張がどの部分で受け入れられ、どの部分で受け入れられなかったのかを確認できるということでもあります。手続には積み重ねがあり、その積み重ねは無駄にはなりません。
当事務所の体制と、これまでのお取り扱い
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)では、松村大介弁護士が刑事の接見から入管手続の書面作成まで直接担当いたします。監理人となる方との打合せや生活実態の把握は、事件の経過を知る者が行うことで精度が上がると考えております。
中国語につきましては、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。その他の言語は事案に応じて通訳人を手配し、手続終了後の在留資格の更新・変更等は提携の行政書士とともに対応しております。
お取り扱いの例としては、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された相談者について、当局との交渉により身分関係を整え、過去の許可事例を分析して一度の申請で在留特別許可を獲得した事例がございます。また、冤罪により不法就労助長罪に問われた女性の事件では、前例のない在留特別許可を獲得し、退去強制事由に故意・過失は不要とする従来の実務を問う訴訟を係属させております。
監理措置は、まだ運用の蓄積が重ねられている途上の仕組みでございます。薬物事犯の事案で認められることが容易でないのは事実ですが、その一方で、条文は監理措置決定を受けた方を在留特別許可の申請主体として明記しております。制度のなかに用意されている道を、一つひとつ確かめながら進んでいくほかありません。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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東京を中心に刑事事件の弁護
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