舟渡国際法律事務所

短期滞在・旅行者が薬物で摘発されたら|空港の水際から帰国後の再入国まで

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短期滞在・旅行者が薬物で摘発されたら|空港の水際から帰国後の再入国まで

短期滞在・旅行者が薬物で摘発されたら|空港の水際から帰国後の再入国まで

2026/08/13

観光や商用、親族訪問のために来日された方が、空港の検査場や滞在先で薬物事件の当事者となる。そうしたご相談を、当事務所は少なからずお受けしてまいりました。短期滞在の方の事案には、他の在留資格にはない固有の難しさがございます。在留期間が短いため刑事手続の途中で期間が満了してしまうこと、生活の拠点が日本にないため在留を求める主張が組みにくいこと、そして帰国した後の再入国が入管法5条1項5号によって塞がれてしまうことです。本記事では、この三つの局面を順に整理し、どこに手立てが残されているのかを考えてまいります。

本記事の要点

  • 短期滞在であっても、薬物事犯で有罪の判決を受ければ入管法24条4号チにより退去強制事由に該当いたします。
  • 在留期間が短いため、刑事手続の途中で期間が満了し、不法残留の状態が重なることがあります。
  • 薬物の不法所持者は入管法5条1項6号により上陸拒否の対象とされており、水際で入国自体が認められない場合があります。
  • 刑に処せられた後は、入管法5条1項5号により期間の定めのない上陸拒否となり、年数の経過では消滅いたしません。
  • 在留の主張が組みにくい類型だからこそ、起訴前の不起訴処分の獲得が持つ意味が相対的に大きくなります。

短期滞在で摘発されると、何が同時に進行するのでしょうか

短期滞在の方の事案では、刑事手続と在留の問題が、ほぼ同時に、しかし別々のスピードで進んでまいります。まずこの構図をご理解いただくことが出発点になります。

刑事の側では、逮捕、送致、勾留請求、勾留質問という流れをたどり、起訴前の身柄拘束は延長を含めて20日あまりに及びます。他方、在留の側では、短期滞在の在留期間はもともと短く定められておりますので、身柄が拘束されている間に期間が満了してしまうことが珍しくありません。ご本人には出国の自由が事実上ありませんから、意図せずして在留期間を経過した状態、すなわち入管法24条4号ロが問題となる状態が重なることになります。

そのうえで、有罪の判決を受けた場合には、入管法24条4号チが独立して作動いたします。同号は、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、又は刑法第2編第14章に違反して有罪の判決を受けた者を掲げるもので、刑種にも刑期にも限定がなく、罰金でも執行猶予付きでも該当いたします。

空港で止められた場合|入管法5条1項6号という水際の規定

入国の前に空港で発覚した場合は、そもそも上陸が認められないという別の問題が生じます。入管法5条1項6号は、麻薬、向精神薬、けし、あへん、けしがら、覚醒剤、覚醒剤原料又はあへん煙吸食器具を不法に所持する者を、上陸拒否事由として掲げております。

この規定は、刑に処せられたかどうかを問わず、不法に所持していること自体を捉えるものです。したがって、刑事手続の帰結を待たずに、入国の可否という場面で独自に働くことになります。海外で合法とされている製品を、その認識のまま持ち込んでしまったという事案でも、日本の法令上どう評価されるかは別問題です。

帰国すれば終わりでしょうか|5条1項5号に年限がないことの意味

帰国によって刑事手続や退去強制手続が終わったとしても、再び日本を訪れることができるかどうかは別の問題です。ここで決定的な意味を持つのが、入管法5条1項5号でございます。

同号は、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者を、上陸拒否事由として掲げております。この規定には、5条1項9号のような期間の定めが置かれておりません。9号は退去強制歴などに応じて1年、5年、10年という期間を定めておりますが、5号にはそれがないのです。

したがって、薬物の刑に処せられた方は、年数の経過によって上陸拒否事由が消えるという構造になっておりません。しかも5号は「刑に処せられたこと」で足りますので、罰金でも該当いたしますし、外国の法令に違反した場合も含まれます。以後の入国については、入管法12条1項の上陸特別許可を得る道を検討することになります。

  • 5条1項5号=薬物の刑に処せられた者。年限の定めなし。罰金でも該当。外国の法令違反も含む
  • 5条1項9号=退去強制歴等に応じて1年・5年・10年の期間の定めあり
  • 5条1項4号=1年以上の拘禁刑等に処せられたことのある者(政治犯罪を除く)
  • 再度の入国を目指す場合は12条1項の上陸特別許可を検討することになります

在留の主張が組みにくいからこそ、起訴前が勝負になります

在留特別許可の判断において、入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮するものと定めております。

短期滞在の方は、この列挙のうち「本邦に在留している期間」や「家族関係」といった項目で、長期在留の方と同じ厚みを示すことが構造的に難しくなります。日本に生活の拠点がないという事実は、変えようがありません。だからこそ、当事務所は、この類型においては起訴前段階に弁護活動の重心を置くべきだと考えております。有罪の判決が存在しなければ、24条4号チは作動せず、5条1項5号の問題も生じないからです。

起訴前の限られた期間に何を行うかは、事案の性質によって異なります。所持や輸入の事案では、荷物の管理状況や渡航の経緯から故意の存否を精査いたします。使用の事案では、採尿手続の任意性、令状の適法性、鑑定資料の同一性と保管の連鎖を検討いたします。いずれも個別の事情を離れて結論を述べられる事柄ではございませんが、争点として検討に値する場面は現に存在いたします。

本国のご家族へ|日本の手続をどう見ていただくか

日本の刑事手続では、逮捕から起訴・不起訴の判断までの期間が法律上区切られており、その間に弁護人が接見し、検察官に対して意見を述べることができます。外国人の方については、領事関係に関するウィーン条約36条1項(b)に基づく領事通報の仕組みもございます。ご本人の言語で正確に事情を伝えられる体制があるかどうかは、この期間の質を大きく左右いたします。

当事務所の体制と、これまでのお取り扱い

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)では、松村大介弁護士が最初の接見から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。短期滞在の事案では初動の時間が限られますので、弁護人自身が最初から事実関係を把握していることの意味が大きくなります。

中国語につきましては、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。その他の言語は事案に応じて通訳人を手配し、手続終了後の在留資格に関する事柄は提携の行政書士とともに対応しております。

お取り扱いの例としては、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例がございます。国際刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績もございます。また、特殊詐欺の出し子とされた20代の女性について、主観的な事情を総合的に主張して不起訴処分を獲得した事例もございます。

旅行や出張のつもりで訪れた国で身柄を拘束されるという事態は、ご本人にもご家族にも、想像しにくい出来事だと思います。それでも、日本の手続には区切りがあり、その区切りごとに採りうる手立てがございます。まずは事実関係を落ち着いて整理するところから始めていただければと思います。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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