舟渡国際法律事務所

定住者の在留資格と薬物事件|日系人の生活基盤を在留特別許可にどう反映させるか

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定住者の在留資格と薬物事件|日系人の生活基盤を在留特別許可にどう反映させるか

定住者の在留資格と薬物事件|日系人の生活基盤を在留特別許可にどう反映させるか

2026/08/13

日系ブラジル人・日系ペルー人の方をはじめ、定住者の在留資格で長く日本に暮らしてこられた方々にとって、薬物事件はこれまで築いてきた生活の土台そのものを揺るがす出来事となります。お子さまは日本の学校に通い、職場には同僚がおり、生活の実質はすべて日本にある。それでも、入管法24条4号チは在留資格の種類を問わずに作動いたします。本記事では、定住者の方が薬物事件に直面したときに制度上何が起こるのか、そして積み上げてこられた生活の実態を在留特別許可の手続にどのように反映させていくのかを、条文に沿って整理してまいります。

本記事の要点

  • 定住者は入管法別表第二の在留資格ですが、24条4号チは在留資格の種類を問わず適用され、薬物事犯の有罪判決だけで退去強制事由に該当いたします。
  • 別表第一のみを対象とする24条4号の2は定住者には及びませんが、薬物についてはその区別が働きません。
  • 入管法50条1項但書の列挙に4号チは含まれていないため、1年を超える実刑でない限り、加重された要件は課されません。
  • 長期の定着、日本で生まれ育ったお子さまの存在、就労と納税の実績は、50条5項の考慮要素として構造的に主張することができます。
  • 在留を守る観点からは、公判での量刑よりも、起訴前段階における不起訴処分の獲得が最も重要な目標となります。

定住者であっても、薬物の有罪判決は退去強制事由になります

はじめに結論を申し上げます。定住者の在留資格をお持ちの方であっても、薬物事犯で有罪の判決を受けた場合には、入管法24条4号チにより退去強制事由に該当いたします。刑の重さは問われません。罰金であっても、刑の免除であっても、全部執行猶予の付いた判決であっても、同じように該当することになります。

24条4号チは、昭和26年11月1日以後に、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、又は刑法第2編第14章(あへん煙に関する罪)に違反して有罪の判決を受けた者を掲げております。条文が求めているのは「有罪の判決を受けた」という事実だけであり、刑種にも刑期にも限定がなく、執行猶予を除外する定めも置かれておりません。

別表第二なのに、なぜ薬物では在留資格の強さが効かないのでしょうか

在留資格の強さが効く場面と効かない場面が、条文上分かれているためでございます。入管法24条4号の2は、別表第一の在留資格をもって在留する者が、刑法の一定の章の罪や自動車運転死傷処罰法2条・6条1項の罪などにより拘禁刑に処せられたときを退去強制事由としております。この規定は別表第二には適用されません。定住者の方にとっては、ここが確かな防波堤となります。

ところが薬物事犯は、4号の2の問題ではなく、4号チの問題です。4号チは主体を別表第一に限定しておりませんから、せっかくの防波堤がそのまま素通りされる形になります。就労資格の方が一般刑法犯で拘禁刑に処せられた場面と、定住者の方が薬物で有罪となった場面とでは、そもそも拠って立つ条文が異なるのです。

統計から見える、日系コミュニティと薬物事犯

警察庁「令和7年における組織犯罪の情勢」によりますと、外国人の薬物事犯の検挙人員は1,502人で、前年から214人増加しております。国籍・地域別に見ますと、ブラジルが229人、ペルーが47人となっており、日系の方が多く在住する国が上位に現れております。

また、同資料における来日外国人犯罪の総検挙人員12,777人を在留資格別に見ますと、定住者は1,469人で全体の11.5%を占めております。個々の方の事情を語る数字ではございませんが、日系コミュニティに属する方が当事者となる場面が現に生じていることは、率直に受け止める必要があると考えております。

  • 外国人の薬物事犯検挙人員1,502人(前年比214人増)/警察庁・令和7年
  • 国籍・地域別ではブラジル229人、ペルー47人
  • 来日外国人犯罪の在留資格別で定住者1,469人(11.5%)

長年の生活基盤は、在留特別許可でどこまで評価されるのでしょうか

定住者の方にとっての実質的な勝負所は、多くの場合、在留特別許可の判断において生活の実態をどれだけ具体的に示せるかにあります。ここで手がかりとなるのが、令和5年改正で明文化された入管法50条5項です。

同項は、法務大臣が考慮するものとして、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を挙げ、さらに内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものと定めております。

  • 在留している期間・法的地位=住民票の履歴、在留カードの更新履歴、資格外活動等の違反歴がないこと
  • 家族関係=お子さまの在籍証明、通知表、家族の陳述書、養育の分担状況
  • 素行=納税証明書、社会保険の加入歴、前科前歴の有無、職場からの上申書
  • 人道上の配慮の必要性=お子さまの学齢と言語能力、本国での生活・就学の現実的可能性
  • 在留を希望する理由=雇用継続の意向書、住居の確保状況、地域とのつながり

公表事例をもとに、平等原則の観点から主張を組み立てる

出入国在留管理庁は平成16年以降、在留特別許可の許可事例・不許可事例を年度別に公表しております。これらは、行政庁自身が「許可することが相当である」と判断した先例の集積にほかなりません。当事務所では、この公表事例を体系的に整理し、ご相談の事案に近い類型を抽出する作業を、書面作成の出発点に置いております。

同種の事情を有する事案について許可の実績があるにもかかわらず、本件についてのみ異なる取扱いをすることに合理的な理由が見出せない場合には、憲法14条1項の平等原則の観点から問題を提起する余地がございます。50条5項が考慮要素を法定化したことによって、どの要素についてどの先例と比較しているのかを、条文の項目に沿って構造的に示しやすくなりました。

もっとも、公表事例は個人情報への配慮から記載が抽象化されており、完全に一致する事案を見つけることは容易ではございません。本質的な事情の類似性を軸として組み立てることになります。結果をお約束できる手法ではありませんが、主張の説得力を支える柱の一つになると考えております。

刑事段階での目標設定と、当事務所のお取り扱い

在留を守るという観点からは、公判で全部執行猶予の判決を得ることは終着点になりません。有罪の判決である以上、24条4号チの扉は開いてしまうからです。したがって弁護活動の第一の目標は、起訴前段階における不起訴処分の獲得に置かれます。当事務所では、これを不起訴目標主義と呼んでおります。

これまでのお取り扱いのうち本稿の主題に近いものとしては、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例、在留資格を失って不法滞在で逮捕・起訴された相談者について当局と交渉し、入管当局の過去の許可事例を分析して一度の申請で在留特別許可を獲得した事例、不法就労助長罪の認定事件において前例のない在留特別許可を獲得した事例がございます。

当事務所の体制

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。生活の全体像を弁護人自身が把握していることが、入管手続での主張の厚みにつながってまいります。

中国語につきましては、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。ポルトガル語・スペイン語その他の言語は、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の手続は、提携の行政書士とともに対応しております。

定住者としての年月は、書面のうえでは一行の記載にすぎませんが、実際にはご本人とご家族の生活そのものです。その厚みを、50条5項の各項目に沿って言葉と資料へ置き換えていく作業が、在留特別許可の手続の中心にあると考えております。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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