舟渡国際法律事務所

コカイン・MDMAで逮捕されたら|麻向法66条の法定刑と入管法24条4号チ

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コカイン・MDMAで逮捕されたら|麻向法66条の法定刑と入管法24条4号チ

コカイン・MDMAで逮捕されたら|麻向法66条の法定刑と入管法24条4号チ

2026/08/13

クラブやパーティの場で人から渡された、旅行中に持っていた分をそのまま所持していた。コカインやMDMAをめぐる事件は、そうした一回的な関わりから始まることがございます。ご本人としては軽い気持ちであったとしても、これらは麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」であり、所持それ自体が処罰の対象です。そして外国人の方の場合、有罪判決を受けたという事実が、そのまま在留資格を失う理由になります。本稿では、条文と法定刑を確認したうえで、統計が示す実情と、退去強制手続に進んだ場合に何が起きるのかを、順にご説明いたします。

本記事の要点

  • コカインやMDMAなどの麻薬の所持・譲渡等は麻薬及び向精神薬取締法66条により7年以下の拘禁刑と定められています。
  • 輸入・輸出・製造は同法65条1項により1年以上10年以下の拘禁刑となり、営利目的の場合はさらに重くなります。
  • 有罪判決を受ければ、刑の重さを問わず入管法24条4号チにより退去強制事由となります。
  • 薬物事犯に該当する方は、入管法24条の3の要件を満たさないため、出国命令の制度を利用できません。
  • 警察庁の令和7年の統計では、外国人の薬物事犯のうちコカインが118人、MDMA等が88人とされています。

コカインやMDMAは、どの法律で、どのように規制されているのでしょうか

これらはいずれも麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」として規制されております。大麻以外の麻薬の所持・譲渡等については、同法66条が7年以下の拘禁刑を定めており、営利の目的がある場合は1年以上10年以下の拘禁刑に300万円以下の罰金が加わります。

輸入・輸出・製造については、同法65条1項により1年以上10年以下の拘禁刑とされ、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑に500万円以下の罰金が併科されます。また、麻薬の使用(施用)および受施用は、同法66条の2第1項により7年以下の拘禁刑と定められております。なお、同じ麻薬でも、いわゆるヘロイン等については同法64条の2・64条の3によりいずれも10年以下の拘禁刑とされ、別に重い扱いが置かれております。

  • 麻薬(コカイン・MDMA等)の所持・譲渡等(麻向法66条)=7年以下の拘禁刑
  • 同・営利目的(同条)=1年以上10年以下の拘禁刑及び300万円以下の罰金
  • 麻薬の輸入・輸出・製造(同法65条1項)=1年以上10年以下の拘禁刑
  • 麻薬の使用(施用)・受施用(同法66条の2第1項)=7年以下の拘禁刑

その場で渡された、預かっていただけ、という場合

この類型では、入手の経緯が比較的単純であることが多く、それゆえご本人が事態の重さを実感しにくいという特徴がございます。

しかし、法律上は、所持という状態が成立していれば処罰の対象となり得ますし、渡された物を受け取った行為が譲受けとして評価されることもございます。他方で、渡された物が何であるかを認識していたかどうかは、故意の問題として意味を持ちます。誰から、どのような状況で、何と説明されて受け取ったのか。この経緯を正確に述べることが出発点となります。

取調べでは、その場の雰囲気や人間関係を説明するうちに、事実と評価が混ざった供述が録取されてしまうことがございます。供述の内容は一つずつ確認しておく必要がございます。

統計から見えるもの

警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」によりますと、令和7年の薬物事犯の検挙人員は総数14,574人で、うち麻薬及び向精神薬に係るものが1,334人とされております。外国人の薬物事犯の検挙人員は1,502人で、その内訳は覚醒剤657人、大麻527人、コカイン118人、MDMA等88人でございます。

処分の傾向についても、公表資料から一定の姿がうかがえます。令和7年版犯罪白書(原資料は検察統計年報)によりますと、令和6年の麻薬取締法違反は起訴率57.5%、起訴猶予率15.9%でございました。覚醒剤取締法違反の起訴猶予率8.5%と、大麻取締法違反の35.5%との、ちょうど中間に位置する水準でございます。

これらは罪名ごとの集計であり、態様の区別を含みません。ご自身の事案の見通しを直接に導けるものではございませんが、起訴猶予という結論が現実にあり得る類型であることは読み取れます。

有罪になった場合、在留はどうなるのでしょうか

入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法をはじめとする列挙法令に違反して有罪の判決を受けた者を、退去強制事由として掲げております。この規定には刑種の限定も、刑期の下限も、執行猶予の場合を除くという但書もございません。罰金であっても、全部執行猶予付きの判決であっても、結論は同じでございます。

1年を超える拘禁刑を対象とする24条4号リには全部執行猶予を除く旨の但書がございますが、同号は「ニからチまでに掲げる者のほか」と規定しており、薬物事犯はその守備範囲の外にございます。執行猶予がついたから在留できるという理解は、薬物事件には当てはまりません。

さらに、退去強制の後には入管法5条1項5号による上陸拒否事由が残ります。同項9号の退去強制歴に基づく上陸拒否には1年・5年・10年という期間の定めがございますが、5号には年限が置かれておりません。

自分から出国すれば出国命令で済むのでしょうか

薬物事犯に該当する方については、出国命令の制度を利用することができません。この点は誤解の多いところですので、条文に即してご説明いたします。

入管法24条の3は、出国命令の対象を24条2号の4、4号ロ、6号から7号までに該当する外国人に限ったうえで、要件として、違反調査開始前の自主出頭等であること、24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号又は9号のいずれにも該当しないこと、本邦入国後に4号の2に列挙された罪により拘禁刑に処せられていないこと、過去に退去強制・出国命令による出国歴がないこと、速やかに出国することが確実と見込まれることを掲げております。

薬物事犯を定める24条4号チは、この要件のうち「4号ハからヨまでのいずれにも該当しないこと」に抵触いたします。したがって、自ら出頭しても出国命令にはならず、退去強制の手続に進みます。オーバーステイの事案とは、この点で扱いが異なります。

在留特別許可を目指すとき、公表事例の分析が持つ意味

退去強制事由に該当した場合でも、在留特別許可(入管法50条)の枠組みが残されております。とりわけ、同条1項但書が加重要件を課す対象の列挙に24条4号チが含まれていないことは、押さえておくべき点でございます。1年を超える実刑でない限り、通常の枠組みで判断されることになります。

判断にあたっては、同条5項が、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性などを考慮要素として法定しております。ここで当事務所が重視しているのが、出入国在留管理庁が平成16年以降に公表してきた在留特別許可の事例の分析でございます。

公表事例は、行政庁自身が許可相当と判断した先例の集積にほかなりません。同種の事情を有する事案について許可の実績がありながら、本件についてのみ異なる取扱いがなされるのであれば、その合理性が問われます。憲法14条1項の平等原則の観点から主張を構造化する余地がここにございます。

ただし、公表事例との対比によって許可が得られると申し上げることはできません。判断はあくまで個別の事情によります。許可の実績があること、それを踏まえた主張が可能であること、この二点をお伝えするにとどめます。

解決事例とご相談の体制

起訴前の弁護活動および在留特別許可に関する当事務所の実績のうち、公表可能な範囲を三件ご紹介いたします。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで、全工程を直接担当いたします。中国語については外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続後の在留資格の更新・変更等は、提携の行政書士とともに対応しております。

  • 観光目的で来日した相談者が在留資格を喪失し不法滞在で逮捕・起訴された事案において、婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、公的書類の乏しい状況下で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することにより、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
  • 特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。
  • 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績がございます。

コカインやMDMAの事件は、一回限りの関わりで終わっていることも多く、刑事事件としては比較的短い期間で決着することがございます。しかし、その決着の内容が有罪判決である限り、在留資格には別の帰結が待っております。刑事手続の見通しだけを聞いて安心してしまわないこと、そして退去強制手続まで見据えた設計を早い段階で持つことが、選択肢を残す道につながります。状況の整理からご一緒させていただければ幸いです。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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