舟渡国際法律事務所

空港で覚醒剤の営利目的輸入を疑われたら|無期又は3年以上という重さと在留

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空港で覚醒剤の営利目的輸入を疑われたら|無期又は3年以上という重さと在留

空港で覚醒剤の営利目的輸入を疑われたら|無期又は3年以上という重さと在留

2026/08/13

到着ロビーに現れるはずの家族が、いつまで待っても出てこない。数日後になって、税関検査の場で身柄を拘束されたと知らされる。空港での薬物事件は、多くの場合そうした形でご家族に伝わります。覚醒剤の営利目的輸入は、日本の薬物犯罪の中でも最も重い部類に属し、法定刑には無期の拘禁刑が含まれております。本稿では、この類型がどれほどの重さを持つ罪なのか、手続はどのように進むのか、そして外国人の依頼者にとって在留の観点から何が問題になるのかを、落ち着いてご説明いたします。

本記事の要点

  • 覚醒剤の営利目的の輸入・輸出・製造は覚醒剤取締法41条2項により無期若しくは3年以上の拘禁刑とされ、情状により同刑及び1000万円以下の罰金が科されます。
  • 営利目的でない輸入・輸出・製造も同条1項により1年以上の有期拘禁刑と定められています。
  • 法定刑に無期が含まれるため、この類型は裁判員裁判の対象事件として審理されます。
  • 在留の観点では、有罪判決そのものが入管法24条4号チの退去強制事由となり、実刑期間が1年を超えれば50条1項但書の加重要件も作動します。
  • したがって、量刑を軽くする方向の弁護に早期に切り替えることが、在留の観点では最善とは限りません。

空港で摘発された場合、どれほど重い罪に問われるのでしょうか

覚醒剤の輸入・輸出・製造は、覚醒剤取締法41条1項により1年以上の有期拘禁刑と定められております。そして営利の目的がある場合には、同条2項により無期若しくは3年以上の拘禁刑となり、情状により同刑及び1000万円以下の罰金が併科されます。無期が選択肢に含まれている点に、この類型の位置づけが表れております。

麻薬についても同様の構造がございます。ジアセチルモルヒネ、いわゆるヘロイン等の輸入・輸出・製造は麻薬及び向精神薬取締法64条1項により1年以上の有期拘禁刑、営利目的の場合は無期若しくは3年以上の拘禁刑に1000万円以下の罰金が加わります。コカインやMDMAなどその他の麻薬の輸入・輸出・製造は同法65条1項により1年以上10年以下の拘禁刑、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑に500万円以下の罰金が加わる定めです。

さらに、組織的・反復的な密輸が問題となる事案では、麻薬特例法5条の「業として行う不法輸入等」が適用されることがございます。同条は無期又は5年以上の拘禁刑及び1000万円以下の罰金と定めており、罰金の併科が必要的とされている点で、他の条文と異なる重さを持っております。

  • 覚醒剤・輸入等(覚醒剤取締法41条1項)=1年以上の有期拘禁刑
  • 覚醒剤・営利目的輸入等(同条2項)=無期若しくは3年以上の拘禁刑、情状により同刑及び1000万円以下の罰金
  • ヘロイン等・営利目的輸入等(麻向法64条1項)=無期若しくは3年以上の拘禁刑及び1000万円以下の罰金
  • 業として行う不法輸入等(麻薬特例法5条)=無期又は5年以上の拘禁刑及び1000万円以下の罰金

手続はどのように進むのか

空港での事案は、税関の検査を端緒として始まることが多く、その場での身柄拘束を経て、捜査機関による取調べへと移ります。押収された薬物の量が多い事案では、当初から営利目的を前提とした捜査が進められることになります。

法定刑に無期が含まれる罪ですので、起訴されれば裁判員裁判の対象事件として審理されます。公判前整理手続を経ることになり、事件の受理から判決までには相応の期間を要します。その間、身柄が解かれない状態が続くことが多く、ご家族にとっては先の見えない時間となりがちです。

また、渡航してきたばかりの方の事案では、日本国内に身元を引き受ける方がおらず、住居も定まっていないという事情が加わります。連絡先の確保、本国のご家族との連絡、通訳の手配といった実務的な課題が、法律上の争点と並行して生じてまいります。

「頼まれて運んだだけ」という事案の扱い

スーツケースの二重底や土産物の中に薬物が隠されていた事案では、運搬した本人が中身を知らなかったと述べることがしばしばございます。犯罪の成立には故意が必要ですので、この主張は法律上、正面から意味を持つ主張でございます。

他方で、その説明が受け入れられるためには、渡航の経緯、依頼者との関係、報酬の額とその相当性、荷物を預かった状況、渡航費用を誰が負担したかといった事情との整合が問われます。荷物の重量や外観に不自然な点がありながら確認をしなかった経緯についても、説明が求められることになります。いわゆる未必の故意として評価されるかどうかが、実務上の分かれ目となる場面が多くございます。

したがって、初期の供述をどう組み立てるかが決定的に重要となります。断片的な記憶をその都度述べるのではなく、渡航の準備から摘発までの経過を時系列に沿って一貫した形で示していく必要がございます。通訳を介したやり取りでは、認識に関わる微妙な表現が調書の上で強い意味を持ってしまうことがあり、この点にも注意を要します。

在留の観点から見た、この類型の特殊性

入管法24条4号チは、覚醒剤取締法などの列挙法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由として掲げております。刑の重さは要件とされておりませんので、この類型では、有罪判決を受けた時点で退去強制事由の成立は避けられません。

そのうえで、法定刑の下限が3年以上とされている以上、有罪となれば1年を超える実刑となる可能性が高くなります。入管法50条1項但書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者について、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件を課しております。すなわち、この類型では、在留特別許可の判断枠組みそのものが厳しい側に移ることになります。

さらに、退去強制の後には入管法5条1項5号による上陸拒否事由が残り、これには同項9号のような1年・5年・10年といった年限が置かれておりません。日本にご家族を残して送還される場合、その後の再会の見通しにも影響する事柄でございます。

早期に「情状弁護」へ切り替えることの落とし穴

重大事件では、争っても結論は変わらないという見方から、早い段階で事実を認めて量刑を軽くする方向に舵を切る、という選択が語られることがございます。刑期の短縮という一点だけを見れば、そうした判断が合理的である場面も確かに存在いたします。

しかし、外国人の依頼者について申し上げれば、この選択には別の意味が伴います。24条4号チの構造上、有罪判決を受ければ刑の重さを問わず退去強制事由が生じます。すなわち、量刑を軽くすることに成功しても、在留という結果は変わりません。在留を守り得る出口は、起訴前の不起訴処分か、公判における無罪の判断か、そのいずれかに限られてまいります。

したがって、故意を争う余地が客観的に残されているにもかかわらず、量刑目的で早期に事実を認めることは、在留という観点からは失われるものが大きい選択となり得ます。刑事事件の見通しと在留の見通しを別々の物差しで測り、依頼者ご本人とご家族に両方を正確にお伝えしたうえで方針を決めていただく。当事務所が最も時間をかけているのは、この場面でございます。

なお、故意を争うという判断は、証拠関係を精査したうえでなされるべきものであり、争えば有利になると申し上げているのではございません。争う余地の有無そのものを、記録に即して見極める作業が先行いたします。

解決事例とご相談の体制

重大事件および営利目的が争点となった事案について、当事務所の実績のうち公表可能な範囲を二件挙げます。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。裁判員裁判対象事件では、公判前整理手続における主張の組み立てと証拠の吟味に長い時間を要しますが、この過程を分担せず一貫して担当する方針を採っております。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。

  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問を通じて無罪判決を獲得いたしました。営利目的という主観的要素の認定を、証拠に即して正面から争った事案でございます。
  • 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績がございます。

空港での摘発から始まる事件は、罪の重さも、手続の長さも、ご家族にかかる負担も、他の薬物事件とは水準が異なります。それだけに、最初にどの方向を向いて弁護方針を立てるかが、後の選択肢を大きく左右いたします。刑期という物差しと、在留という物差しの両方を並べて、納得のいく形で方針を決めていただくことが何より大切です。まずは事実関係を整理するところから、ご一緒させていただければと存じます。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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