舟渡国際法律事務所

覚醒剤の所持・譲受けで逮捕されたら|41条の2の法定刑と退去強制の関係

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覚醒剤の所持・譲受けで逮捕されたら|41条の2の法定刑と退去強制の関係

覚醒剤の所持・譲受けで逮捕されたら|41条の2の法定刑と退去強制の関係

2026/08/13

覚醒剤取締法違反の事件は、大麻の事件とは手続の空気が明らかに異なります。統計上も、起訴される割合、実刑となる割合のいずれもが高く、初動の段階から厳しい見通しが語られることが少なくありません。ご本人やご家族が最初に知っておくべきなのは、刑事事件としての重さと、在留資格に及ぼす影響とが、別々の理屈で動いているという事実でございます。本稿では、所持・譲受けの法定刑を確認したうえで、統計が示す現実、そして退去強制と在留特別許可の枠組みを、順を追って整理いたします。

本記事の要点

  • 覚醒剤の所持・譲渡し・譲受けは覚醒剤取締法41条の2第1項により10年以下の拘禁刑と定められています。
  • 営利の目的がある場合は1年以上の有期拘禁刑となり、これに500万円以下の罰金が科されます。
  • 令和6年の覚醒剤取締法違反の起訴猶予率は8.5%であり、大麻の35.5%と比べて著しく低い水準にあります。
  • 有罪判決を受ければ、刑の重さを問わず入管法24条4号チにより退去強制事由となります。
  • 1年を超える実刑となった場合には、入管法50条1項但書の加重要件が在留特別許可の判断に作動します。

覚醒剤の所持や譲受けにはどのような刑が定められているのでしょうか

覚醒剤の所持・譲渡し・譲受けは、覚醒剤取締法41条の2第1項により10年以下の拘禁刑と定められております。営利の目的がある場合は1年以上の有期拘禁刑となり、これに500万円以下の罰金が併科されます。

大麻の単純な所持・譲渡し・譲受けが麻薬及び向精神薬取締法66条1項により7年以下の拘禁刑とされているのと比べますと、法定刑の上限に差が設けられていることが分かります。使用については覚醒剤取締法41条の3第1項1号が10年以下の拘禁刑、営利目的の輸入等については同法41条2項が無期若しくは3年以上の拘禁刑と定めており、態様によって重さが段階的に変わります。

覚醒剤原料の所持・譲渡等については、同法41条の4により7年以下の拘禁刑です。

大麻の事件と比べて、どこがどう厳しいのでしょうか

統計を並べますと、その差は明瞭でございます。令和7年版犯罪白書(原資料は検察統計年報)によりますと、令和6年の覚醒剤取締法違反は起訴率74.2%、起訴猶予率8.5%でございました。これに対し、大麻取締法違反は起訴率44.1%、起訴猶予率35.5%でございます。道路交通法違反を除く特別法犯全体の起訴猶予率は45.5%とされております。

科刑の場面でも同様の傾向が見られます。同白書(原資料は司法統計年報)によりますと、令和6年の地方裁判所における有期刑の言渡しは、覚醒剤取締法違反の総数4,770人のうち全部執行猶予が1,717人(36.0%)、実刑が3,053人(64.0%)でございました。大麻取締法違反では総数2,326人のうち全部執行猶予が1,959人(84.2%)を占めておりますので、対照的な姿となっております。

背景の一端は、警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」にも表れております。覚醒剤事犯の再犯者率は64.6%、大麻事犯の初犯者率は72.6%とされ、覚醒剤事犯では同種の前科を有する方の割合が高いことが、判断に影響していると考えられます。

  • 起訴猶予率(令和6年):覚醒剤8.5%/大麻35.5%
  • 全部執行猶予率(令和6年・地裁・有期刑):覚醒剤36.0%/大麻84.2%
  • 再犯・初犯(令和7年):覚醒剤事犯の再犯者率64.6%/大麻事犯の初犯者率72.6%

有罪判決を受けたときに在留はどうなるか

入管法24条4号チは、覚醒剤取締法を含む列挙法令に違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由に掲げております。刑種の限定も、刑期の下限も、執行猶予の場合を除くという但書もございません。実刑であれ全部執行猶予であれ、罰金であれ、有罪の判決である以上は同じ結論に至ります。

覚醒剤の事案では、実刑となる割合が高いことから、さらに二段構えの問題が生じます。第一に、入管法50条1項但書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者(全部執行猶予の言渡しを受けた者、及び執行が猶予されなかった部分の期間が1年以下の一部猶予の者を除く)について、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件を課しております。1年を超えるかどうかが、在留特別許可の判断枠組みそのものを分けることになります。

第二に、退去強制の後には、入管法5条1項5号による上陸拒否事由が残ります。麻薬・大麻・あへん・覚醒剤・向精神薬の取締りに関する法令に違反して刑に処せられたことのある者を掲げる規定であり、同項9号の退去強制歴に基づく上陸拒否のような1年・5年・10年といった年限が置かれておりません。年数の経過だけでは解消されない事由であるという点を、あらかじめご理解いただく必要がございます。

起訴猶予率8.5%という数字を、弁護活動としてどう受け止めるか

この数字は、覚醒剤事案において不起訴を目指すことが非現実的である、という意味には受け取っておりません。むしろ、争点の有無を早期に、かつ精密に見極める必要が高いということを示していると考えております。

外国人の依頼者について申し上げれば、公判で執行猶予を獲得することは、在留という観点からは目標設定を誤っております。24条4号チの構造上、有罪判決は刑種を問わず退去強制事由を生じさせるからです。在留を完全に守り得る出口は、起訴前段階における不起訴処分の獲得しかございません。可能性が低いからといって最初からそこを放棄すれば、残された唯一の出口を自ら閉ざすことになります。

実際に検討すべき事項は多岐にわたります。所持の事実そのものを争う余地はないか。所持していた物についての認識はどうであったか。職務質問や所持品検査、捜索差押えといった証拠収集の手続に問題はなかったか。譲受けの事案であれば、相手方の供述はどこまで裏付けられているか。これらの検討を尽くしたうえで、なお起訴が避けられない見通しであれば、次の段階として営利目的の否定、そして1年を超えない範囲への刑期の抑制へと、目標を階層的に切り替えてまいります。

この設計は、在留特別許可を見据えた準備と表裏一体でございます。刑事手続の中で集めた資料は、そのまま入管手続における主張の土台となります。

在留特別許可に向けて積み上げるもの

入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものと定めております。

覚醒剤事案では、「素行」および「退去強制の理由となった事実」が最大の障害となります。ここから目を逸らした主張は説得力を持ちません。依存が疑われる事案であれば医療機関への受診と治療の継続、家族による監督体制の具体化、就労先の受入れ意思、居住環境の変更など、再乱用を防ぐための現実的な仕組みを、書面と資料の形で示していく必要がございます。

また、退去強制令書の発付後は在留特別許可の申請ができない旨が同条3項に定められております。手続の順序と時間の管理も重要でございます。

解決事例と弁護体制

覚醒剤事案および在留に関わる事案について、当事務所の実績のうち公表可能な範囲を三件挙げます。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで、全工程を直接担当いたします。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等については、提携の行政書士とともにワンストップで対応しております。

  • 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得いたしました。
  • 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済する裁判において、不法就労助長罪の認定事件としては前例のない在留特別許可を獲得した実績がございます。
  • 特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。

覚醒剤の事件は、統計の上では厳しい数字が並ぶ類型でございます。しかし、統計は個々の事案の結論を決めるものではありません。決めるのは、その事案に固有の事実と、それをどこまで丁寧に掘り起こせたかでございます。刑事手続の見通しと、在留を守るための設計とを、同時に立てて進めていくことが何より大切です。ご家族だけで抱え込まれる前に、状況を整理する機会を持たれることをお勧めいたします。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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