大麻を栽培していた場合|大麻草の栽培の規制に関する法律24条と在留資格
2026/08/13
自宅の一室やベランダで大麻草を育てていたところ、ある日突然の家宅捜索を受けた。そうした形で始まる事件は、外国人の方にとって、刑事責任だけでなく生活の基盤そのものを揺るがす出来事となります。栽培は、所持や使用とは別の条文で、より重い刑が定められている行為でございます。本稿では、栽培の罪の枠組みと、令和6年12月12日に行われた法律の改称、そして退去強制事由との関係、さらには在留特別許可を目指す場面で何を積み上げるべきかまでを、順にご説明いたします。
本記事の要点
- 大麻草の栽培は、大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項により1年以上10年以下の拘禁刑と定められています。
- 営利の目的がある場合は1年以上の有期拘禁刑となり、これに500万円以下の罰金が科されます。
- この法律は入管法24条4号チが列挙する法令の一つであり、有罪判決を受ければ退去強制事由となります。
- 警察庁の令和7年の統計では、大麻事犯のうち栽培による検挙は126人とされています。
- 在留特別許可の場面では、入管庁が公表してきた過去の許可事例を分析し、平等原則の観点から主張を組み立てる余地があります。
栽培はどの法律の何条で処罰されるのでしょうか
大麻草の栽培については、大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項が1年以上10年以下の拘禁刑を定めております。営利の目的がある場合は、1年以上の有期拘禁刑に加えて500万円以下の罰金が科されます。
所持や使用と比べて刑が重く、しかも下限が1年以上とされている点が特徴です。参考までに、大麻の単純な所持・譲渡し・譲受けは麻薬及び向精神薬取締法66条1項により7年以下の拘禁刑、使用(施用)・受施用は同法66条の2第1項により7年以下の拘禁刑とされております。栽培は、これらとは別の法律に置かれた、独立した重い類型でございます。
なお、令和6年12月12日以降、大麻は麻薬及び向精神薬取締法上の「麻薬」として扱われることとなり、栽培の規制を定める法律の名称も現在のものへと改められました。条文を検索される際には、現行の名称でご確認いただく必要がございます。
数株を自分のために育てていた場合でも栽培罪になるのでしょうか
24条1項は、栽培した株数の多寡や、自己使用の目的か否かによって、成立する犯罪そのものを区分してはおりません。営利の目的がある場合に刑が加重される構造は置かれておりますが、営利目的がないからといって条文の適用が外れるわけではございません。
もっとも、株数、栽培設備の規模、収穫の有無、譲渡先の存在といった事情は、量刑を左右する要素として実務上大きな意味を持ちます。照明設備や送風機、養液といった器材が一式そろっているか、複数の生育段階の株が管理されているかといった点は、営利目的の推認をめぐる議論に接続することもございます。
また、収穫された部位を保管していれば、栽培とは別に所持の罪が問題となる場面もございます。事案の全体像を、行為ごとに切り分けて把握しておくことが出発点となります。
- 栽培(大麻草の栽培の規制に関する法律24条1項)=1年以上10年以下の拘禁刑
- 営利目的の栽培(同条)=1年以上の有期拘禁刑及び500万円以下の罰金
- 収穫物の所持(麻向法66条1項)=7年以下の拘禁刑
- 使用・受施用(麻向法66条の2第1項)=7年以下の拘禁刑
この類型の広がりについて
警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」によりますと、令和7年の大麻事犯の違反態様別検挙人員は、所持5,354人、施用700人、栽培126人、譲渡180人、密輸入192人とされております。栽培は数のうえでは少数ですが、法定刑の重さと、押収される物量の多さから、当初から実刑を視野に入れた対応が必要となる類型でございます。
同資料によりますと、令和7年の大麻事犯の検挙人員は6,832人で過去最多となっており、初犯者率は72.6%とされています。大麻事犯全体としては、初めて手続に関わる方が多数を占めていることが分かります。
これらの数値は全体の傾向を示すものであり、個別の事案の結論を予測するものではございません。
在留資格への影響はどうなるか
入管法24条4号チは、昭和26年11月1日以後に、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、又は刑法第2編第14章に違反して有罪の判決を受けた者を、退去強制事由として掲げております。栽培の罪を定める法律は、この列挙に明記されております。
同号には、刑種の限定も刑期の下限も、執行猶予の場合を除くという但書もございません。有罪の判決を受けたという事実のみで要件が満たされます。1年を超える拘禁刑を対象とする24条4号リには全部執行猶予を除く旨の但書がございますが、同号は「ニからチまでに掲げる者のほか」と規定しており、薬物事犯はそもそもその守備範囲の外にございます。
また、この規定は在留資格の種類を問いません。技術・人文知識・国際業務や留学といった別表第一の在留資格はもとより、永住者、日本人の配偶者等、定住者といった別表第二の在留資格であっても、同じ土俵に立たされることになります。長く日本で生活してこられた方ほど、この帰結は重く受け止められるところでございます。
在留特別許可を目指す場面で何を積み上げるか
退去強制事由に該当した場合でも、在留特別許可(入管法50条)の枠組みが残されております。栽培の事案では実刑となる可能性が相対的に高く、1年を超える実刑となれば同条1項但書の加重要件が作動いたしますので、刑期を抑えることには制度上の意味がございます。
そのうえで、入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、在留期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性、内外の諸情勢その他の事情を、考慮すべき要素として法定しております。薬物事案では「素行」と「退去強制の理由となった事実」が最大の障害となりますので、家族による監督の実質、就労の継続可能性、再乱用防止のための具体的な体制などを、書面と資料で立体的に示していく作業が要となります。
ここで、当事務所が重視しているのが、出入国在留管理庁が平成16年以降に公表してきた在留特別許可の事例でございます。これらは、行政庁自身が許可相当と判断した先例の集積にほかなりません。同種の事情を有する事案について許可の実績があるにもかかわらず、本件についてのみ異なる取扱いがなされるのであれば、その合理性が問われることになります。憲法14条1項の平等原則の観点から主張を構造化する余地がここにございます。50条5項が考慮要素を法定したことにより、比較の軸が明確になった点も見逃せません。
もっとも、公表事例との対比によって許可が得られると申し上げることはできません。判断はあくまで個別の事情によります。実績が存在すること、そしてそれを踏まえた主張が可能であること、この二点を正確にお伝えするにとどめます。
解決事例とご相談の体制
在留特別許可および起訴前の弁護活動に関する当事務所の実績のうち、公表可能な範囲を二件ご紹介いたします。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。栽培事案では、押収された設備や記録の分析、生活状況の立証、入管手続を見据えた資料の保全といった作業が並行して必要となるため、担当が分散しない体制が意味を持ちます。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しております。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等については、提携の行政書士とともに対応しております。
- 観光目的で来日した相談者が在留資格を喪失し不法滞在で逮捕・起訴された事案において、婚姻・認知が未了で一旦不受理とされたところ、憲法的観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下で有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、一度の申請で在留特別許可を獲得いたしました。
- 特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応と主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得いたしました。
栽培の事案は、押収された物の量や設備の状況から、当初から重い見通しが語られがちな類型でございます。しかし、そこで語られる見通しは、量刑という一つの物差しによるものにすぎません。外国人の依頼者にとっては、刑事手続と並行して、在留をどう守るかという別の設計図が必要になります。二つの手続を切り離さずに考え始めることが、選択肢を残すことにつながります。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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