舟渡国際法律事務所

国際郵便で大麻が届いた|麻向法65条の輸入罪と受取人の故意、そして在留

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国際郵便で大麻が届いた|麻向法65条の輸入罪と受取人の故意、そして在留

国際郵便で大麻が届いた|麻向法65条の輸入罪と受取人の故意、そして在留

2026/08/13

海外から届いた荷物を受け取った直後に、複数の捜査官に取り囲まれた。国際宅配便のサインをした瞬間に令状を示された。そうした形で始まる事件が、外国人の方の相談として少なからず寄せられます。ご本人にとっては友人からの荷物を受け取っただけのつもりであっても、法律上は麻薬の輸入という重い罪の枠組みで捜査が進むことがございます。本稿では、輸入罪の法定刑、いわゆるコントロールド・デリバリーという捜査手法の輪郭、そして受取人の認識がどのように問題となるのかを、在留資格への影響とあわせて整理いたします。

本記事の要点

  • 大麻の輸入・輸出・製造は麻薬及び向精神薬取締法65条1項1号により1年以上10年以下の拘禁刑と定められています。
  • 営利の目的がある場合は1年以上の有期拘禁刑となり、情状により同刑及び500万円以下の罰金が科されます。
  • 警察庁の令和7年の統計では、大麻事犯の密輸入による検挙は192人とされています。
  • 受取人が内容物を認識していたかどうか、すなわち故意の有無が、事案の分かれ目になることがあります。
  • 有罪判決を受ければ入管法24条4号チにより退去強制事由となるため、起訴前段階での対応が要となります。

郵便物で薬物が届いた場合、どの罪に問われるのでしょうか

国外から国内へ薬物が持ち込まれる事案は、所持ではなく輸入の罪として構成されることが多くございます。大麻については、輸入・輸出・製造が麻薬及び向精神薬取締法65条1項1号により1年以上10年以下の拘禁刑と定められております。営利の目的がある場合は1年以上の有期拘禁刑となり、情状により同刑及び500万円以下の罰金が併科されます。

大麻以外の麻薬、たとえばコカインやMDMAなどの輸入・輸出・製造についても、同法65条1項により1年以上10年以下の拘禁刑とされ、営利目的の場合は1年以上の有期拘禁刑及び500万円以下の罰金が定められております。いずれも下限が1年以上とされている点が、単純所持の類型と大きく異なります。

覚醒剤の場合はさらに重く、輸入・輸出・製造が覚醒剤取締法41条1項により1年以上の有期拘禁刑、営利目的の類型は同条2項により無期若しくは3年以上の拘禁刑とされております。

受け取った瞬間に検挙されるのはなぜでしょうか

国際郵便物や国際宅配便に薬物が含まれていることが税関の検査等で判明した場合、その場で押収して終わりとするのではなく、荷物をそのまま流通させ、受け取る人物を特定したうえで検挙するという捜査手法が用いられることがございます。いわゆるコントロールド・デリバリーです。

この手法が採られた事案では、受取の場面が捜査機関によって観察され、記録されていることになります。したがって、荷物を受け取ったという外形的な事実そのものは、争いにくい形で証拠化されているのが通常です。

そこで実際の争点は、受け取ったという行為の有無ではなく、その荷物の中身について何をどこまで認識していたのか、という点に移ってまいります。捜査機関が受取直後の言動を細かく記録し、あるいは荷物の開披の様子を確認しようとするのは、この認識の有無を裏付けるためでもあります。

「頼まれて受け取っただけ」という説明は通用するのでしょうか

結論から申し上げますと、そのような主張が直ちに退けられるわけではございません。犯罪の成立には故意が必要であり、中身が薬物であることの認識がなければ、輸入罪の故意を欠くことになるからです。実際、依頼を受けて自宅の住所を貸したにすぎない方、留学先の寮で同居人宛ての荷物を受け取った方など、さまざまな経緯がございます。

他方で、認識がなかったという説明が受け入れられるためには、その説明が事案の全体像と整合している必要がございます。依頼者との関係、依頼の経緯、報酬の有無とその金額の相当性、荷物の送り主や品名表示、受取後にどうするよう指示されていたか。こうした事情の一つひとつが検討の対象となります。いわゆる未必の故意、すなわち中身が違法な物かもしれないと思いながらあえて受け取ったと評価されるかどうかも、しばしば問題となります。

したがって、取調べにおける説明は、思い出したことを断片的に述べるのではなく、時系列に沿って一貫した形で示していく必要がございます。通訳を介したやり取りでは、認識に関する微妙な言い回しが、日本語の調書の上では強い意味を帯びてしまうこともございますので、供述の一語一語には慎重であるべきです。

  • 誰から、どのような経緯で依頼を受けたのか
  • 報酬の約束があったか、あった場合にその額は労務に見合うものか
  • 荷物の送り主・品名表示・重量について何を聞いていたか
  • 受取後の取扱いについてどのような指示を受けていたか
  • 同種の受取を過去に繰り返していた事情があるか

この類型はどれくらい起きているのか

警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」によりますと、令和7年の大麻事犯の違反態様別検挙人員は、所持5,354人、施用700人、栽培126人、譲渡180人、密輸入192人とされております。密輸入は件数としては多数派ではございませんが、一件あたりの法定刑が重く、身柄拘束も長期化しやすい類型でございます。

これらは全体の傾向を示す数値であり、個別の事案の見通しを導くものではございません。もっとも、この類型が特別に珍しいものではないこと、そして捜査機関が一定の手法を確立していることは、数字からもうかがえます。

在留資格にはどう影響するか

有罪判決を受けた場合、入管法24条4号チにより退去強制事由に該当いたします。同号は、麻薬及び向精神薬取締法をはじめとする列挙法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げるのみで、刑の種類も重さも問うておりません。全部執行猶予付きの判決であっても同様でございます。

輸入罪は下限が1年以上と定められているため、実刑となった場合には1年を超える拘禁刑となる可能性が単純所持の類型より高くなります。入管法50条1項但書は、無期若しくは1年を超える拘禁刑に処せられた者について、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る、という加重要件を課しております。刑期は、量刑の問題であると同時に、在留特別許可の判断枠組みを左右する問題でもございます。

さらに、退去強制の後には入管法5条1項5号による上陸拒否事由が残ります。同項9号の退去強制歴に基づく上陸拒否には1年・5年・10年という期間の定めがございますが、5号にはそのような年限がございません。

目指すべき出口と、当事務所の体制

外国人の依頼者にとって、在留を完全に守り得る出口は、起訴前段階における不起訴処分の獲得でございます。24条4号チが「有罪の判決」を要件とする以上、公判で執行猶予を得ても退去強制事由の成立そのものは避けられません。この点を踏まえずに弁護方針が立てられますと、刑事事件としては有利な結論を得ながら在留を失う、という結果が生じ得ます。

受取事案では、故意の存否が真正面から問題となるため、嫌疑不十分による不起訴という出口が現実に視野に入る場面がございます。そのためには、依頼の経緯を裏付ける通信記録、渡航歴、就労や生活の状況といった資料を、勾留期間という限られた時間の中で収集し、検察官の処分判断に届く形で提示する必要がございます。

松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで、全工程を直接担当いたします。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格については、提携の行政書士とともにワンストップで対応しております。

参考となる解決事例

受取行為や主観面が問題となった事案、および在留に関わる事案について、当事務所の実績のうち公表可能な範囲を三件挙げます。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

  • 特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案において、主観的事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得いたしました。渡された物の性質をどこまで認識していたかが問われる点で、受取事案と通じるところがございます。
  • 冤罪により不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済する裁判では、退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を問い直す訴訟を係属中であり、同事件では不法就労助長罪の認定事件において前例のない在留特別許可を獲得した実績がございます。
  • 国際的な刑事事件、裁判員裁判対象事件、世界的に報道された重大事件への対応実績がございます。

荷物を受け取ったという一点だけを切り出せば、外形は誰が見ても同じに映ります。しかし、そこに至る経緯、依頼の内容、報酬の有無、受け取る側が置かれていた状況は、事案ごとにまったく異なります。その違いを丁寧に言葉にして、記録に残していく作業が、刑事手続でも、その後の入管手続でも意味を持ちます。すでに取調べが始まっている段階であっても、できることは残されております。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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