大麻使用罪(麻向法66条の2)とは|令和6年12月施行の新設罪と外国人の在留
2026/08/13
これまで、大麻については所持や譲渡しが処罰の対象とされ、使用それ自体を直接に処罰する規定は置かれておりませんでした。この状況は令和6年12月12日に変わりました。麻薬及び向精神薬取締法66条の2により、大麻を含む麻薬の施用・受施用が処罰の対象となったためです。手元に何も残っていない、尿検査だけで話が進んでいる、そうした状況で不安を抱えておられる外国人の方とご家族に向けて、新しい規定の輪郭と、在留資格との関係を、できるだけ平易に整理してまいります。
本記事の要点
- 麻薬及び向精神薬取締法66条の2第1項により、大麻を含む麻薬の使用(施用)・受施用は7年以下の拘禁刑で処罰されます。令和6年12月12日施行の新設規定です。
- 施行日より前の使用行為が、この規定によって遡って処罰されることはありません。
- 大麻の使用による有罪判決も、入管法24条4号チの「有罪の判決」に当たり、退去強制事由となります。
- 警察庁の令和7年の統計では、大麻事犯のうち施用による検挙は700人とされています。
- 新しい罪であるため科刑の傾向はまだ見通しにくく、起訴前段階での対応が一層重要となります。
大麻の使用は、いつから、どの条文で処罰されるようになったのでしょうか
大麻を含む麻薬の使用(施用)および受施用は、麻薬及び向精神薬取締法66条の2第1項により、7年以下の拘禁刑で処罰されます。令和6年12月12日に施行された新しい規定です。営利の目的があった場合は1年以上10年以下の拘禁刑に加え、300万円以下の罰金が定められております。
重要な前提として、法律の施行日より前になされた行為が、新たに設けられた処罰規定によって遡って処罰されることはございません。捜査機関から使用の時期について繰り返し質問を受けている場合、その質問が何を確かめようとしているのかを理解しておくことには意味がございます。使用時期は、この規定が適用され得るかどうかを左右する事項でもあるためです。
なお、所持については従前どおり同法66条1項により7年以下の拘禁刑が定められており、使用と所持は別個の犯罪として扱われます。両方が問題となる事案も、使用のみが問題となる事案もございます。
所持していなくても立件されることがあるのはなぜでしょうか
使用の事案では、身体から採取された尿の鑑定結果が、事実上ほとんど唯一の客観的な証拠となる構造がございます。大麻そのものが押収されていなくとも、鑑定の結果を根拠として手続が進むことがあるのは、このためです。
もっとも、鑑定結果が存在することと、犯罪が成立することとは、法律上は同じではございません。採尿手続が任意になされたと言えるのか、強制採尿によった場合に令状の要件が満たされていたのか、採取された資料と鑑定に付された資料の同一性が保管の連鎖として担保されているのか、といった点は、いずれも本来検討されるべき事柄です。
また、使用の時期と場所をどこまで特定できるのかという問題も残ります。ここでは一般論を申し上げるにとどめますが、個別の事案でこれらの点に争う余地があるかどうかは、記録に即して具体的に検討する必要がございます。
使用罪の有罪判決は在留にどう響くか
結論として、大麻の使用による有罪判決も、入管法24条4号チに定める退去強制事由に該当いたします。同号は、麻薬及び向精神薬取締法をはじめとする列挙された法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げるものであり、犯罪の態様が所持であるか使用であるかを区別しておりません。
そして、この号には刑種の限定も、執行猶予の場合を除くという但書もございません。使用の事実だけで、押収された物もなく、量刑としては軽く扱われたとしても、有罪の判決である以上、退去強制事由としては同じ土俵に立つことになります。
在留資格の種類による違いも生じません。24条4号チは別表第一の在留資格にも、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者といった別表第二の在留資格にも、等しく及ぶ規定でございます。
統計がまだ乏しいという事情
警察庁の「令和7年における組織犯罪の情勢【確定値版】」によりますと、令和7年の大麻事犯の違反態様別の検挙人員は、所持5,354人、施用700人、栽培126人、譲渡180人、密輸入192人とされております。使用(施用)による検挙が現実に相当数積み上がっていることが分かります。
他方で、大麻の使用罪について、起訴率や科刑の傾向を示す統計は、まだ十分に蓄積されておりません。したがいまして、「使用のみであればこの程度の処分になる」といった見通しを、公表資料から責任をもって申し上げることはできない段階にございます。
見通しが立ちにくいということは、裏を返せば、初期段階で積み上げる事情が結論に影響し得る余地が大きいということでもあります。手をこまねいて推移を待つ理由にはなりません。
三つの防御線という考え方
当事務所は、外国人の薬物事件について、防御線を三段階に分けて設計しております。使用罪のように立証構造が単純に見える事案でも、この設計は変わりません。
第一の防御線は、刑事事件における不起訴処分の獲得です。構成要件該当性、故意、証拠収集手続の適法性を検討し、起訴前の段階で決着を図ります。24条4号チが「有罪の判決」を要件とする以上、ここで止められれば在留への影響を根本から避けられます。
第二の防御線は、退去強制手続における退去強制事由該当性そのものを争う場面です。第三の防御線は、在留特別許可であり、入管法50条5項が法定する考慮要素を、資料をもって一つずつ構築してまいります。薬物事案では「素行」と「退去強制の理由となった事実」が最大の障害となりますので、治療や再乱用防止の体制、家族による監督の実質を、早い段階から形にしておく必要がございます。
この三段階を意識するかどうかで、刑事手続の中で残しておくべき資料が変わってまいります。刑事弁護と入管対応を切り離さない、というのが当事務所の基本的な姿勢です。
- 第一の防御:起訴前の不起訴処分の獲得
- 第二の防御:退去強制手続における退去強制事由該当性の争い
- 第三の防御:在留特別許可(50条5項の考慮要素の構築)
解決事例と、ご相談をお受けする体制
当事務所がこれまでに取り扱った事案のうち、起訴前の弁護活動が結論を分けた例として、次の二件をご紹介いたします。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
松村大介弁護士は、接見の初動から公判の結審まで、全工程を直接担当いたします。中国語については、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更等については、提携の行政書士とともにワンストップで対応しております。
- 特殊詐欺の受け子とされ複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べ対応、不当な取調べへの抗議、主張立証を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得いたしました。
- 覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、徹底的な証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得いたしました。裁判員裁判対象事件にも対応しております。
大麻の使用罪は、施行からまだ日が浅く、実務の蓄積も途上にございます。だからこそ、条文の適用範囲、鑑定をめぐる手続、そして在留への波及を、それぞれ丁寧に見ていく作業が意味を持ちます。使用だけだから軽いはずだ、というご理解のまま時間が過ぎてしまうことのないよう、早い段階で状況を整理されることをお勧めいたします。本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
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