未成年の子が薬物事件を起こしたら|家裁送致・保護処分と在留への影響
2026/08/13
お子さんが大麻の所持で補導された、警察から連絡が来た。そう伺うだけで頭が真っ白になってしまわれるのは当然のことでございます。まして日本での在留資格をご家族で維持しておられる場合、不安は一層深いものとなりましょう。少年の事件は成人の刑事事件とは進み方が異なり、退去強制事由との関係も同じではございません。ご家族に何ができるのかも含めて整理いたします。本稿では、少年事件の流れと、どのような場合に在留の問題が生じ得るのかを順にご説明いたします。
本記事の要点
- 少年の事件は原則として家庭裁判所に送致され、保護処分は有罪の判決とは異なる性質のものでございます。
- 入管法24条4号チは有罪の判決を受けた者を対象としており、保護処分はこれに当たらないと考えられます。
- 他方、検察官送致を経て公判となり有罪の判決を受けた場合には、年齢を問わず4号チの問題が生じます。
- 入管法24条4号トは、少年について長期3年を超える拘禁刑に処せられた場合を別に定めております。
- 大麻事犯の20歳未満の初犯者率は85.4パーセントで、初めての摘発が大半を占めております。
保護処分を受けた場合、退去強制の対象になるのですか
結論から申し上げますと、保護処分は有罪の判決ではございませんので、入管法24条4号チが定める要件には当たらないと考えられます。同号は、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、刑法第2編第14章のいずれかに違反して有罪の判決を受けた者を退去強制事由としております。対象とされているのは、刑事裁判における有罪の結論でございます。
ただし、これは制度の入口に関する説明であって、何の影響もないという意味ではございません。事件の内容や経過が、将来の在留期間の更新の審査で素行に関わる事情として見られる可能性は残ります。
少年の事件は、どのように進むのでしょうか
捜査機関が事件を扱った後、少年の事件は原則として家庭裁判所に送致されます。調査官による調査が行われ、必要に応じて観護措置がとられ、審判を経て不処分・保護観察・少年院送致といった判断がなされます。成人の刑事裁判が刑罰を科す手続であるのに対し、少年の手続は健全な育成を目的として組み立てられている点に大きな違いがございます。
もっとも、事案の内容や年齢によっては、家庭裁判所が事件を検察官に送致する場合がございます。いわゆる逆送と呼ばれる扱いです。この場合には、通常の刑事裁判が行われ、有罪の判決に至れば、年齢にかかわらず入管法24条4号チの問題が正面から生じることになります。少年だから在留への影響はないと一律に考えるのは、正確ではございません。
入管法24条4号トという規定について
入管法は、少年について別に規定を置いております。同法24条4号トは、少年法上の少年で、昭和26年11月1日以後に長期3年を超える拘禁刑に処せられた者を、退去強制事由としております。刑事裁判に付され、一定の重さの刑が言い渡された場合を捉えた規定でございます。
薬物事犯については、この4号トとは別に4号チが働きます。4号チには刑種や刑期の限定がなく、有罪の判決を受けた事実そのものが要件ですから、逆送を経て有罪判決に至れば、刑の重さにかかわらず退去強制事由が生じ得ます。家庭裁判所の手続の中で事件が完結するかどうかが、在留の観点からも大きな分岐点になるということでございます。
若い世代の薬物事犯は、いまどのような状況にあるのか
警察庁の令和7年における組織犯罪の情勢によれば、大麻事犯の初犯者率は72.6パーセントであり、20歳未満では85.4パーセントに達しております。令和7年の薬物事犯の検挙人員は総数14,574人で、そのうち大麻は6,832人と過去最多となりました。
この数字が示しているのは、若い世代の大麻事犯の多くが初めての摘発であるという実情です。周囲に勧められ、危険性の認識が乏しいまま手を出してしまった経過も珍しくありません。初めてであることが直ちに軽い扱いにつながるわけではございませんが、事情を丁寧に伝えるべき素地はございます。お子さんを責めることに時間を費やすよりも、何が起きたのかを正確に把握し、これからの環境を整えることに力を注いでいただきたいと思います。
留学生や家族滞在のお子さんの場合、何に注意すべきですか
在留期間の定めのある在留資格の場合、退去強制事由に該当しなくても、更新や変更が認められなければ在留の根拠を失います。更新の審査では素行が考慮されるものとされており、事件の内容や、その後の生活状況が見られることになります。
加えて、学校を離れることになれば、在留資格の前提となる活動そのものが揺らぎます。学校との関係をどう保つか、復学や転学の可能性があるかは、早めに確認したい事項です。ご家族としては、次の点を整理しておかれると手続が進めやすくなります。
- お子さんの在留資格の種類と在留期限を確認する
- 学校への説明の要否と、その内容を弁護人と相談したうえで決める
- 同居の家族構成、扶養の実態、生活の基盤を示す資料を整理する
- 医療機関への相談や、再乱用防止に向けた家庭内の体制を検討する
- 本人の交友関係や生活環境を、責めるのではなく事実として把握する
ご家族の姿勢が、手続を通じて意味を持ちます
少年の手続では、家庭の監督体制や生活環境が正面から検討の対象となります。誰がどのように見守るのか、生活のリズムをどう立て直すのかを具体的に示せることが、そのまま結論に関わってまいります。
そして、この作業は在留の場面にも接続いたします。仮に将来、在留特別許可を求める局面に至った場合、入管法50条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、在留期間、人道上の配慮の必要性などを考慮するものと定めております。加えて、出入国在留管理庁が平成16年以降公表してきた許可・不許可の事例は行政自身が許可相当と判断した先例の集積であり、同種の事情に許可の実績があるにもかかわらず異なる取扱いをすることは、憲法14条1項の平等原則との関係で問題があるという主張の基礎となり得ます。
当事務所の体制と、これまでにお受けした事案
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が初動から手続の終わりまで直接担当いたします。お子さん本人との面会とご家族との打合せを同じ弁護士が担うことで、家庭の状況を踏まえた主張を組み立てられると考えているためです。中国語については外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、ご本人のために動く立場の通訳をご利用いただけます。中国語以外の言語については、事案に応じて通訳人を手配いたします。手続の終了後の在留資格の更新等は、提携の行政書士とともに対応しております。
これまでには、特殊詐欺のいわゆる出し子とされた20代の女性について、主観的な事情を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事案がございます。また、在留資格を失って逮捕・起訴された相談者について、過去の許可事例の分析により一度の申請で在留特別許可を獲得した事案、国際刑事事件や裁判員裁判対象事件への対応実績もございます。
少年の手続は立ち直りを支えるために組み立てられており、家庭の取組みが正面から評価される仕組みになっております。環境を一つずつ整えていけば、進む先は決して閉ざされておりません。早い段階で弁護人とともに方針を定めれば、道は開けてまいります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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