逮捕から勾留が決まるまでの72時間に何が起きるのか|外国人薬物事件の初動
2026/08/13
ご家族が薬物の疑いで警察に連れて行かれ、連絡が取れないまま時間だけが過ぎている。そうした状況でこのページをご覧の方に向けて書いております。逮捕直後は外から動きが見えませんが、実際の手続は速い速度で進み、勾留の可否が決まるまでの時間はおよそ72時間しかありません。この間の供述と資料が、その後の処分、そして在留資格の行方にまで影響してまいります。何が起きているのかを知るだけでも、判断は落ち着いてまいります。
本記事の要点
- 逮捕後は、警察から検察官への送致、検察官による勾留請求、裁判官の勾留質問という順で手続が進み、その全体がおよそ72時間の枠内に収まります。
- この間に作成される弁解録取書や供述調書が、その後の処分判断の土台になります。
- 外国人の事件では、通訳の質と、領事機関への通報に関する扱いを初期に確認しておくことが重要です。
- 薬物事件では有罪判決そのものが入管法24条4号チの退去強制事由となるため、初動から在留を見据えた設計が必要です。
- 当番弁護士は一度限りの派遣であり、継続的な弁護活動は改めて弁護人を選任することで始まります。
最初の72時間は、どのように進むのですか
手続の骨格から申し上げます。逮捕された方は警察署の留置施設に身柄を置かれ、警察は限られた時間内に事件と身柄を検察官へ送致いたします。送致を受けた検察官は、さらに限られた時間内に、身柄の拘束を続ける必要があると判断すれば裁判官に勾留を請求します。請求を受けた裁判官は本人と面談し、勾留質問を経て可否を判断いたします。ここまでが、逮捕からおよそ72時間の流れでございます。
勾留が認められると、原則として10日間、延長が認められればさらに最大10日間、身柄の拘束が続きます。検察官は、この期間の満了までに起訴するか否かを決めることになります。
なぜ、この3日間が事件全体を規定するのでしょうか
初期に作られた供述が、後の手続を通じて繰り返し参照されるからでございます。逮捕直後には弁解録取が行われ、その後も取調べが続きます。この段階のご本人は、日本の手続を十分にご存じないまま、不安と疲労の中で質問に答えることになります。そこで述べた内容が書面に固定され、後になって異なる説明をすると、なぜ最初は違うことを言ったのかと問われる。この構造が、初期対応の重みを生んでおります。
薬物事件ではとりわけ、物の認識をどう説明したか、誰から受け取ったと述べたか、いつどこで使用したと述べたかといった点が、後の争点に直結いたします。事実に反する調書ができてしまってから修正するのは、容易ではございません。だからこそ、最初の接見をできるだけ早く行い、手続の説明と対応方針の確認をすることが大切になります。
当番弁護士と私選弁護人は、どう違うのですか
当番弁護士は、逮捕された方の求めに応じて弁護士会が一度だけ弁護士を派遣する制度です。その場で助言を受けられる点で有益ですが、原則として一回限りの接見であり、その後の継続的な活動は別途弁護人を選任することで始まります。私選弁護人を選任するか、資力の要件を満たす場合に国選弁護人の選任を求めるかという分岐が、ここで生じます。
外国人の薬物事件では、刑事処分の見通しと在留への影響を同時に検討できる体制が求められます。刑事手続だけを見て方針を立てると、有罪判決が在留に及ぼす効果を織り込み損ねることがあるためです。弁護人をお選びになる際は、入管法の帰結まで含めて説明が受けられるかどうかを、遠慮なくお尋ねいただければと存じます。
通訳と領事通報について、確認しておきたいこと
捜査機関の手続で用いられる通訳は、捜査機関が手配するものです。通訳人の能力や中立性が争われる場面は現実に存在し、微妙な言い回しが調書上は断定的な表現に置き換わってしまうこともございます。ご本人には、分からない言葉があればその場で確認してよいこと、内容を理解できないまま署名を求められる必要はないことを、早い段階でお伝えするようにしております。
また、領事関係に関するウィーン条約36条1項(b)は、身体を拘束された外国人が求めた場合に、その旨を本国の領事機関へ遅滞なく通報すること等を定めております。母国の領事機関に連絡してほしいかどうかは、ご本人の意思によって決まります。ご家族と連絡が取れない状況では、この通報が最初のつながりになることもございます。
ご家族に、いま整えていただきたいこと
できることは限られているようでいて、実は少なくありません。とりわけ身元引受けと生活基盤に関する資料は、勾留の可否や処分の判断に向けた材料になります。
反対に、控えていただきたいこともございます。事件関係者に連絡を取って話を合わせようとすること、SNS等に事件の内容を書き込むこと、勤務先や学校に不正確な説明をしてしまうこと。いずれも後に不利益な形で表れかねません。判断に迷われたときは、動く前に弁護人へご相談いただくのが安全です。
- どの警察署の留置施設にいるかを確認する
- 本人の在留カードや旅券の所在、在留資格と在留期限を確かめる
- 同居のご家族や勤務先・学校との関係を整理し、身元引受けの体制を検討する
- 差入れの可否と方法を留置施設に確認する
- 本人の持病や服薬の有無を弁護人に伝える
初動から在留を見据えるという発想
薬物事件では、初動の段階から在留の帰結を組み込んでおく必要がございます。入管法24条4号チは、麻薬及び向精神薬取締法、大麻草の栽培の規制に関する法律、あへん法、覚醒剤取締法、麻薬特例法、刑法第2編第14章のいずれかに違反して有罪の判決を受けた者を、退去強制事由と定めております。刑種にも刑期にも触れておらず、罰金でも執行猶予付きでも該当いたします。
したがって、公判で執行猶予を得ることを最終目標に据えた方針は、在留という観点からは目標設定を誤っていることになります。当事務所では、起訴前の不起訴処分の獲得を第一の防御線とし、退去強制手続における争いを第二、在留特別許可を第三の防御線として、最初から三段構えで設計いたします。最初の72時間に何を述べ、何を残したかが、この三本すべての土台になります。
当事務所の体制と、これまでにお受けした事案
舟渡国際法律事務所では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。中国語については外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続の全般でご利用いただけます。中国語以外の言語については、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続の終了後の在留資格の手続は、提携の行政書士とワンストップで対応しております。
特殊詐欺の受け子とされ複数回にわたり再逮捕された事案では、取調べへの対応と不当な取調べに対する抗議を重ね、全件について不起訴処分を得ております。また、在留資格を失い逮捕・起訴された相談者について、婚姻と認知の成立に向けて当局と交渉し、過去の許可事例の分析を通じて一度の申請で在留特別許可を獲得した事案、国際刑事事件や裁判員裁判対象事件への対応実績もございます。
連絡の取れない時間は長く感じられるものと存じます。けれども、この72時間は失われた時間ではなく、積み上げていくための起点でございます。手続の順序を知り、早い段階で方針を定めれば、道は開けてまいります。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------