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薬物事件では出国命令が使えません|入管法24条の3の除外構造を読む

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薬物事件では出国命令が使えません|入管法24条の3の除外構造を読む

薬物事件では出国命令が使えません|入管法24条の3の除外構造を読む

2026/08/13

「自分から入管に出頭すれば、収容されずに帰国できると聞きました」。そうしたご相談を、ご本人やご家族から受けることがございます。たしかに入管法には出国命令という制度があり、一定の場合には収容によらずに出国することが認められております。しかしこの制度は、どなたにでも開かれているわけではございません。とりわけ薬物に関する事件では、条文の要件そのものによって対象から外れる仕組みになっております。自主出頭をお考えの方が、誤った前提のまま行動されることのないよう、条文の構造を丁寧にご説明いたします。

本記事の要点

  • 出国命令の対象となるのは、入管法24条2号の4、4号ロ、6号から7号までのいずれかに該当する外国人に限られております。
  • 薬物事犯が該当する24条4号チは、そもそもこの対象事由の列挙に入っておりません。
  • さらに24条の3は、要件として「24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号又は9号のいずれにも該当しないこと」を課しております。4号チはこの除外に真正面から掛かります。
  • したがって、薬物事犯の方が自主的に出頭されても、出国命令ではなく退去強制の手続に進むことになります。
  • 自主出頭に意味がないわけではありませんが、その位置付けは在留特別許可を含む手続全体の中で判断する必要がございます。

出国命令とは、どのような制度なのでしょうか

出国命令は、入管法24条の3に定められた制度でございます。一定の要件を満たす外国人について、退去強制の手続を経ることなく、期限を定めて自ら日本を出国することを命ずるものでございます。制度の趣旨は、自主的に出頭した方について、身体の拘束を伴わない簡易な手続で出国を実現しようとする点にあると理解されております。

この制度が念頭に置いているのは、主として在留期間を経過して残留してしまった方、いわゆるオーバーステイの方でございます。長期間にわたり不法残留状態が続いた後、思い切って入管に出頭される。そうした方について、収容を回避しつつ手続を進める道を用意したものといえます。

自主的に出頭すれば、薬物事件でも出国命令になるのでしょうか

残念ながら、そうはなりません。理由は二重でございます。

第一に、出国命令の対象となる者の範囲そのものが限定されております。入管法24条の3は、24条2号の4、4号ロ、6号から7号までのいずれかに該当する外国人を対象と定めております。薬物事犯が該当する24条4号チは、この列挙に含まれておりません。入口の段階で、対象外ということになります。

第二に、仮に他の事由にも重ねて該当する場合であっても、24条の3が課している要件によって除かれます。同条は、①違反調査の開始前に自ら出頭したこと、又は開始後で認定の通知前に出国の意思を表明したこと、②24条3号から3号の5まで、4号ハからヨまで、8号又は9号のいずれにも該当しないこと、③本邦に入国した後に24条4号の2に列挙された罪により拘禁刑に処せられていないこと、④過去に退去強制又は出国命令により出国したことがないこと、⑤速やかに出国することが確実と見込まれること、のいずれにも該当することを要件としております。このうち②が、決定的でございます。4号チは「4号ハからヨまで」の範囲に入りますから、この要件を満たすことができません。

オーバーステイとの違いは、どこにあるのでしょうか

同じ入管法24条4号の中でも、ロとチとでは扱いがまったく異なります。ロは、在留期間の更新又は変更を受けずに在留期間を経過して本邦に残留する者、すなわち不法残留を定めたものであり、出国命令の対象事由として明示的に掲げられております。他方、チは薬物関係法令違反による有罪判決を定めたものであり、対象事由に掲げられていないばかりか、除外要件の側に位置しております。

この違いは、制度の趣旨を考えると理解しやすくなります。出国命令は、自主的な出頭を促し、簡易な手続によって出国を実現することを目的としております。そこで想定されているのは、在留の資格を失ったという形式的な違反状態でございます。これに対し、薬物に関する有罪判決を受けた方については、立法は簡易な出国という選択肢を用意しておりません。

それでは、自主的に出頭することに意味はないのでしょうか

意味がないと申し上げるつもりはございません。ただし、その意味は「出国命令を得るため」ではなく、「その後の手続をどう組み立てるか」という文脈の中で考える必要がございます。

薬物事犯の方が退去強制の手続に進む場合であっても、入管法50条は、退去強制対象者に該当するときであっても法務大臣が在留を特別に許可することができる場合を定めております。そして同条5項は、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなった経緯、本邦に在留している期間、その間の法的地位、退去強制の理由となった事実、人道上の配慮の必要性を考慮するものと定めております。出頭に至る経緯やその後の対応が、これらの要素の評価に関わってくることは十分に考えられます。

また、申請の手続についても押さえておく必要がございます。50条2項は、在留特別許可の申請を、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が行うものと定めており、同条3項は、退去強制令書が発付された後は申請をすることができないと定めております。出頭の時期と方法は、この手続の流れの中で位置付けて判断すべきものでございます。準備を整えないまま出頭された結果、主張の機会を十分に活かせないという事態は避けたいところでございます。

そもそも、この分岐点に立たないための備え

ここまでご説明してきた分岐は、いずれも入管法24条4号チに該当することを前提としております。そして4号チが要件としているのは「有罪の判決を受けた」ことでございます。有罪の判決が存在しなければ、この一連の構造は作動いたしません。

当事務所が不起訴目標主義と呼んでいる方針は、ここに理由がございます。刑事弁護の一般的な評価軸では、実刑を回避して執行猶予付き判決を得ることが成果とされます。しかし外国人の薬物事件では、その目標を達成しても、出国命令が使えず退去強制の手続に進むという結果までは避けられません。目標の置き場所そのものを、起訴前に移す必要があるのでございます。

起訴前の期間に行うべき作業は多岐にわたります。構成要件該当性の検討、故意の存否の精査、職務質問や所持品検査、採尿に至る手続の適法性の確認。そして、在留資格の喪失という帰結がご本人とご家族にもたらす影響を、検察官の処分裁量に届く形で整理して示すこと。入管法の構造を理解した弁護活動でなければ、この設計は組み立てられません。

当事務所の体制と、これまでのお取り扱い

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)では、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行っておりません。中国語につきましては、外国人事件に精通した専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を刑事手続の全般でご利用いただけます。中国語以外の言語につきましては、事案に応じて通訳人を手配いたします。刑事手続の終了後の在留資格の更新・変更等につきましては、提携の行政書士とともに対応しております。

在留に関わる場面では、在留資格を喪失して不法滞在で逮捕・起訴された相談者について、婚姻・認知が未了として一旦不受理とされた状況から当局と交渉して身分関係を成立させ、公的書類の乏しい条件のもとで有利な証拠を集め、過去の許可事例の分析を通じて一度の申請で在留特別許可を獲得したお取り扱いがございます。また公判では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例がございます。

出国命令という制度があること自体は事実でございますが、それが薬物事件に及ばないこともまた、条文にはっきりと書かれております。制度の名前だけを頼りに行動を決めてしまうと、取り返しのつかない順序で手続が進んでしまうことがございます。出頭を考えておられる方は、その前に一度、ご自身の状況がどの条文に乗るのかを確かめていただければと思います。なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、ご紹介した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119

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住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
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