自由権規約9条と恣意的拘禁の禁止
2026/08/12
入管収容の問題を考える際、日本国内の法律だけでなく、日本が締結している国際人権条約の視点も欠かせません。市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる自由権規約の9条1項は、恣意的な逮捕・抑留を禁止しています。本記事では、この規定が入管収容の議論にどのように関わっているのかをご説明します。
本記事の要点
- 自由権規約9条1項は、恣意的な逮捕または抑留を禁止しています。
- 退去強制手続中であることのみを理由とする無条件・無期限の収容は、恣意的拘禁に当たるとの批判があります。
- 自由権規約委員会・恣意的拘禁作業部会からの勧告に、なお応えていないとの指摘もあります。
- 令和5年改正後も、収容期間の上限や司法審査は導入されていません。
自由権規約9条とはどのような規定ですか
自由権規約9条1項は、何人も、恣意的に逮捕され、または抑留されないことを定めています。日本は自由権規約を批准しており、この規定を含む条約上の義務を負っています。入管収容は退去強制手続を進める上での行政的な措置ですが、身体の自由を奪うという実質を有する以上、恣意的拘禁の禁止という国際人権法上の原則がどこまで及ぶのかが問題となります。この論点は、憲法31条が定める適正手続の保障とも重なり合いながら、入管収容のあり方を考える上での重要な視座を提供しています。
「全件収容主義」はなぜ問題とされてきましたか
実務上、退去強制事由に該当する疑いのある外国人について原則として収容するという運用がなされてきたとされ、この運用に対しては、退去強制手続中であることのみを根拠とする無条件・無期限の収容は恣意的拘禁として自由権規約9条1項に反するのではないかとの議論が、有力に主張されてきました。収容の要否を個別に十分検討することなく、一律に収容するという運用のあり方が、国際人権法の観点から問題視されてきたのです。令和5年改正入管法により監理措置が導入され、収容によらない選択肢が制度化されたことは、こうした批判を踏まえた変化の一つといえます。
国際的な勧告への対応は十分といえますか
もっとも、令和5年改正後も、収容期間に上限を設ける規律や、収容の要否について裁判所が直接審査する仕組みは導入されておらず、自由権規約委員会や恣意的拘禁作業部会からの勧告に十分応えていないとの指摘がなされています。3か月ごとに収容の必要性を見直す運用が設けられたことは一定の前進ですが、これはあくまで行政内部の手続にとどまります。国際人権法の観点からの検証は、今後も入管収容の制度改革を議論する上で重要な視点であり続けると考えられます。
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おわりに
自由権規約9条1項が定める恣意的拘禁の禁止は、入管収容の当否を考える上で見過ごすことのできない国際法上の視点です。国内法の議論とあわせて、この観点も踏まえながら、ご自身の状況を整理していただければと思います。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
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