憲法31条の適正手続と入管収容
2026/08/12
「なぜこんなに長く収容されるのか、その必要性を誰かがきちんと審査してくれているのか。」入管収容を経験したご本人やご家族から、こうした疑問を伺うことがあります。日本国憲法31条は適正な手続を経なければ自由を奪われないことを定めていますが、この規定が入管収容にどこまで及ぶのかは、重要な論点です。本記事では、憲法31条の観点から入管収容の問題を整理します。
本記事の要点
- 憲法31条は、法律の定める手続によらなければ自由を奪われないことを定めています。
- 入管法39条1項・52条5項は、いずれも収容「することができる」と定めるにとどまります。
- 収容しない裁量も認められるべきであるとの議論が、有力に主張されています。
- 令和5年改正で3か月ごとの見直しが設けられましたが、司法審査は導入されていません。
憲法31条は入管収容にどう関わりますか
憲法31条は、何人も、法律の定める手続によらなければ、生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科されないと定めています。この規定が刑事手続以外の場面、とりわけ行政手続である入管収容にどこまで適用ないし準用されるかについては議論がありますが、身体の自由という重大な利益に関わる以上、適正な手続の保障が及ぶべきであるとの考え方が有力に主張されています。入管法39条1項・52条5項は、いずれも収容「することができる」と定めるにとどまり、収容を義務付ける規定ではありません。この文言から、収容しない裁量も認められるべきであるとの解釈論が展開されています。
「全件収容主義」とはどのような運用ですか
もっとも、実務上は、退去強制事由に該当する疑いがある外国人について原則として収容するという運用がなされてきたとされ、これはしばしば「全件収容主義」と呼ばれます。この運用に対しては、退去強制手続中であることのみを理由とする無条件・無期限の収容は、恣意的拘禁として憲法31条や自由権規約9条1項に反するのではないかとの批判が有力に主張されてきました。令和5年改正入管法により、収容によらずに手続を進める監理措置が新設されたことは、この批判を踏まえた制度的な対応の一つと位置づけることができます。
適正手続の観点から残された課題は何ですか
令和5年改正により、収容の必要性を3か月ごとに見直す規律が設けられたことは一つの前進といえますが、この見直しはあくまで行政内部の手続にとどまり、収容期間の上限や、収容の要否について裁判所が直接審査する仕組みは導入されていません。適正手続の保障という観点からは、身体拘束の当否を独立した第三者機関である裁判所が審査する仕組みの必要性が指摘されており、この点は改正後も引き続き議論の対象となっています。憲法31条の趣旨を踏まえた制度のあり方は、今後も注視すべき重要な論点です。
当事務所のご案内
当事務所(舟渡国際法律事務所・東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人事件に取り組んでまいりました。
在留資格を喪失し不法滞在として刑事事件にもなっていた依頼者について、刑事裁判を見据えた被告人質問・証人尋問を実施しつつ、婚姻・認知の手続を成立させ、在留特別許可を得た事例がございます。
ストーカー規制法に基づく警告処分の取消し等を求めた控訴事件では、「警告は単なる行政指導ではなく法的効果を有する」として処分性を正面から認める判決(令和6年6月26日大阪高等裁判所判決)を獲得しております。行政の措置そのものを争う訴訟に注力してまいりました。
刑事事件の段階で故意・過失を徹底して争っておくことは、後の入管手続における主張の基礎ともなります。当事務所は、刑事と入管を一本の線でつないだ弁護方針を採っております。
松村大介弁護士が初動から終結まで全工程を直接担当し、若手弁護士や事務員による代行は行っておりません。外国人事件専属の中国語通訳も常駐しておりますので、言語の壁により事実関係が正確に伝わらないという事態を避けることができます。
※ 解決事例は個別事案の事情に基づくものでございます。同様の結果を保証するものではない点にご留意ください。
初回のご相談は無料でお受けしております。全国からのご依頼に対応しておりますので、遠方の方もご相談いただけます。
おわりに
憲法31条が保障する適正手続の理念は、入管収容の場面でも本来及ぶべきものですが、司法審査を欠く現状には課題が指摘され続けています。収容をめぐる法的な位置づけを正確に理解することは、ご自身やご家族の状況を考える上での出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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