監理措置に関する判断を争えるか|処分性という関門
2026/08/12
監理措置が認められなかった、あるいは監理措置の条件が厳しすぎると感じても、それをそのまま裁判で争うことができるのだろうかと疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。行政の判断を裁判で争うためには、その判断が争訟の対象となる「処分」に当たるかという、処分性と呼ばれる関門を通らなければなりません。監理措置に関する判断について、この処分性がどのように扱われるかは、現時点で公表された裁判例が確認されておらず、明確な答えが定まっているとは言えない状況にあります。本記事では、この論点を整理いたします。
本記事の要点
- 行政の判断を裁判で争うためには、その判断が処分に当たるかという関門を通る必要があります。
- 監理措置に関する判断の処分性については、現時点で公表された裁判例は確認されていません。
- 退令前と退令後で監理措置の根拠条文・効果が異なるため、論点の整理も別々に行う必要があります。
- 処分性が認められない場合でも、他の手続を通じて実質的な救済を目指す道が検討されます。
処分性とはどのような考え方か
行政庁が行った判断のすべてが、そのまま取消訴訟などの対象になるわけではありません。裁判で争うことができるのは、国民の権利義務に直接影響を及ぼす行政庁の行為、すなわち処分に当たるものに限られるとされており、これを処分性の有無という形で判断する枠組みが用いられています。監理措置に関する主任審査官の判断、たとえば監理措置を許可しない判断や、条件を課す判断、あるいは監理措置決定を取り消す判断について、それぞれが処分性を持つかどうかは、個々の判断の内容や効果を踏まえて検討されるべき問題です。この整理を欠いたまま争訟を起こしても、入口の段階で退けられてしまうおそれがあります。
なぜ明確な答えがないのか
監理措置は令和5年改正入管法により導入された比較的新しい制度であり、これに関する公表された裁判例は現時点で確認されていません。そのため、監理措置に関する主任審査官の判断について処分性が認められるかどうかは、既存の裁判例の蓄積による明確な指針があるとは言い難い状況です。退去強制令書発付前の監理措置(法44条の2以下)と発付後の監理措置(法52条の2以下)とでは、要件や効果、そして退令発付による失効の有無といった構造が異なるため、処分性を検討する際にも、どちらの場面の判断であるかを明示したうえで、個別に論じる必要があります。断定的な見通しを示すことは適切ではありません。
処分性が争点となる場合にどう向き合うか
処分性の有無が定まっていない論点について争訟を提起する際には、まず処分性が肯定される可能性を丁寧に検討したうえで、あわせて他の手続を通じた実質的な救済の道を確保しておくことが実務上重要になります。たとえば、退去強制令書発付処分そのものを争う取消訴訟や執行停止の申立てなど、より処分性の判断が確立している手続とあわせて主張を組み立てることで、争訟全体としての実効性を高めることが考えられます。監理措置に関する判断を単独で争うべきか、他の手続と組み合わせるべきかは、個々の事案の経過によって大きく異なるため、専門的な検討が不可欠です。
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ストーカー規制法に基づく警告処分の取消し等を求めた控訴事件では、「警告は単なる行政指導ではなく法的効果を有する」として処分性を正面から認める判決(令和6年6月26日大阪高等裁判所判決)を獲得しております。行政の措置そのものを争う訴訟に注力してまいりました。
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おわりに
監理措置に関する判断の処分性は、現時点で明確な答えが確立していない論点です。だからこそ、他の手続とあわせて全体の戦略を組み立てることが重要になります。見通しの立て方に迷われた際は、経過を丁寧に伺ったうえで弁護士がご相談に応じます。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
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