退去強制令書の執行停止申立て|送還部分と収容部分
2026/08/12
退去強制令書が発付されると、送還と収容という二つの重大な効果が同時に生じます。取消訴訟を提起しても、判決が確定するまでの間は原則としてこれらの効果が続いてしまうため、訴訟の帰趨を待つだけでは、その間に送還が実施されてしまったり、収容が長期化してしまったりする危険があります。そこで用いられるのが、執行停止という手続です。執行停止は、送還を止める部分と収容を止める部分とを分けて申し立てることができる点に特徴があります。本記事では、この二つの違いを整理いたします。
本記事の要点
- 退去強制令書の効果には、送還を実施する部分と、身柄を収容する部分の二つがあります。
- 執行停止は、送還部分と収容部分を分けて申し立てることができる手続です。
- 送還部分の停止は送還の実施を止める効果、収容部分の停止は身柄の解放を目指す効果を持ちます。
- どちらの停止を求めるかによって、主張すべき事情や資料の組み立て方が異なります。
退去強制令書にはなぜ二つの部分があるのか
退去強制令書発付処分の効果は、大きく分けて、外国人を本邦から送還するという送還部分と、送還が可能となるまでの間その身柄を収容するという収容部分から成り立っています。取消訴訟を提起して処分の適法性を争っている間も、原則としてこれらの効果は維持されるため、何も手当てをしなければ、訴訟の帰趨が明らかになる前に送還が実施されてしまったり、収容が続いたりすることになりかねません。執行停止という手続は、この送還部分と収容部分のそれぞれについて、個別にその効力を止めることを求めることができる点に特徴があります。二つを一体として捉えるのではなく、分けて検討することが、実務上の出発点になります。
送還部分の執行停止とは何を目指す手続か
送還部分の執行停止は、退去強制令書に基づく送還の実施そのものを止めることを目的とする手続です。これが認められれば、少なくとも送還が実施されることは避けられ、その間に取消訴訟の審理を進めたり、他の在留の可能性を検討したりする時間的な余地が生まれます。もっとも、送還部分の執行停止が認められたとしても、それだけでは収容が解かれるわけではなく、身柄が引き続き収容施設に置かれる場合があります。そのため、送還を止めることと、身柄を解放することとは、法的にも実務的にも別の課題として扱われることになります。
収容部分の執行停止とは何を目指す手続か
収容部分の執行停止は、退去強制令書に基づく収容の効力を止め、身柄の解放を目指す手続です。送還部分の停止と異なり、こちらは日々の生活そのものに直結する問題であるため、収容によって被る不利益の内容や程度を具体的に示すことが重要になります。あわせて、退令発付後の監理措置(法52条の2以下)の申請といった、収容によらない身柄の安定を図る他の手続を並行して検討することも少なくありません。送還部分と収容部分のいずれについて、どのような順序で、どのような資料に基づいて申し立てるかは、個々の事案の経過によって大きく異なるため、専門的な検討が欠かせません。
当事務所のご案内
当事務所(舟渡国際法律事務所・東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の方を中心とする外国人事件に取り組んでまいりました。
在留資格を喪失し不法滞在として刑事事件にもなっていた依頼者について、刑事裁判を見据えた被告人質問・証人尋問を実施しつつ、婚姻・認知の手続を成立させ、在留特別許可を得た事例がございます。
ストーカー規制法に基づく警告処分の取消し等を求めた控訴事件では、「警告は単なる行政指導ではなく法的効果を有する」として処分性を正面から認める判決(令和6年6月26日大阪高等裁判所判決)を獲得しております。行政の措置そのものを争う訴訟に注力してまいりました。
刑事事件の段階で故意・過失を徹底して争っておくことは、後の入管手続における主張の基礎ともなります。当事務所は、刑事と入管を一本の線でつないだ弁護方針を採っております。
当事務所では、松村大介弁護士自身が全工程を直接担当する体制を採っております。外国人の方の事件では、接見・取調べの立会い・入管との折衝・訴訟対応のいずれの場面でも一貫した戦略が必要となるためでございます。加えて、外国人事件専属の中国語通訳が常駐しております。
※ 解決事例は個別事案の事情に基づくものでございます。同様の結果を保証するものではない点にご留意ください。
初回のご相談は無料でお受けしております。全国からのご依頼に対応しておりますので、遠方の方もご相談いただけます。
おわりに
執行停止は、送還部分と収容部分を分けて考えることで、初めて有効な戦略が見えてくる手続です。どちらを優先すべきか、どのような資料が必要かは、退令発付に至る経緯や現在の身柄の状況によって異なります。判断に迷われる場合は、早めに弁護士へご相談ください。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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