監理人は被監理者の逃亡について責任を負うのか
2026/08/12
監理人を引き受けようとするとき、多くの方が最も不安に思うのは、「もし被監理者が逃げてしまったら、自分が処罰されるのではないか」という点ではないでしょうか。この不安は決して的外れなものではなく、監理人と被監理者の間には、制度の設計上、利益相反ともいえる緊張関係が存在します。本記事では、被監理者の逃亡と監理人の責任の関係について、正確に整理いたします。
本記事の要点
- 被監理者が逃亡したこと自体では、監理人は処罰されません。
- 監理人は、逃亡を知った日から7日以内に届け出る義務を負います。
- 届出義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となり得ます。
- 監理人が報告義務を果たすと被監理者との信頼関係が壊れかねないという構造的な問題が指摘されています。
逃亡そのものは監理人の処罰事由ではない
まず押さえておくべき点として、被監理者が逃亡したという事実そのものによって、監理人が直ちに処罰されるわけではありません。監理人は被監理者の身柄を物理的に拘束する立場にはなく、あくまで生活状況の把握や指導監督、相談対応といった関わりを通じて、逃亡を防止するよう努めることが期待されているにすぎません。したがって、監理人としてできる限りの対応をしていたにもかかわらず被監理者が逃亡してしまった場合に、それだけで刑事責任や過料の対象となることはありません。
監理人に求められるのは届出義務の履行
もっとも、監理人には、被監理者の逃亡を知った日から7日以内に主任審査官へ届け出る義務があります。この届出義務を怠った場合には、10万円以下の過料の対象となり得ます。つまり、監理人にとって責任問題となり得るのは、逃亡という事実そのものではなく、逃亡を知りながら届出を怠ったという不作為です。この違いを正確に理解しておくことが、監理人としての立場を過度に恐れすぎないためにも重要です。
報告義務と信頼関係の間で揺れる立場
他方で、この制度には構造的な難しさも指摘されています。監理人は被監理者の逃亡や条件違反を知れば届け出る義務を負いますが、被監理者は生活保護を受けられず、原則として健康保険も与えられないため、生存のためにやむを得ず条件に違反せざるを得ない状況に置かれることがあります。監理人が義務どおりに報告すれば、被監理者は収容や逮捕のリスクに直面し、両者の信頼関係が壊れかねません。関東弁護士会連合会も、こうした利益相反の構造を制度上の問題として指摘しています。
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おわりに
被監理者の逃亡自体は監理人の処罰事由ではありませんが、届出義務を怠れば過料の対象となり得るという点、そして報告義務と信頼関係の間で監理人が難しい立場に置かれ得るという点は、引き受ける前によく理解しておく必要があります。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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