出身国に戻れない事情がある場合の主張の組み立て方
2026/08/12
「本国に戻れば身の危険がある」「本国にはもう頼れる身寄りがいない」といった事情を抱えながら、退去強制手続の対象となってしまった方からのご相談は少なくありません。こうした事情をどのように主張として組み立てていくかは、その後の見通しを大きく左右します。本記事では、出身国に戻れない事情がある場合に、在留特別許可の主張をどのように構成していくべきか、基本的な考え方を整理いたします。
本記事の要点
- 在留特別許可は法務大臣の裁量による特別な許可であり、法50条に基づきます。
- 令和5年改正入管法により、在留特別許可の考慮事情が法律上明確化されました。
- 入管庁が公表する事例を年度横断的に分析することが、主張の組み立てに役立ちます。
- 同種の事情を有する他の事例との均衡を、憲法14条1項の平等原則の観点から主張することが考えられます。
在留特別許可とはどのような制度ですか
在留特別許可は、退去強制事由に該当する場合であっても、法務大臣がその裁量により在留を特別に許可する制度であり、入管法第50条に規定されています。令和5年改正入管法により、在留特別許可にあたって考慮すべき事情が法律上明確化され、以前と比べて判断の枠組みが可視化された点は重要な変化といえます。出身国に戻れない事情がある場合には、この在留特別許可を求めていくことが、在留を維持するための中心的な手段の一つとなります。
主張はどのように組み立てればよいですか
出身国に戻れない事情を主張する際には、単に「戻りたくない」という心情を述べるだけでは足りず、具体的な事実を積み上げて説得的に構成していく必要があります。その際に有用なのが、出入国在留管理庁が公表している事例を年度をまたいで分析するという視点です。過去にどのような事情がどのように評価されてきたかを踏まえることで、ご自身の事情がどのように位置づけられるかを検討する手がかりが得られます。もっとも、事例分析はあくまで参考情報であり、個別の事案ごとに結論が異なりうる点には留意が必要です。
平等原則の観点から主張することはできますか
憲法第14条第1項は、法の下の平等を定めており、合理的な理由なく異なる取扱いをすることを禁じています。同様の事情を有する他の方が在留特別許可を得ている事例がある一方で、ご自身が同じような取扱いを受けられない場合には、この平等原則の観点から主張を構成することが考えられます。ただし、事案ごとに事情の重み付けは異なりますので、表面的な類似性のみで結論が左右されるわけではありません。個別の事情を丁寧に整理し、説得力のある形で主張を組み立てていくことが重要です。
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おわりに
出身国に戻れない事情を抱える方にとって、在留特別許可の主張をどう組み立てるかは切実な問題です。考慮事情の法定化や公表事例の分析、平等原則といった視点を組み合わせながら、ご自身の事情に即した主張を構成していくことが求められます。早めに弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。本記事は一般的な解説であり、個別のご事情については弁護士に直接ご相談ください。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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