オーバーステイとは?刑事責任・在留特別許可・出国命令制度をわかりやすく解説
2026/08/09
オーバーステイ、すなわち在留期間を過ぎて日本に残留し続けることは、ご本人はもとより、そのご家族にとっても大きな不安を伴う問題です。「このまま日本にいたら逮捕されるのか」「刑事罰を受けるのか」「強制的に帰国させられてしまうのか」——同じような不安を抱えるご本人・ご家族の方々に向けて、本記事ではオーバーステイの法的な位置づけ、刑事責任の内容、そして入管手続における在留特別許可と出国命令制度の選び方について、実務に基づき解説いたします。
本記事の要点
- オーバーステイ(不法残留)は在留期限経過後も在留を続ける行為で、入管法24条4号ロの退去強制事由に該当する
- 刑事責任として3年以下の拘禁刑・300万円以下の罰金(併科もあり得る)が定められているが、事情により不起訴となる場合もある
- 自ら入管に出頭して申告することは、在留特別許可の判断において積極要素として考慮される
- 一定の要件を満たせば、収容されることなく短期間で出国できる出国命令制度の活用も選択肢となる
- 在留特別許可を目指すか出国命令を選ぶかは、個別事情を踏まえた専門的な見極めが必要である
オーバーステイとは何か
オーバーステイとは、在留カード等に記載された在留期限を経過した後も、新たな在留資格を取得しないまま本邦に在留を続けることをいいます。日本の法律上は「不法残留」と呼ばれ、出入国管理及び難民認定法(入管法)24条4号ロに定める退去強制事由に該当いたします。在留資格の更新手続を失念した場合や、変更手続が期限に間に合わなかった場合など、当初から不法に在留し続ける意図がなかった事案でも該当し得る点に注意が必要です。在留期限を1日でも過ぎれば、形式的にはオーバーステイに該当いたします。
刑事責任
発覚のきっかけ
オーバーステイが発覚する経緯としては、警察官による職務質問の際に在留カードの提示を求められて発覚する場合、就労先が在留資格を確認した際に期限切れが判明し入管に通報される場合、交通違反や事故処理の際の身元確認で発覚する場合、出国しようとした空港等の審査で発覚する場合、そしてご本人が自ら入管に出頭して申告する場合など、様々な経緯が考えられます。このうち自主的な出頭申告は、後述のとおり、その後の入管手続において重要な意味を持ちます。
量刑の実際
入管法70条1項5号は、正当な理由なく在留期間を経過して本邦に残留する行為について、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨を定めております。もっとも、実際に刑事訴追に至るか否か、また量刑の重さは、オーバーステイの期間の長さ、他の法令違反の有無、発覚の経緯、素行等の事情によって大きく異なります。単純な不法残留のみで、他に法令違反がなく、自ら出頭したような事案では、起訴猶予(不起訴処分)となり、刑事手続としてはそこで終了することも少なくありません。他方、不法就労等の他の違反が重なっている場合や、摘発により発覚した場合には、正式に起訴され、罰金刑や執行猶予付きの拘禁刑が科される可能性が高まります。なお、刑事手続の結果にかかわらず、入管法上の退去強制手続は別途進行いたしますので、刑事事件としての結果のみに注目するのではなく、入管手続を見据えた対応が不可欠です。
入管での取扱い
在留特別許可における出頭申告の位置づけ
退去強制事由に該当する場合であっても、法務大臣の裁量により特別に在留を許可する制度が在留特別許可です(入管法50条)。出入国在留管理庁が公表している「在留特別許可に係るガイドライン」では、許可の判断にあたり考慮される積極要素・消極要素が示されており、その積極要素の一つとして「当該外国人が、不法滞在を申告するため、自ら地方出入国在留管理官署に出頭したこと」が明記されております。摘発により発覚した場合と比較して、自主的な出頭申告は、本人の遵法意識や誠実な対応の証左として、在留特別許可の判断において有利に働き得る事情と位置づけられております。もっとも、出頭申告さえすれば必ず許可されるというものではなく、日本人配偶者の有無、扶養するお子様の有無、在留期間の長さ、素行等の諸事情を総合的に考慮した判断となります。
出国命令制度の活用場面
他方、日本での在留継続にこだわらず速やかな帰国を前提とする場合には、出国命令制度(入管法24条の3、55条の2から55条の6)の活用が選択肢となります。同制度は、違反調査が開始される前に自ら入管に出頭したこと、オーバーステイ以外の退去強制事由がないこと、一定の犯罪により拘禁刑に処せられたことがないこと、過去に退去強制や出国命令を受けたことがないこと、速やかな出国が確実に見込まれること、という要件をいずれも満たす場合に利用でき、収容されることなく、比較的短期間の手続で出国することが可能です。通常の退去強制では原則5年間とされる上陸拒否期間(再入国禁止期間)が、出国命令では原則1年間に短縮される点も大きな利点です。もっとも、いったん日本を出国することが前提となるため、日本人配偶者やお子様がいらっしゃる等、日本での在留継続を強く希望される事情がある場合には、出国命令ではなく在留特別許可を目指すべき場面も少なくありません。
当事務所のご案内
在留特別許可を目指すべきか、出国命令制度を活用すべきかは、在留期間の長さ、家族関係、素行、発覚の経緯等の個別の事情によって結論が大きく異なる、専門的な見極めを要する判断です。当事務所(舟渡国際法律事務所・松村大介弁護士)では、出入国在留管理庁が公表している在留特別許可の許可・不許可事例を年度横断的に分析し、これまでの解決実績も踏まえたうえで、個別の事案が在留特別許可の許可傾向にどの程度合致するかを一定程度分析することが可能です。この分析を踏まえ、在留特別許可を目指して手続を進めるべきか、それとも出国命令制度を選択して早期の解決を図るべきかについて、実務的な見通しをご説明いたします。
当事務所は、不法就労助長罪の認定事案において前例のない在留特別許可を獲得した実績や、婚姻・認知の手続が未了という困難な状況下でも在留特別許可を一度で獲得した実績など、入管手続における豊富な経験を有しております。また、松村大介弁護士が接見の初動から手続の終結まで全工程を直接担当し、外国人事件に精通した中国語専属通訳もご利用いただけます。オーバーステイに関するご事情でお悩みの方、今後の見通しが気になる方は、お早めに当事務所へご相談ください。
おわりに
オーバーステイは、時間が経過するほど選択肢が狭まっていく性質の問題です。早期に自ら出頭を検討することも含め、専門家に相談したうえで、ご自身の状況に最も適した対応を選択することが重要です。なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案については弁護士に直接ご相談ください。また、本記事で言及した過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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