組織的犯罪処罰法違反で実刑判決を受けたら、在留は絶望的か|退去強制の構造と監理措置・在留特別許可
2026/08/09
組織的犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)違反により有罪判決を受け、実刑に処せられた外国籍の方について、「もう日本には残れないのでしょうか」というご相談を受けることがございます。たしかに実刑判決は、退去強制事由に直結する重大な事情でございます。しかし、実刑判決を受けたという事実と、実際に日本を退去することになるかどうかとの間には、なお争い、あるいは主張を尽くすべき余地が残されております。本記事は、実刑判決後に直面する手続の構造と、そこで検討すべき対応を整理するものです。
本記事の要点
- 組織的犯罪処罰法違反等により無期又は1年を超える拘禁刑の実刑判決を受けた場合、入管法24条4号リの退去強制事由に該当します。
- 同号は執行猶予付き判決には適用されず、実刑(執行猶予が付かない判決)であることが要件です。
- 退去強制事由に該当しても、入管法50条1項ただし書により、人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があれば在留特別許可の余地が残ります。
- 令和5年入管法改正により、収容によらない監理措置制度が新設され、収容の負担を避けつつ手続を進める選択肢が生まれました。
- 監理措置は一度不許可となった場合の不服申立て制度がないため、申請の時点で十分な資料を整えることが結果を大きく左右します。
組織的犯罪処罰法違反と退去強制事由の構造
入管法24条は、外国籍の方が退去強制の対象となる事由を列挙しております。このうち薬物事犯を定める4号チが、刑の軽重を問わず該当する構造であるのに対し、4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としており、刑の重さそのものを要件としております。組織的犯罪処罰法違反は、この4号リの対象となる典型的な罪名の一つでございます。
ここで重要なのは、4号リが対象とするのは実刑判決に限られるという点でございます。同じ組織的犯罪処罰法違反であっても、執行猶予が付された場合には、この号には該当いたしません(別表第一に掲げる罪については刑の軽重を問わず該当しうる4号の2という別の規定がございますが、組織的犯罪処罰法違反は同別表に列挙された罪種には当たりません)。したがって、実刑か執行猶予かという一点が、退去強制事由の該当性そのものを分ける決定的な分岐点となります。公判段階で執行猶予の獲得を目指す意義は、この点においても大きいものでございます。
実刑判決の後も、在留特別許可の余地は残る
もっとも、退去強制事由に該当したことと、実際に退去強制令書が発付されることとは、法的に別の問題でございます。入管法50条1項は、法務大臣が在留を特別に許可することができる場合を定めておりますが、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者については、同項ただし書により、「人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があるとき」に限り許可されるという、加重された要件が課されております。
この「特別の事情」は容易に認められるものではございませんが、認められないものでもございません。長期にわたり日本で生活を築き、日本以外に生活の実質的な基盤を持たない事情、家族との関係、服役中の反省の態度、組織的な関係からの離脱、更生の見込みといった事情は、令和5年改正により条文上明記された考慮事情(同法50条5項)に対応するものであり、これらを具体的な資料によって積み上げることが、この加重された要件を満たすための道筋となります。
収容によらない選択肢――監理措置制度
退去強制手続が進む間、対象となる方は原則として収容の対象となりますが、令和5年改正入管法により、収容に代わる監理措置という制度が新設されました。監理措置は、監理人となる方を確保したうえで、主任審査官が、逃亡や証拠隠滅のおそれと、収容を継続することによる心身への負担その他の不利益とを比較衡量し、収容によらずに手続を進めることが相当と判断した場合に許可されるものでございます。監理人には配偶者や家族に限らず、弁護士が就任することも可能でございます。条件として、300万円以下の保証金の納付や、居住地・行動範囲の制限、定期的な出頭といった義務が課されることがございます。
注意すべきは、監理措置の不許可決定に対しては、不服を申し立てる制度が用意されていないという点でございます。したがって、一度の申請で説得力のある資料を揃えることが不可欠であり、収容の直後、あるいはそれ以前の段階から、監理人の確保と資料の準備に着手することが望まれます。
初動で押さえておきたい点
- 実刑判決の言い渡し直後から、収容と退去強制手続を見据えた資料収集を始めることが、その後の選択肢を左右します。
- 監理人には配偶者や家族だけでなく、弁護士が就任することも可能です。
- 服役中の生活態度や反省の状況、出所後の生活基盤の有無は、いずれも重要な資料となります。
- 組織的な関係からの離脱を客観的に示す資料(誓約書等)は、監理措置・在留特別許可のいずれの判断においても評価される事情です。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、実刑判決を受けた後の収容対応や在留特別許可の獲得について、継続的に取り組んでまいりました。
組織的な犯罪への関与を理由に実刑判決を受けた依頼者様について、服役後の収容に際して監理措置の許可を比較的短期間で得て収容から解放し、現在は在留特別許可の獲得に向けて手続を進めている事例がございます(詳細は別記事にてご紹介しております)。
また、在日期間が長期に及ぶ永住者・定住者の方について、実刑判決後であっても、家族関係や生活基盤を丁寧に立証し、在留特別許可を獲得してきた実績がございます。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
実刑判決を受けたという事実は重い意味を持ちますが、それによって在留の道が完全に閉ざされるわけではございません。収容の局面では監理措置、その後の在留の局面では在留特別許可という、それぞれ異なる制度が用意されており、いずれも申請時点でどれだけ資料を整えられるかが結果を左右いたします。実刑判決の言い渡しを受けた直後、あるいは服役中の段階からでも、ご相談をお受けしております。
なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
----------------------------------------------------------------------
舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639
東京にて中国人の方をサポート
東京を中心に刑事事件の弁護
----------------------------------------------------------------------