「刑事事件なら弁護士は誰でも同じ」という誤解|刑事だけを見る弁護と、入管まで見通す弁護の違い
2026/08/08
外国籍の方の刑事事件について、「起訴されなければよい」「執行猶予が取れればよい」という前提で弁護方針が組まれることがございます。日本人の事件であれば、それは正しい目標設定でございます。しかし外国籍の方の場合、刑事手続の終わりは事案の終わりではございません。判決の言渡しの直後に入管の収容が待っている、という事態が現実に生じております。本記事は、刑事だけを見る弁護と、入管まで見通す弁護とで、具体的に何が変わるのかを整理するものでございます。
本記事の要点
- 外国人事件では、刑事処分の内容がそのまま退去強制事由の該当性と結び付きます。
- 薬物事犯(入管法24条4号チ)は、執行猶予でも罰金でも退去強制事由となりうるという点で、他の罪名と構造が異なります。
- 「執行猶予を取れば日本に残れる」という説明は、罪名によっては成り立ちません。
- 起訴前の弁護活動で収集する資料は、その後の在留特別許可の判断に直接用いられます。
- 刑事手続の中で作られる記録が、入管手続における主張の可能性を狭めることがあります。
目標設定が異なると、集める資料が異なる
公判で執行猶予を得ることを目標に据えた場合、弁護活動の重点は、反省の態度、被害弁償、再犯防止の環境、情状証人といった事柄に置かれます。これらは量刑を軽くするうえで有効でございます。
他方、在留を守ることを目標に据えた場合、必要となる資料はこれと重なりつつも、異なる広がりを持ちます。日本での在留の期間と態様、家族関係の実態、納税と社会保険の状況、地域社会との結び付き、退去強制がもたらす具体的な不利益。これらは、入管法50条5項が掲げる考慮事情に対応するものでございます。刑事手続の段階でこれらを整えておかなければ、退去強制手続に入ってから慌てて集めることになり、時期を失することがございます。
罪名ごとに構造が異なる
入管法24条は、退去強制事由を号ごとに定めており、その構造は一様ではございません。同条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を掲げており、刑の重さによる絞りがございます。これに対して同条4号チは、覚醒剤取締法・大麻取締法・麻薬及び向精神薬取締法等の一定の法令に違反して有罪の判決を受けた者を掲げており、刑の重さによる絞りがございません。
つまり、薬物事犯については、罰金であっても執行猶予であっても、退去強制事由に該当しうるということでございます。「執行猶予が付いたから大丈夫」という説明は、この号の構造を踏まえたものとは申せません。号ごとの構造を精査したうえで目標を設定することが、外国人事件では出発点でございます。
刑事の記録が、入管の主張を縛ることがある
もう一つ見落とされがちな点がございます。刑事手続の中で作成された供述調書や、有罪判決の認定した事実は、その後の入管手続でも前提として扱われるということでございます。刑事の段階で「組織の一員として継続的に関与していた」という記載が残れば、入管手続において「一時的・従属的な関与にすぎなかった」と主張することは、著しく困難になります。
逆に申しますと、刑事の段階から入管手続を見通していれば、何をどう記録に残すかという設計が可能でございます。この設計こそが、外国人刑事弁護の中核であると、当事務所は考えております。
退去強制事由に、責任主義はどこまで及ぶのか
なお、当事務所は、この分野において一歩踏み込んだ問題提起を行っております。刑事事件では、故意や過失の有無が処罰の前提とされます。他方、入管の実務では、退去強制事由の該当性の判断にあたって故意・過失は要件とされないとする運用が長年踏襲されてまいりました。しかし、行政処分として重大な不利益を課すにあたり、責任主義の考え方がどこまで及ぶべきかは、憲法論・行政法論の根本に関わる問題でございます。
松村弁護士は、不法就労助長罪に問われ退去強制の危機に立たされた女性の事案において、この論点を正面から問う訴訟を現在係争中でございます。係争中の事案でございますので結論を予断することはできませんが、刑事の段階から故意・過失を徹底して争っておくことが、その後の入管手続における主張の基礎を成すという点は、既に申し上げることができます。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、刑事手続と入管手続を一体として設計することを、方針の中心に置いております。
不法就労助長罪の認定を受けた事案において、前例のない在留特別許可を獲得した実績がございます。刑事の段階から退去強制手続を視野に入れた活動を積み重ねた結果でございました。
また、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案における無罪判決の獲得、在留資格を失った状態で逮捕・起訴された方についての在留特別許可の獲得など、刑事と入管の双方にわたる解決の実績を有しております。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
弁護人を選ぶ際に、刑事事件の経験の有無だけをご覧になるのは、外国人事件では十分ではございません。その事件が在留にどう跳ね返るのか、そのために刑事の段階で何を残し、何を残さないのか。この設計ができているかどうかを、どうぞご確認ください。ご相談の際に、当事務所の考え方をご説明いたします。
なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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