舟渡国際法律事務所

「日本語が分からなかったのだから調書は無効になる」という誤解|通訳を介した供述調書の重み

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「日本語が分からなかったのだから調書は無効になる」という誤解|通訳を介した供述調書の重み

「日本語が分からなかったのだから調書は無効になる」という誤解|通訳を介した供述調書の重み

2026/08/08

公判の段階になってから、「取調べのときは日本語が分からず、内容を理解しないまま署名した。だからあの調書は無効だ」と主張したいというご相談を頂戴することがございます。お気持ちは理解できるものでございますが、この主張が単独で通ることは、実際には多くございません。本記事は、通訳を介して作成された供述調書がどのように扱われるのか、そして、なぜ作成の段階での対応が決定的なのかを整理するものでございます。

本記事の要点

  • 通訳を介して作成された供述調書も、署名・押印があれば証拠となりうる書面として扱われます。
  • 「理解していなかった」という後日の主張は、調書の任意性・信用性を争う一事情にとどまり、当然に無効とはなりません。
  • 調書には通訳人が読み聞かせたという記載が残ることが多く、後からの否認は困難を伴います。
  • 有効な争い方は、取調べの録音録画、通訳人の資格や訳出の正確性、調書の記載と客観証拠との齟齬の指摘です。
  • 最も確実なのは、作成の段階で内容を確認し、納得できない調書には署名しないという対応です。

供述調書は、署名によって効力の基礎を得ます

被疑者の供述を録取した書面は、刑事訴訟法322条により、一定の要件のもとで証拠とすることができるものとされております。その要件の中心にあるのが、供述者の署名または押印でございます。署名がある以上、その内容を供述者が確認したものとして扱われるのが原則でございます。

通訳人を介して取調べが行われた場合、調書には、通訳人を介して読み聞かせたところ誤りのないことを申し立てた旨の記載が付されるのが通例でございます。この記載があると、「読み聞かせを受けたが理解できなかった」という後日の説明は、記載と矛盾する主張として扱われ、立証の負担がご本人の側に生じます。

それでも争う方法はございます

もっとも、署名があれば一切争えないというわけではございません。実務上、次のような点が争われております。第一に、取調べの録音録画がなされている場合、実際のやり取りと調書の記載との対応関係を検証することができます。訳出の過程で意味が変わっている箇所が見つかることがございます。

第二に、通訳人の適格性でございます。中国語といっても地域による差が大きく、方言を母語とされる方に標準的な普通話で通訳が行われた場合、細かなニュアンスが失われることがございます。また、法律用語の訳出には専門性が必要であり、日常会話の通訳では対応しきれない場面がございます。

第三に、調書の記載と客観証拠との齟齬でございます。調書に記載された日時・場所・行動が、通信記録、防犯カメラ、交通機関の利用記録と食い違う場合、その調書が実際の記憶に基づくものではないことを示す手がかりとなります。

なぜ「作成の段階」が決定的なのか

以上の争い方は、いずれも可能ではございますが、容易ではございません。これに対して、調書が作成される段階での対応は、はるかに確実でございます。読み聞かせを受けた際に、意味の分からない箇所があれば、その場で指摘し、訂正を求めることができます。訂正に応じてもらえない場合、署名を拒むことができます。署名のない調書は、原則として証拠となりません。

この対応をご本人が単独で行うことは、身柄を拘束された環境では容易ではございません。だからこそ、逮捕の直後から弁護人が接見を重ね、取調べで何を聞かれ、どのように記録されたかを確認していく作業が必要でございます。当事務所が、松村弁護士の直接対応と、外国人事件に精通した中国語専属通訳の同行という体制を採っておりますのは、この確認の精度を保つためでございます。

在留への波及

供述調書は、刑事手続の中でのみ用いられるものではございません。有罪判決の基礎となった事実は、その後の退去強制手続においても、退去強制事由の該当性や在留特別許可の判断の前提として参照されます。刑事の段階で不正確な事実が記録されれば、その不正確さは入管手続にまで持ち越されます。

たとえば、資格外活動の期間や態様に関する記載、薬物の使用の有無に関する記載、組織内での役割に関する記載は、いずれも入管法24条各号の該当性や、同法50条5項が掲げる素行の評価に直結いたします。刑事と入管を一体として設計すべき理由が、ここにもございます。

当事務所のご案内と解決事例

当事務所は、取調べへの対応そのものを弁護活動の中心に据えてまいりました。

特殊詐欺の受け子として複数回にわたり再逮捕された事案において、取調べへの対応を徹底し、不当な取調べには抗議しつつ主張と立証を尽くした結果、全ての事件について不起訴処分を獲得した事例がございます。何がどのように記録されるかを一件ごとに確認する作業が、結論を分けました。

また、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された事案において、証拠の分析と反対尋問を尽くし、無罪判決を獲得した事例もございます。供述の変遷とその理由を丁寧に明らかにすることが、争点の中心となりました。

当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。

おわりに

「分からないまま署名してしまった」というご経験は、外国人事件では決して珍しくございません。もっとも、その一枚が後々まで効いてまいります。取調べが始まる前に、あるいは始まった直後に、どうぞご相談ください。まだ間に合う段階が、必ずございます。

なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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