ご家族が逮捕されたとき、日本にいるご家族が先に用意しておける書類|身元引受書から在留関係の資料まで
2026/08/08
ご家族が逮捕されたという知らせを受けたとき、多くの方が「自分には何もできない」とお感じになります。接見できるのは弁護人だけで、面会も制限され、本人と話すこともままならない。それでも、ご家族の側でしか用意できない資料がございます。そして、それらの資料が揃っているかどうかが、勾留の判断、処分の判断、そしてその後の入管手続の見通しを、現実に左右いたします。本記事は、身柄が拘束されている間にご家族が準備できることを、順を追って整理するものでございます。
本記事の要点
- 身元引受書は、勾留の必要性・保釈・処分の判断のいずれにも影響する、最も重要な書類です。
- 住まいと収入の裏付け(賃貸借契約書、在職証明書、給与明細)は、逃亡のおそれを否定する資料になります。
- 在留カードの写し、旅券、過去の在留資格に関する書類は、その後の入管手続でそのまま必要となります。
- 日本での生活実態を示す資料(納税証明、学校の在籍証明、子の就学状況)は、在留特別許可の考慮事情に直接対応します。
- 示談を要する事案では、資金の準備と中国からの送金の段取りに時間を要するため、早期の着手が必要です。
身元引受書は、形式的な紙ではございません
身元引受書は、釈放された後にご本人を監督し、住まわせ、捜査や裁判の手続に出頭させることを約束する書面でございます。作成されるのはご家族や勤務先の方でございますが、その内容が形式的なものにとどまるか、具体的なものになるかで、読み手に与える印象は大きく変わります。
具体的とは、たとえば次のような内容でございます。どこに住まわせるのか(部屋の間取りや同居者を含む)。日中の監督は誰がどのように行うのか。就労させるのであればどの職場か。ご本人と作成者との関係はどのようなものか(在留カードや戸籍、婚姻に関する書類等で裏付けられるか)。裁判所や検察官は、抽象的な約束ではなく、実際に機能する監督体制があるかを見ております。
住まいと収入の裏付け
勾留の判断では、住居が定まっているか(刑事訴訟法60条1項1号)、逃亡のおそれがあるか(同項3号)が問われます。賃貸借契約書の写し、公共料金の請求書、住民票(在留カードに記載された住居地との一致)といった資料は、住居の実在を示すものでございます。また、在職証明書、直近数か月の給与明細、雇用契約書は、日本での生活基盤を示すと同時に、釈放後に戻るべき場所があることを示します。
勤務先に知られたくないというお気持ちは当然でございます。もっとも、就労資格をお持ちの場合、勤務先を失うこと自体が在留資格の問題を生じます。勤務先への説明をいつ、誰が、どのように行うかは、弁護人と相談のうえ設計すべき事柄でございます。
入管手続を見越した資料
外国籍の方の事件では、刑事手続の後に入管手続が控えている可能性を常に考えておく必要がございます。在留特別許可の判断において考慮される事情は、令和5年改正入管法により入管法50条5項に明示されました。在留を希望する理由、家族関係、素行、入国の経緯、在留期間、法的地位、退去強制の理由、その他人道的な配慮の必要性でございます。
これらに対応する資料は、平時のご家庭に散在しております。婚姻関係を示す書類、お子様の在学証明書や通知表、家族で撮影された写真、納税証明書、国民健康保険や年金の納付記録、地域活動への参加を示す資料。これらは、身柄が拘束されてからでは、ご本人には集められません。ご家族が動ける時期に集めておくことに、大きな意味がございます。
示談を要する事案では、資金の段取りが先行いたします
被害者のいる事案では、示談の成否が処分を大きく左右いたします。もっとも、示談金の準備には時間がかかります。とりわけ中国本土のご家族から送金を受ける場合、外貨管理上の手続があり、まとまった金額を短期間で日本へ送ることは容易ではございません。勾留期間は原則10日、延長を含めて最大20日でございますから、この期間内に示談を成立させるためには、逮捕の直後から資金の段取りに着手する必要がございます。
なお、示談交渉そのものは、弁護人を通じて行われるのが通例でございます。ご家族が被害者に直接連絡を取ることは、かえって不利に評価されることがございますので、必ず弁護人にご相談ください。
ご家族が最初にすべきこと
- どの警察署に留置されているかを確認いたします。分からない場合、弁護士が照会することができます。
- 本人の在留カードの番号、在留資格の種類、在留期限を確認いたします。刑事手続の途中で在留期限が到来する場合、対応が必要となります。
- 本人の勤務先・学校の連絡先と、直近の給与や学費の状況を把握しておきます。
- 中国本土のご家族に連絡し、必要書類の取得と送金の可否を早めに確認いたします。公証書類の取得には日数を要します。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所では、ご家族からのご連絡を起点として、接見と資料の収集を並行して進めております。
観光目的で来日された方が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという条件の下、依頼者に有利な資料を一つずつ収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、在留特別許可を獲得いたしました。資料の乏しさは、必ずしも結論を決めるものではございません。
また、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、置かれていた状況と犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例もございます。この事案でも、ご家族が用意された生活状況に関する資料が、主張を支える基礎となりました。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
ご家族にできることは、決して少なくございません。むしろ、身柄が拘束されている間に外部でしか進められない作業こそが、結論を左右いたします。何から手を付けるべきか迷われましたら、まずはご連絡ください。順序を整理するところから、ご一緒に始めさせていただきます。
なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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