接客を伴う店舗で働いていた留学生・技能実習生の方へ|資格外活動と風営法違反が重なるとき
2026/08/08
接客を伴う飲食店やマッサージ店で外国籍の方が就労していた事案について、店舗側の経営者や監理団体の職員が入管法違反(不法就労助長)で摘発され、あわせて風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反にも問われた、という報道がありました。こうした摘発では、雇用した側だけでなく、働いていたご本人の側にも捜査が及びます。「アルバイトをしていただけなのに、なぜ自分まで」とお感じになる方に向けて、二つの法律が重なるとき何が起きるのかを整理いたします。
本記事の要点
- 「留学」「技能実習」等の在留資格で接客を伴う営業所において就労した場合、資格外活動として入管法違反に問われます。
- 資格外活動許可を得ていても、風俗営業等に従事することは許可の範囲外とされており、時間数の問題ではありません。
- 店舗側が風営法違反に問われる事案では、従業員側の供述が中核的な証拠となり、繰り返し取調べを受けることになります。
- 資格外活動は退去強制事由(入管法24条4号ハ)に該当しうるほか、在留資格取消し(同法22条の4)の対象にもなります。
- 刑事処分が軽くとも入管手続は別に進むため、初動から入管手続を見通した対応が必要です。
週28時間の問題ではない
「留学」の在留資格をお持ちの方が資格外活動許可を受けた場合、原則として1週について28時間以内の就労が認められます。もっとも、この許可には条件が付されており、風俗営業もしくは店舗型性風俗特殊営業等が営まれている営業所において行う活動は、許可の対象から除外されております(入管法19条2項、同法施行規則19条5項1号)。すなわち、たとえ週に数時間であっても、接客を伴う営業所での就労は、それ自体が資格外活動に当たります。時間数を守っていたから大丈夫、という理解は成り立ちません。
この点は、「技能実習」や「家族滞在」の在留資格をお持ちの方についても同様でございます。技能実習の場合は、そもそも認定された実習計画以外の就労が認められておらず、実習先以外での就労は、業種を問わず資格外活動の問題を生じます。
雇用主の摘発が、従業員への捜査の入口になる
報道されるこの類型の事案は、多くの場合、店舗側の摘発から始まります。捜査機関は、店舗が不法就労を助長したこと(入管法73条の2)や、無許可営業・禁止地域営業といった風営法違反を立証するため、実際に働いていた方から詳細な供述を得ようといたします。勤務のシフト、報酬の受渡しの方法、業務の内容、誰から指示を受けていたか。これらは店舗側の犯罪事実の中核をなす事情であり、従業員の方は参考人として、あるいは資格外活動の被疑者として、繰り返し事情を聴かれることになります。
ここで注意を要するのは、店舗側の立件のために求められる供述と、ご自身の資格外活動の成否を左右する供述とが、しばしば重なることでございます。店舗の実態を詳しく述べれば述べるほど、ご自身の就労の実態も詳細に記録されてまいります。どこまで述べるかは、ご自身の立場を踏まえて判断されるべき事柄であり、弁護人の関与なく進めるべきものではございません。
入管法上の帰結は二重に生じる
資格外活動については、入管法70条1項4号が専ら資格外活動を行った場合の罰則を定め、同法73条がその余の資格外活動の罰則を定めております。刑事処分としては罰金にとどまる例も見られますが、入管法上の帰結はそれで終わりません。入管法24条4号ハは、資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる者を退去強制事由として掲げております。加えて、同法22条の4は、在留資格に応じた活動を継続して3か月以上行っていない場合等について、在留資格の取消しを定めております。
つまり、刑事手続で罰金となり、あるいは起訴猶予となった場合であっても、その後に在留資格の取消手続や退去強制手続が別途進行しうるということでございます。刑事と入管は、別の物差しで動いております。
不起訴を目標としつつ、入管手続の準備を並行させる
当事務所では、この類型について、刑事手続では起訴猶予を含む不起訴処分の獲得を目標に据えつつ、同時に入管手続に向けた資料の準備を進めることを基本方針としております。具体的には、就労に至った経緯(学費や生活費の事情、紹介者の存在、業務内容の説明を受けていたか)、就労の期間と態様、学業や実習の継続状況、生活の本拠が日本にあることを示す資料を、刑事段階から整えてまいります。これらは、その後の在留資格の更新、あるいは在留特別許可の判断において、そのまま使える資料でございます。
初動で押さえておきたい点
- 取調べでは、店舗の実態と、ご自身の就労の実態とを区別してお話しになる必要がございます。両者は自然と混ざりますので、事前の整理が欠かせません。
- 学校や実習先への連絡がいつなされるかは、在留資格の維持に直結いたします。所属機関への届出(入管法19条の16)との関係も含め、早めにご相談ください。
- 通訳を介した供述では、「働いていた」「手伝っていた」「店にいた」の区別が曖昧になりがちです。この区別が資格外活動の成否を左右いたします。
当事務所のご案内と解決事例
当事務所は、在留資格と刑事処分の双方に跨がる事案を、日常的に取り扱っております。
たとえば、観光目的で来日された方が在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案において、婚姻と認知の手続が未了であったため当局から一旦は受理されなかったところ、憲法上の観点から交渉を重ねて手続を成立させ、あわせて刑事裁判における被告人質問・証人尋問を組み立てた結果、在留特別許可を獲得した事例がございます。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な条件の下でも、過去の許可事例の分析を通じて道を開くことができた事案でございました。
また、特殊詐欺の出し子行為に関わったとされた20代の女性について、置かれていた状況と犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得した事例もございます。組織の側から見た構図と、ご本人の認識との隔たりを丁寧に示すことが要でございました。
当事務所の最大の特徴として、松村大介弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします(事務員・若手弁護士による代行を行いません)。また、当事務所には外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐しており、捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳を、刑事手続全般にわたってご利用いただけます。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更につきましても、提携の行政書士と連携し、ワンストップでご相談をお受けしております。
おわりに
学費や生活費のために働いた結果、在留資格そのものを失いかねない事態に陥る。この構造は、ご本人にとって理不尽に感じられるものと存じます。もっとも、就労に至った経緯や生活の実情を具体的に示すことで、処分の内容も、その後の在留の見通しも変わりうるのが実際でございます。事情を聴かれた段階で、どうぞ早めにご相談ください。
なお、本記事は2026年8月時点の法令に基づく一般的な解説であり、個別の事案につきましては弁護士に直接ご相談ください。また、過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
微信ID:matsumura1119
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