舟渡国際法律事務所

違反審査・口頭審理・異議申出から争う|在留特別許可は最後の段階で決まるが、勝負は最初の段階で決まる

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違反審査・口頭審理・異議申出から争う|在留特別許可は最後の段階で決まるが、勝負は最初の段階で決まる

違反審査・口頭審理・異議申出から争う|在留特別許可は最後の段階で決まるが、勝負は最初の段階で決まる

2026/08/06

入管に出頭した、あるいは入管の職員が職場に来た。そこから始まる手続は、書類の名前も担当官の名称も次々に変わっていき、ご本人やご家族には全体像がつかめないまま進んでいきます。「口頭審理の期日と書いてありますが、何を話せばよいのでしょうか」「認定に不服がなければここに署名してくださいと言われました」。こうしたご相談を受けるたびに感じるのは、在留特別許可を求める主張は最後にするものだと思い込んでいるうちに、争う機会が一つずつ閉じられていくことの重さです。本記事では、退去強制の手続がどのような順序で進み、各段階で何をしておくべきかを、順を追って整理いたします。

本記事の要点

  • 退去強制の手続は、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査と認定、特別審理官の口頭審理と判定、法務大臣への異議の申出という順序で進みます。認定に不服があれば口頭審理を請求し、判定に不服があれば異議を申し出る道が用意されています。
  • 在留特別許可は、この最後の異議申出の段階で判断されます。もっとも、そこで初めて動き始めるのでは間に合いません。
  • 退去強制令書が発付された後の事情変更は原則として考慮されません(ガイドライン注4)。婚姻、認知、診断、就学といった事情は、令書発付の前に整えておく必要があります。
  • 認定や判定に不服がないと述べてしまうと、その後に争える範囲が事実上狭まります。署名を求められた書面の意味は、その場で確認するべきです。
  • 仮放免と監理措置は身柄の解放を求める手段ですが、その条件に違反すれば在留特別許可の判断で消極要素として扱われます。

退去強制の手続はどのような順序で進むのか

退去強制の手続は3段階の審査で構成され、各段階に不服申立ての機会が置かれています。

第1段階は、入国警備官による違反調査です(入管法27条以下)。入管法違反の疑いがある者について事実を調査し、必要があれば主任審査官が発付する収容令書によって収容します(同法39条)。

第2段階は、入国審査官による違反審査です(同法45条)。退去強制対象者に該当しないと判断すれば直ちに放免し、該当すると判断した場合はその旨を認定して本人に通知します(同法47条)。この認定に不服がある場合、通知を受けた日から3日以内に、特別審理官による口頭審理を請求することができます。

第3段階は、特別審理官による口頭審理です(同法48条)。特別審理官は認定に誤りがないかを審理して判定を行い、この判定に不服がある場合、通知を受けた日から3日以内に、法務大臣に対して異議を申し出ることができます(同法49条)。

法務大臣は異議の申出に理由があるかどうかを裁決しますが、理由がないと裁決する場合であっても、在留を特別に許可すべき事情があると認めるときは在留特別許可をすることができます(同法50条)。許可もしない場合には、主任審査官が退去強制令書を発付します(同法51条)。

まず、3日という期間の短さにお気づきいただきたいと思います。ここで弁護人に相談する時間を確保できるかどうかが、後の展開を分けます。

違反調査の段階で何をしておくべきか

この段階で行うべきことは、供述と資料の整合を確保することです。

違反調査では、入国警備官が本人から事情を聴取し、違反調査調書が作成されます。ここで語った内容は、違反審査、口頭審理、異議の申出のすべての段階を通じて基礎資料として扱われ、刑事事件の供述調書と同様、後から覆すことは容易ではありません。

とりわけ注意を要するのは、家族関係についての説明です。同居の状況、生計の実情、お子様の養育の分担について、記憶に頼った概略の説明をしてしまうと、後に提出する客観的資料との間に食い違いが生じ、その食い違いが「同居・婚姻実態に疑義」という評価に転化することがあります。

違反審査と認定に対しては何ができるのか

争えることは二つあります。

第1に、退去強制事由該当性そのものです。すなわち、入管法24条各号のいずれにも該当しないという主張です。在留期間の計算、上陸許可の効力、資格外活動の有無、在留資格取消しの手続の適否は、事実と法の解釈の問題として争う余地があります。

ここに関連して、松村大介弁護士が現在正面から問うている論点があります。刑事事件では故意や過失の検討が当然の出発点ですが、入管の実務では、退去強制事由の判断に故意や過失は要件でないとする運用が長年踏襲されてきました。当事務所は、不法就労助長の事案において、この論点を正面から問う訴訟を現在係争中です。不法就労助長、無自覚な薬物の運搬、共謀の認識、偽造文書の真偽の認識、過失運転致死傷といった類型では、刑事段階から故意・過失を徹底して争っておくことが、後の入管手続における主張の基礎を成します。

第2に、積極要素の立証です。認定がなされる前に、家族関係、在留の経緯、素行、人道上の配慮の必要性を裏づける資料を提出しておきます。

口頭審理で何を言えばよいのか

口頭審理は認定の適否を審理する手続ですから、まず述べるべきは認定の誤りです。その上で、在留特別許可を求める事情を記録に残します。

実務上、口頭審理には弁護士が代理人として立ち会い、意見を述べ、証拠を提出することが認められています。陳述された内容は口頭審理調書に記録され、法務大臣の裁決の資料となりますから、この期日は「入管に説明を聞かれる場」ではなく「主張と証拠を記録に残す場」として臨むべきものです。

記録に残しておくべき事項は、婚姻の経緯と現在の生活の実情、同居の開始時期、お子様の国籍・年齢・通学先と本国での就学が困難な事情、疾病があれば診断名と治療の必要性、納税の状況、地域社会との関わり、そして不法滞在に至った経緯におけるご本人の帰責性の程度です。

異議の申出と在留特別許可はどのような関係にあるのか

在留特別許可は、法務大臣が異議の申出について裁決をする際に併せて判断されます(入管法50条)。したがって異議申出書は、退去強制事由該当性を争う書面であると同時に、在留特別許可を求める書面という二重の性格を持ちます。

令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により在留特別許可の申請手続が新設され、考慮事情が入管法50条5項に明示されました。現在は、異議の申出と併せて、同項各号の考慮事情を逐条的に追う形で主張を構成する方式が機能します。この点は本シリーズの別稿(令和5年改正入管法による在留特別許可の申請手続)で詳しく述べます。

「不服はありません」と答えてしまうとどうなるのか

争える範囲が事実上狭まります。

認定の通知を受けた際に口頭審理を請求しないと述べれば、その時点で手続が進み、退去強制令書の発付に至る道筋が短くなります。判定の通知を受けた際に異議を申し出ないと述べれば、法務大臣の裁決を経る機会そのものがなくなり、したがって在留特別許可の判断を受ける機会も失われます。

通訳を介した説明があったとしても、「不服申立てをしない」という趣旨の書面の意味をその場で正確に理解することは容易ではありません。署名を求められた書面が何についてのものなのかを確認し、判断を保留して弁護人に連絡する。この一点を、ぜひご記憶いただきたいと思います。

退去強制令書が出てからでも間に合うのか

令書発付後にできることは残っていますが、その前と比べて明らかに狭まります。

ガイドラインの注4は、退去強制令書発付後の事情変更は原則として考慮されないとしています。婚姻届の提出、お子様の認知、治療の必要性の診断が令書発付の後になった事案では、その事情を在留特別許可の判断において評価してもらえないおそれがあります。同じ事実でも、令書発付の前にあるか後にあるかで扱いが変わります。

実務上、令書発付後に事情を訴える申出(再審情願と呼ばれることがあります)が行われる場合もありますが、これは法令に定められた不服申立ての手続ではありません。法的な手段としては、法務大臣の裁決と退去強制令書発付処分の取消しを求める行政訴訟を提起し、併せて執行停止の申立てを行う方法があります。もっとも、判断の枠組みが行政訴訟の要件に移り、時間と費用の負担も相当なものになります。

つまり、令書発付前の段階で主張と立証を尽くしておくことが、制度上決定的な意味を持ちます。

収容された場合、仮放免と監理措置はどう使うのか

身柄の解放を求める手段としては、仮放免(入管法54条)と、令和5年改正法によって設けられた監理措置があります。監理措置は、収容に代えて、監理人による監理の下で社会内での生活を認める制度です。

いずれについても、身元を保証する方の存在、住居の安定、逃亡のおそれがないこと、治療の必要性、就学中のお子様の存在といった事情を、資料をもって示していくことになります。

同時に強く申し上げておきたいのは、仮放免や監理措置の条件に違反すること、とりわけ逃亡や無許可の就労は、在留特別許可の判断において消極要素として扱われるということです。現行ガイドラインは、仮放免中・監理措置中の逃亡や条件違反を消極要素に位置づけており、事例集にも、仮放免中に違法な店舗を経営していた事案が不許可とされた例が掲載されています。身柄が解放された後の生活の仕方が、そのまま判断材料になります。

各段階の主張はガイドラインのどの評価要素に対応するのか

現行ガイドライン(令和6年3月改定、同年6月10日運用開始)の評価要素と、各段階の対応関係を整理いたします。

  • 家族関係(第2の2)。日本人又は特別永住者の実子であること、その実子を相当期間同居して監護養育していること、法的な婚姻が安定かつ成熟していること。別表第二の在留資格者(永住者・定住者等)との家族関係もこれに準じます。違反調査の段階から一貫した供述と客観的資料をそろえるべき最重要項目です。
  • 素行(第2の3)。本邦への貢献が積極要素となる一方、他の外国人の不法就労や在留資格の偽装への関与、在留カード等公的書類の偽変造、売春への関与は消極要素です。
  • 在留期間と法的地位(第2の5)。不法在留期間の長期化は令和6年改定で明示的に消極要素と位置づけられましたが、その間に日本人や地域社会との関係を構築している場合には別途積極要素として考慮される留保があります。
  • 退去強制理由となった事実(第2の6)。刑事処分の内容と罪名の反社会性の程度が評価されます。
  • 人道上の配慮(第2の7)。難病等による治療の必要性、本国情勢に照らした帰国困難、無国籍。
  • その他の事情(第2の9)と子の利益。自ら出頭したこと、別表第一の在留資格該当性を有すること。令和6年改定により、本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されました(参議院附帯決議14項を踏まえたもの)。

判断は、積極要素が消極要素を明らかに上回る場合に許可の方向で検討されます(ガイドライン第3)。積極要素があれば許可されるというものでも、消極要素があれば一切許可されないというものでもありません(注4)。

刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば結果は変わったのか

入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としますが、全部執行猶予の場合は除かれます。他方、同条4号チは薬物関係法令違反により有罪の言渡しを受けた者を退去強制事由としており、こちらは執行猶予でも該当します。

そして、違反審査の段階で退去強制事由該当性を争おうとしても、有罪判決が確定していれば、その判決を前提とした認定を覆すのは容易ではありません。事例集には、覚せい剤取締法違反で執行猶予付き判決を受けたにとどまる事案、入管法違反による罰金の略式命令を受けたにとどまる事案でも不許可となっている例が並びます。これらについては、刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性がある、と考える余地が残されています。当事務所が起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標としているのは、このためです。

公表事例に同じ類型が見当たらないとき

入管庁が公表している事例集は、各年20件前後を抜粋したものにとどまり、実際の許可件数のごく一部を示すものにすぎません。公表事例に自分と同じ類型の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。現に当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら、在留特別許可を獲得しております。

他方、公表事例は行政自身が「許可相当」と判断した先例でもあります。同種の事情を有する事案について許可の実績があるにもかかわらず本件についてのみ異なる取扱いをすることは、法の下の平等を定める憲法14条1項との関係で問題があるという主張は、異議申出書において実際に機能します。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。

退去強制手続を争った解決事例をご紹介いたします。不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済する事案では、退去強制事由には故意も過失も不要であるとする従来の実務を問い直すべく、責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を現在係争中です。この事案では、入管庁の公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でありながら在留特別許可を獲得し、その上でなお違反認定処分そのものの取消しを争っております。また、観光目的で来日された相談者が日本人女性との間にお子様を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了であったため当局から一旦は受理を拒まれたところ、憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析することにより1回の申請で在留特別許可を獲得しております。

当事務所の方針を申し添えます。第1に、不起訴処分の獲得を最優先目標とすることです。多くの罪名では執行猶予判決を得ても結果として退去強制となりますので、起訴前段階に力を集中させます。第2に、松村弁護士が全工程を直接担当することです。初回の接見から違反審査、口頭審理、異議の申出、公判の結審まで、事務員や若手弁護士による代行を行いません。第3に、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐していることです。捜査機関や入管が手配する通訳人とは別に、依頼者本人のために動く立場の通訳が同席いたします。第4に、提携する行政書士と連携し、手続終了後の在留資格の更新・変更まで一貫してお支えできる体制を整えていることです。

結語

退去強制の手続では、在留特別許可という結論は最後に出ますが、その結論を決める材料は最初の段階からそろえられていきます。3日という不服申立ての期間、令書発付後の事情変更が原則として考慮されないという枠組み。この二つを知っているかどうかで、選べる道の数が変わります。手続の途中で不安を感じられた段階で、どうか一度ご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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