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偽造在留カード・偽装結婚・虚偽申告と在留特別許可|公的書類の偽りが最も重く評価される理由

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偽造在留カード・偽装結婚・虚偽申告と在留特別許可|公的書類の偽りが最も重く評価される理由

偽造在留カード・偽装結婚・虚偽申告と在留特別許可|公的書類の偽りが最も重く評価される理由

2026/08/06

「アルバイト先に在留カードを見せただけです。カードは知り合いから手に入れたもので、偽物だとは思っていませんでした」。「結婚した当時は本気でした。生活がすれ違って別居しただけなのに、偽装結婚だと言われています」。在留カードや公文書、婚姻届に関わる事件では、こうしたご相談が少なくありません。ご本人にとっては「書類のこと」でも、入管の判断枠組みでは、公的書類の偽りは出入国在留管理行政の根幹に触れる違反として、他の犯罪類型と比べても際立って重く評価されます。本記事では、出入国在留管理庁が公表した事例集の記載に即して、この類型で何が結果を分けているのかを整理いたします。

本記事の要点

  • 現行の在留特別許可に係るガイドラインは、在留カード等の公的書類の偽変造・不正受交付・行使・所持を「特に考慮する消極要素」として明示的に掲げています(第2の3(ウ))。他の外国人の在留資格の偽装に関わる行為も同様です(同(イ))。
  • 事例集で確認できる限り、偽造在留カードの所持・行使・提供が認定された事例は、平成26年分から令和6年分までいずれも不許可です。偽装結婚が判明した事例も同様の傾向にあります。
  • 注目すべきことに、刑事処分が「無」と記載された事例でも不許可となっています。有罪判決の有無とは別に、公的書類に対する偽りそれ自体が素行の評価に反映される構造がうかがわれます。
  • 他方、虚偽の在留期間更新許可申請書を作成し行使した事案でありながら、日本で生まれ育ったお子様3人を含む家族4人全員が「定住者(1年)」を得た許可事例が令和3年分にあります。傾向は傾向であって結論ではありません。
  • したがって弁護活動は、執行猶予判決を目標にするのではなく、起訴前の段階から不起訴処分の獲得を最優先目標として組み立てる必要があります。偽造の認識、婚姻意思、虚偽の認識という主観面は、刑事段階で争わなければ後の入管手続でも争えなくなります。

なぜ公的書類の偽りは特に重く評価されるのか

結論から申し上げます。入管が管理する在留資格制度は、在留カードや旅券、婚姻届といった公的書類の記載が正しいという前提の上に成り立っているためです。その前提を崩す行為は、個別の被害者に対する加害というより、制度そのものへの侵害として位置づけられます。

現行のガイドライン(令和6年3月改定、同年6月10日運用開始)は、「特に考慮する消極要素」の中で、出入国在留管理行政の根幹に関わる違反又は反社会性の高い違反の具体例を列挙しています。そこには、集団密航への関与や他の外国人の不法入国を容易にする行為(第2の3(ア))、他の外国人の不法就労又は在留資格の偽装に関わる行為(同(イ))、在留カード等の公的書類の偽変造・不正受交付・行使・所持(同(ウ))が並びます。

この位置づけは、量刑の軽重とは別の次元で働きます。事例集を通読すると、罰金や執行猶予にとどまった事例でも、また刑事処分がないと記載された事例でも、公的書類に関わる違反が認定された事案は不許可が続いています。「刑が軽かったから在留への影響も軽い」という見通しは、この類型では成り立ちにくいと申し上げるほかありません。

この類型で問題となる退去強制事由はどの規定か

入管法24条は、退去強制事由を号ごとに書き分けています。号ごとに構造が異なるため、当該事件でどの号が問題になるのかを最初に特定することが出発点になります。

同条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を挙げますが、全部執行猶予の場合は除かれます。他方、同条4号チは薬物関係法令違反により有罪の言渡しを受けた者を挙げ、こちらは執行猶予でも該当します。さらに、入管法は、別表第一の在留資格(技術・人文知識・国際業務、留学、家族滞在、経営・管理等)で在留する方について、入管法上の一定の罪による有罪判決を、実刑か執行猶予かを問わず退去強制事由とする規定を別に置いています(該当する号は事案ごとに条文に当たって確認する必要があります)。永住者・日本人の配偶者等・定住者といった別表第二の在留資格の方は、この規定の対象ではありません。

在留カードの偽造・行使・所持は入管法自体が罪として定めており、事例集の刑事処分欄も「入管法違反により、懲役1年6月、執行猶予3年の判決」といった形で記載されています(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。この場合、退去強制事由の該当性は、刑法犯に関する規定ではなく、入管法上の罪に関する規定の適用として問題になります。

加えて、令和5年改正入管法50条1項ただし書に注意が必要です。無期若しくは1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた方、又は24条3号の2、3号の3、4号ハ若しくは同号オからヨまでに該当する方は、「在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」がある場合に限り許可されます。自分がこのただし書の対象になるかどうかは、罪名・刑種・在留資格の区分を条文に当てはめて判断するほかありません。ここは推測で済ませてよい部分ではなく、必ず個別に確認する必要があります。

偽造在留カードの所持・行使・提供は事例集でどう扱われているか

出入国在留管理庁が公表した事例集を平成26年分から令和6年分まで通して確認しますと、偽造在留カードが関わる事例はいずれも不許可でした。以下、年・類型・番号を特定して挙げます。

雇用先や勤務先への提示という類型があります。平成28年分のA類型(配偶者が日本人の場合)不許可第4事例は、「人文知識・国際業務」で在留中に雇用先を退職し、アルバイト先の責任者に対して偽造在留カードを提示した事案です。警察逮捕により発覚し、在日約7年8月、婚姻期間約1年、入管法違反により懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受け、逮捕後に婚姻が成立しましたが、不許可となりました。令和3年分のD類型(その他)不許可第5事例は、不法残留中に勤務先の面接時に偽造在留カードを提示し、その後同所で就労を継続した事案で、在日約9年、違反期間約4年、刑事処分は無との記載でありながら不許可です。令和4年分のD類型不許可第6事例は、「家族滞在」で在留中に稼働目的で偽造在留カードを行使した事案で、在日約9月、入管法違反(偽造在留カード行使)により懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受け、「技術・人文知識・国際業務」で在留する配偶者との同居継続を希望しましたが不許可となりました。

所持のみの類型も同様です。平成26年分のB類型(配偶者が正規在留外国人の場合)不許可第4事例は、当局摘発時に偽造在留カードを所持していた事案で、在日約8年2月、違反期間約3年、婚姻期間約8月、刑事処分は無との記載ですが不許可でした。令和元年分のD類型不許可第3事例は、行使の目的で偽造在留カードを所持したとして入管法違反により懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受けた事案で、日本国籍を有する実子(親権なし)がいる日本での生活を希望しましたが不許可です。令和2年分のD類型不許可第7事例(懲役2年・執行猶予4年)、令和3年分のD類型不許可第6事例(懲役2年6月・執行猶予3年)も不許可でした。

他の外国人に偽造カードを渡す類型は、さらに評価が厳しくなります。平成28年分のD類型不許可第4事例は偽造在留カードの提供で懲役2年・執行猶予3年、被退去強制歴1回があり不許可。平成29年分のD類型不許可第4事例は、「短期滞在」で在留中の外国人に偽造在留カードを譲渡した事案で、刑事処分は無との記載でありながら、同国人配偶者(「技能」)及びお子様(「家族滞在」)との同居希望も認められず不許可となりました。自分の名義の在留カードを他人に提供した事案も同じ方向で評価されています(平成29年分B類型不許可第1事例、窃盗・入管法違反により懲役1年・執行猶予3年)。

近年の事例も傾向は変わりません。令和5年分のD類型不許可第1事例は偽造在留カード行使及び不法残留で懲役2年・執行猶予4年。令和6年前半のD類型不許可第2事例は、偽造在留カード行使で刑事処分は無との記載ながら、在日約19年4月でも不許可。令和6年後半のD類型不許可第2事例は、不法入国・偽造在留カード行使につき偽造有印公文書行使及び入管法違反により懲役3年・執行猶予5年の判決を受け、在日約20年1月、内妻とお子様が日本で生活していると主張しましたが、退去強制歴もあり不許可となりました。

刑事処分がなくても不許可となるのはなぜか

ここは、この類型でご相談を受けるときに最も丁寧にご説明している点です。事例集には、刑事処分欄が「無」と記載されているにもかかわらず不許可となった事例が複数あります。上に挙げた平成26年分B類型不許可第4事例、平成29年分D類型不許可第3事例と第4事例、令和3年分D類型不許可第5事例、令和6年前半D類型不許可第2事例がその例です。

理由は制度の作りにあります。在留特別許可の判断は、有罪判決の有無を要件とする仕組みではありません。ガイドラインは素行の評価要素として公的書類の偽変造等の行為そのものを掲げていますから、刑事手続で不起訴となっても、行為の存在が入管の調査で認定されれば消極要素として評価され得ます。

もっとも、このことは不起訴を目指す意味が乏しいという結論には結びつきません。むしろ逆です。不起訴処分を獲得できれば、有罪の言渡しを前提とする退去強制事由の該当性そのものが生じません。そのうえで、事実関係についても「偽造の認識がなかった」との判断を検察官から得た経緯を、入管手続における主張の土台として用いることができます。不起訴の理由(嫌疑不十分か起訴猶予か)が後の入管手続で持つ意味は大きく異なりますから、処分の中身にまで踏み込んだ弁護活動が必要になります。

偽装結婚が判明した事例はどのような帰結になっているか

婚姻届に関する虚偽が認定された事例は、事例集の掲載範囲では不許可が並びます。罪名は電磁的公正証書原本不実記録・同供用が典型です。

平成26年分のD類型不許可第5事例は、偽装結婚であることが判明して在留資格を取り消され、その後に偽装結婚相手と同居を始めて在留を希望した事案で、懲役1年6月・執行猶予3年の判決を受け不許可。平成27年分のD類型不許可第5事例は、日本人との偽装結婚後に離婚して「投資・経営」への変更許可を受けた事案で、懲役1年6月・執行猶予3年により不許可。令和元年分ではD類型不許可第4事例(日本人と偽装結婚し不正に在留資格変更許可を受けたとして懲役1年6月・執行猶予3年)と同第7事例(在留資格取消、懲役2年・執行猶予3年)が並びます。同年分のA類型不許可第3事例も、電磁的公正証書原本不実記録・同供用により懲役2年・執行猶予3年の判決を受けた事案ですが、事例集の特記事項欄は空欄であり、偽装結婚であったかどうかは記載からは判明しません。令和2年分のA類型不許可第3事例は、婚姻が偽装結婚と判明して在留資格を取り消され、警察逮捕後に別の日本人と婚姻した事案で、懲役2年・執行猶予4年により不許可でした。

とりわけ注目していただきたいのは、令和6年前半のA類型不許可第1事例です。配偶者は日本人、婚姻期間約7年、未成年のお子様3人という家族関係がありながら、電磁的公正証書原本不実記録・同供用により懲役1年6月の実刑判決(ほか前科1件)を受け、不許可となりました。家族関係という最も強い積極要素があっても、公的書類に関わる違反と実刑という消極要素がそれを上回ると判断された事例です。

他の外国人の婚姻に関わる幇助の類型も、同じ方向で評価されています。令和5年分のB類型不許可第1事例(虚偽文書行使幇助、電磁的公正証書原本不実記録・同供用により懲役1年6月・執行猶予3年、配偶者は永住者、未成年のお子様2人、退去強制歴あり)、同年分D類型不許可第7事例(在日約30年8月、本人は永住者、在留特別許可歴あり)が該当します。在日期間が30年を超えていても、この類型では許可に至っていません。

就職の偽装、在留諸申請における虚偽申告はどう評価されるか

在留資格の申請内容そのものに関わる虚偽も、公的書類の偽りと同じ列に置かれています。

就職先を偽装して在留資格変更許可を受け、実際には別の稼働をしていた類型があります。平成26年分のD類型不許可第2事例は、就職先を偽装して「人文知識・国際業務」への変更許可を受けた後、専ら飲食店従業員として稼働していた事案で、当局摘発により発覚し、刑事処分は無との記載でありながら不許可となりました。「本邦に生活基盤がある」との在留希望理由は認められていません。

他の外国人の申請を助ける類型は、より厳しく評価されます。平成28年分のD類型不許可第3事例は、外国人に不正に在留期間更新許可を受けさせるため、自己が経営する会社に在職しているという内容虚偽の在職証明書等を発行した事案で、刑事処分は無との記載ながら不許可。令和元年分のD類型不許可第8事例は、他の外国人に不正に在留許可を受けさせる目的で偽造文書を入管に提出した事案で、在日約17年1月でも不許可でした。令和2年分のB類型不許可第4事例は虚偽文書作成幇助につき入管法違反により懲役2年2月・執行猶予3年、令和5年分のC類型(子と共に不法滞在)不許可第1事例は、永住者である父がお子様2人に不正に在留資格認定証明書の交付を受けさせる目的で内容虚偽の出生証明書を提出した事案で、いずれも不許可です。

刑事処分がなくても結論が変わらない例として、令和6年前半のB類型不許可第4事例(虚偽文書作成、摘発、婚姻期間約11年11月、未成年のお子様1人、配偶者は「経営・管理」、刑事処分は無)が挙げられます。さらに令和6年後半のB類型不許可第3事例は、自ら入管に出頭して申告し、在日約15年4月、婚姻期間約7年7月、未成年のお子様3人という事情がありながら、配偶者の在留資格に係る在留諸申請において虚偽の内容が申告されていたとして不許可となりました。出頭申告は許可事例に一貫して見られる積極要素ですが、それだけでは虚偽申告という消極要素を覆せなかった事例です。

このほか、退去強制歴を隠して上陸許可を受けた類型、他人名義の旅券を用いた類型も同じ列に並びます。令和4年分のA類型不許可第4事例(ブローカー経由で入手した他人名義旅券を行使して不法入国、退去強制歴あり、刑事処分はなし)、平成30年分のB類型不許可第2事例(他人名義で日本人と偽装結婚の上で不法入国し、その後に正規在留の外国人との婚姻・同居を理由に出頭申告)、平成28年分のD類型不許可第2事例及び平成30年分のD類型不許可第1事例(他人名義旅券で不法入国し偽装日系人として在留)がその例です。有印公文書偽造により懲役2年・執行猶予3年を受けた令和4年分のB類型不許可第3事例も、未成年のお子様1人と婚姻期間約5年4月がありながら不許可でした。

それでも許可された事例はあるのか

あります。事実として正確に申し上げます。

令和3年分のC類型(子と共に不法滞在している外国人の場合)許可第2事例は、虚偽文書作成及び行使の事案です。お子様に不正に在留期間更新許可を受けさせる目的で、内容虚偽の在留期間更新許可申請書を作成し行使したものでした。それにもかかわらず、家族4人全員が「定住者(1年)」の許可を得ています。事例集の記載から読み取れる事情は、在日期間が約24年に及ぶこと、お子様3人がいずれも本邦で出生していること(18歳・11歳・4歳)、発覚が職員探知であること、刑事処分欄に記載がないことです。

現行ガイドラインの枠組みで見ますと、本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受け、本国で初等中等教育を受けることが困難な事情があり地域社会に溶け込んでいるお子様と、その監護養育者であることは、「特に考慮する積極要素」に当たります(第2の2(3))。令和6年改定では「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」も積極要素として明示されました。この事例は、公的書類に関わる違反という強い消極要素があっても、お子様の生育と教育という積極要素がそれを上回ると判断され得ることを示しています。

旧運用の時期にも、同じ方向の事例が残されています。法務省が平成20年12月に公表した資料によれば、平成17年に在留特別許可をした事例の第3事例は、偽造旅券で不法入国した方が、日本人男性との間のお子様を監護養育していた事案で、窃盗(万引き)で逮捕され入管法違反・窃盗罪により懲役2年8月・執行猶予3年を受けながら、「定住者(1年)」を得ています。同年許可第22事例は偽造旅券による不法入国から「定住者」の夫との婚姻に至った事案、同年許可第25事例は他人名義旅券で日系三世を装って入国し偽装日系人と判明した事案で、いずれも「定住者(1年)」が許可されました。平成16年許可第15事例では、偽造旅券でお子様を呼び寄せた家族が全員で出頭申告し、一家全員に「定住者(1年)」が許可されています。

もっとも、旧運用と現行運用の間には差があります。第一次ガイドラインは平成18年10月の策定であり、これらの事例はその前の運用に属します。加えて令和6年改定では、不法在留期間の長期化が明示的に消極要素と位置づけられました。旧運用の許可例をそのまま現在の見通しに用いることはできません。他方、これらの事例が示しているのは、公的書類に関わる違反があっても家族関係と生活の実態が十分に立証されれば許可の判断がなされ得るという、判断の構造そのものです。

刑事段階では何を争うのか

この類型の主観面には、争う余地が実際に存在します。以下は事案の性質によって当てはまりが異なりますが、検討の出発点として申し上げます。

偽造在留カードの事案では、そのカードが偽造であるという認識が争点になります。他人から交付されたカードを真正なものと信じていた場合、偽造であることを認識し得たかどうかは、カードの入手経路、対価の有無と金額、交付者との関係、券面の外観や記載内容、就労開始時のやり取りといった具体的事情から判断されます。「知り合いから頼まれて預かった」という説明が、取調べで「偽物だと分かって使った」という趣旨の調書に置き換わってしまうことは、通訳を介した取調べでは決して珍しくありません。事実関係の細部を弁護人と確認しないまま署名することは避けていただきたいところです。

偽装結婚が疑われる事案では、婚姻意思の存否が中心になります。ここで重要なのは、当初から婚姻の意思がなく届出のみを目的としていた場合と、当初は真正な婚姻意思があって後に生活がすれ違った場合とを、明確に区別することです。後者は本来、偽装結婚ではありません。交際の経緯、同居の実態、家計の共同、親族との交流、写真や通信記録といった資料は、いずれも婚姻意思を裏づける材料になります。他方、事例集の不許可事例に「同居・婚姻の実態に疑義がもたれたもの」との記載が頻出することも事実です。実態があるのであれば、それを示す資料は早い段階で確保しておくべきです。

在留諸申請の虚偽申告の事案では、申請書の記載内容が虚偽であることの認識が問題になります。申請取次者や勤務先が用意した書類にご本人が署名しただけの場合、記載内容を認識していたかどうかは慎重な検討を要します。

刑事事件では故意の検討が当然の出発点である一方、入管実務では、退去強制事由の判断に故意・過失は要件でないとする運用が長年踏襲されてきました。この運用は、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすかという憲法上・行政法上の根本問題を含んでいます。松村大介弁護士は、不法就労助長の事案において、この論点を正面から問う訴訟を現在も係争中です。断定的な結論を申し上げる段階にはありませんが、故意・過失が争点となり得る類型では、刑事段階から主観面を徹底して争っておくことが、後の入管手続における主張の基礎を成します。

この罪名で摘発された場合、何をすべきか

時間の順に、三つの防御線として整理いたします。

第1の防御線:刑事段階

逮捕から勾留が決まるまでの約72時間が最初の分岐点です。警察は逮捕から48時間以内に事件を検察官に送り、検察官は身柄を受け取ってから24時間以内に勾留を請求するかどうかを決めます。この間に作られる供述調書は、後の刑事裁判と入管の違反審査の双方で読まれ続けます。

この段階でお勧めしているのは、偽造の認識、婚姻意思、虚偽の認識といった核心部分については弁護人と方針を確認するまで供述を控え、身分事項や客観的記録で裏づけられる経緯については弁護人と相談の上で必要な説明を行う、という切り分けです。黙秘権は憲法38条1項と刑事訴訟法198条2項が保障する権利であり、行使したことで不利益な取扱いを受けてはならないものですから、行使自体を恐れる必要はありません。目標は執行猶予ではなく不起訴処分です。

第2の防御線:入管の違反審査段階

退去強制手続は、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査と認定、特別審理官の口頭審理と判定、法務大臣への異議申出という順序で進みます。在留特別許可は最後の異議申出に対する判断の中で検討されますが、そこで初めて動くのでは遅すぎます。

認定に不服があれば口頭審理を請求し、判定に不服があれば異議を申し出る道があります。ところが、不服がないと述べてしまうと、争点は事実上封じられます。この類型では、そもそも偽造在留カードの行使・所持という事実があったのか、行使の目的があったのか、婚姻に意思がなかったのかという、退去強制事由の該当性そのものを争う余地があります。違反審査の段階から、この点を明示して主張し、積極要素を裏づける資料を提出しておくべきです。退去強制令書の発付後の事情変更は原則として考慮されません(ガイドライン注4)。

第3の防御線:在留特別許可の申請段階

令和5年改正入管法により、在留特別許可には申請手続が新設され(50条1項)、考慮事情が法律上明示されました(同条5項)。従前の職権発動による恩恵的措置から、申請権を前提とする手続へと構造が変わりました。積極要素の立証を申請者側で組み立てる場面が増えたことになります。

この類型で申請書と意見書に盛り込むべき事項は、家族関係の実態(同居の期間と実際の生活、家計の共同、お子様の在学状況と学校での様子)、地域社会との関係、納税の状況、身元を保証してくださる方の存在、そして刑事手続の結果と量刑事情です。加えて、事例集から同種の事情を有する許可事例を抽出し、同種事案について許可の実績があるにもかかわらず本件についてのみ異なる取扱いをすることは法の下の平等を定める憲法14条1項との関係で問題があるという主張を、具体的な事例の特定を伴って組み立てます。

公表事例に自分と同じ類型の許可例が見当たらないとき

この類型では、公表事例を読んだご相談者が「不許可ばかりで、望みがない」と受け取られることがよくあります。率直に申し上げますと、確かに偽造在留カードに関する公表事例は不許可が並びます。しかし、そこから「許可の可能性がない」という結論を導くのは早すぎます。

出入国在留管理庁が公表する事例集は、各年20件前後の抜粋にとどまり、実際の許可件数のごく一部にすぎません。網羅的な統計ではないのです。同じ類型の許可例が公表事例に見当たらないことは、そのような許可が存在しないことを意味しません。現に当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら、在留特別許可を獲得しています。公表事例の傾向は出発点であって結論ではなく、理論構成と立証の工夫によってその傾向を超えられる場合があります。

他方で、公表事例は行政自身が「許可相当」と判断した先例でもあります。この両面を使い分けることが、書面の組み立て方の要点になります。

雇用主が不法就労助長に問われる場面との関係

偽造在留カードが関わる事件では、提示を受けた側、すなわち雇用主にも法的な問題が生じます。入管法は、事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者を処罰する規定(不法就労助長罪)を置いており、在留カードの確認を怠った場合の責任が争われます。

この点は、外国人従業員のご本人だけでなく、雇用主である経営者の方からのご相談としても寄せられます。不法就労助長罪については、退去強制事由の判断における故意・過失の要否を含めて別稿で詳しく扱っていますので、そちらをご参照ください。ご本人と雇用主の双方が関係する事件では、双方の利害が一致しない場面があり、それぞれ別の弁護人による対応が必要になることも申し添えます。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として取り扱っております。

この類型に関わる解決事例を2件ご紹介いたします。観光目的で来日された相談者が日本人女性との間にお子様を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了であったために当局から一旦は受理を拒まれたところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問と証人尋問を実施いたしました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない困難な状況の下でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することにより、1回の申請で在留特別許可を獲得しております。公的書類が揃わない事案で何をどう立証するかという課題は、本記事の類型と共通します。

もう1件は、不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性を救済する事案です。「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務を問い直すべく、責任主義・過失責任主義の射程を争う訴訟を現在も継続しております。この事件では、入管庁の公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でありながら、在留特別許可を獲得しました(在留特別許可を得た後も、違反認定処分そのものの取消しを争っております)。偽造文書や虚偽申告の事案で主観面を争う際の考え方は、この訴訟で展開している論点と直接につながります。

当事務所の方針を申し添えます。第1に、不起訴処分の獲得を最優先目標とすることです。この類型では執行猶予判決を得ても結果として退去強制手続に進む例が事例集に並びますので、起訴前段階に力を集中させます。第2に、松村弁護士が全工程を直接担当することです。初回の接見から公判の結審まで、事務員や若手弁護士による代行を行いません。第3に、外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐していることです。捜査機関が指定する通訳人とは別に、依頼者本人のために動く通訳が、偽造の認識に関わる供述の訳出を初動から検証いたします。第4に、提携する行政書士と連携し、刑事手続終了後の在留資格の更新・変更まで一貫してお支えできる体制を整えていることです。

結語

在留カード1枚、婚姻届1通、申請書の1行が、その後の在留を左右します。この類型では、刑が軽く済んだことをもって安心できる構造になっておらず、逆に、刑事処分がなくても消極的に評価される場面があります。だからこそ、摘発や逮捕の直後、まだ供述調書が固まる前の段階で、刑事手続と入管手続の両方を見通した方針を立てることが要点になります。ご不安を抱えたまま独りで判断される前に、どうか一度ご相談ください。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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