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配偶者が日本人の場合の在留特別許可|許可と不許可を分けるもの

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配偶者が日本人の場合の在留特別許可|許可と不許可を分けるもの

配偶者が日本人の場合の在留特別許可|許可と不許可を分けるもの

2026/08/06

日本人のご主人、あるいは日本人の奥さまと暮らしておられる中国籍の方が、在留期間を過ぎてしまった、あるいは在留資格を失ってしまった。そのようなご相談を受けるとき、ご本人やご家族が最初に口にされるのは「日本人と結婚しているのだから、なんとかなりますか」というお尋ねです。この記事は、そのお尋ねに対して、出入国在留管理庁が毎年公表している在留特別許可の事例集を全年度分読み込んだ上で、実際にどこで結果が分かれてきたのかをお示しするものです。ご家族の方が、何を準備し、何を早い段階で整えておくべきかを判断できるように、できるだけ具体的に書きました。

本記事の要点

  • 日本人配偶者がいることは最も強い積極要素の一つですが、それだけで在留特別許可が得られるわけではなく、公表事例では許可と不許可がほぼ同数で並んでいます。
  • 許可と不許可を最も鋭く分けているのは婚姻・同居の実態であり、事例集に「婚姻・同居の実態に疑義がもたれた」と記載された事例は、平成26年から令和6年までの配偶者が日本人の類型(以下「A類型」といいます)で13件あり、そのすべてが不許可です。
  • 発覚の端緒も大きく効いています。A類型の許可事例59件のうち44件が自ら入管に出頭した事例である一方、不許可事例56件のうち30件は警察に逮捕された事例です。
  • 実刑判決を受けた事例は、婚姻期間が10年を超えていても不許可となっています。他方、令和6年後半分の事例集では、覚醒剤取締法違反で実刑を受けた方に、改正法の「ただし書」に基づいて許可が出た事例が現れました。
  • 薬物や偽造文書に関わる罪名では、執行猶予が付いても退去強制事由が残ります。したがって刑事段階では、執行猶予ではなく不起訴処分を目標に据える必要があります。

日本人と結婚していれば在留特別許可は得られるのか

結論として、得られる場合が多い類型ではありますが、保証はありません。現行の在留特別許可ガイドライン(令和6年3月改定・同年6月10日運用開始)は、日本人と法的に婚姻し、偽装婚でなく、相当期間の共同生活と相互の扶助があり、夫婦間に子があるなど婚姻が安定かつ成熟していることを「特に考慮する積極要素」としています(ガイドライン第2の2(1))。日本人の実子であることや、日本人の未成年実子を相当期間同居して監護養育していることも同じ位置づけです。

もっとも、ガイドラインは第3において、積極要素が消極要素を「明らかに上回る」場合に許可の方向で検討するという枠組みを採り、注4で「特に考慮する積極要素」があれば必ず許可されるものではなく、「特に考慮する消極要素」があれば一切許可されないものでもないと明言しています。日本人配偶者の存在は、天秤の一方に置かれる重い錘ではあっても、天秤そのものを止めるものではないのです。

事例集の数字がそれを裏付けています。平成26年から令和6年までの各年の事例集を通じ、A類型の許可事例は59件(うち令和6年後半分の改正法第50条第1項ただし書該当の許可1件を含みます)、不許可事例は56件です。日本人配偶者がいる方だけを集めた集団の中で、なお半分近くが不許可になっている。この事実から出発する必要があります。

婚姻の実態に疑義があるとどうなるか

この類型で最も重い分水嶺です。事例集の特記事項欄に「婚姻・同居の実態に疑義がもたれたもの」「婚姻の実態がないもの」「婚姻・同居の実態が認められなかったもの」と記載された事例は、A類型で13件あり、その13件はすべて不許可です。逆に、許可事例59件の中に、この記載がある事例は1件もありません。

具体的には、平成26年分のA類型不許可第2事例(売春従事・警察逮捕・在日約2年10月・婚姻約1年2月・被退去強制歴1回)、平成27年分の同不許可第1事例(出頭申告・不法残留・在日約13年9月・婚姻約1年10月)、平成28年分の同不許可第1事例(出頭申告・在日約3年4月・婚姻約7月・技能実習先からの逃亡)、平成29年分の同不許可第1事例(出頭申告・在日約3年2月・婚姻約2年1月)、令和2年分の同不許可第1事例(婚姻の実態がないもの・在日約4年7月・婚姻約6月)、令和3年分の同不許可第1事例(婚姻・同居の実態が認められなかったもの・在日約2年8月・婚姻約2年1月)などが挙げられます。刑事処分が一切なく、出頭申告により発覚したという最も有利な条件が揃っていても、同居の実態を疑われた瞬間に結果が反転していることに注意が必要です。

平成17年から平成19年の旧公表事例では、この点がより詳細に記載されています。平成17年分の不許可第3事例では、日本人女性と婚姻し日本国籍の子まで生まれていたにもかかわらず、別居後に同居していると虚偽の申立てをしたことが指摘され、監護の実績も認められないとして不許可となりました。平成18年分の不許可第14事例では、日本人配偶者の生活の本拠が供述と異なる実家にあったことから同居の事実が否定されています。平成18年分の不許可第21事例では、本人自身が自宅から離れた場所で週の大半を泊り込んで稼働していたことを認めています。

つまり、審査は「婚姻届が出ているか」ではなく「夫婦としての生活が実際にあるか」を見ています。単身赴任・介護・入院・仕事の都合等、合理的な理由により別居している場合は、その理由を客観的な資料で説明できる状態にしておくことが不可欠です。旧事例では「別居に合理的理由なし」という記載が繰り返し登場しており、別居それ自体ではなく、説明の欠落が決定的に働いていることが読み取れます。

婚姻期間の長短はどう評価されるのか

婚姻期間は重要ですが、機械的な足切り線として働いてはいません。

短い側から見ます。令和6年前半分のA類型許可第4事例は、婚姻期間が約3月、在日約8年2月、違反期間約7年3月、未成年の子1人という事案で「日本人の配偶者等(1年)」の許可となりました。令和6年後半分の同許可第2事例は、婚姻期間わずか約2月、在日約20年10月、違反期間約10年3月、警察に逮捕され入管法違反(不法残留)で懲役2年6月・執行猶予4年の判決を受けた事案でありながら、やはり「日本人の配偶者等(1年)」の許可を得ています(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。婚姻期間の短さと不法在留期間の長さという二つの消極的事情を抱えていても、許可に至る場合があるということです。

これと対照的なのが、身柄を拘束されている間に婚姻が成立した事例です。平成26年分のA類型不許可第3事例では、船舶による密航で入国し、勾留中(身柄を拘束される手続の中)に婚姻が成立したことが指摘されて不許可となりました。平成28年分の同不許可第4事例も、偽造在留カードをアルバイト先に提示して逮捕された後に婚姻が成立した事案です。婚姻それ自体は同じでも、退去強制手続を回避する目的で成立したのではないかという疑いを招く経緯があるかどうかで、評価は大きく変わります。

長い側では、在留期間更新許可申請を失念していた類型が注目されます。平成28年分のA類型許可第5事例は、在日約15年、違反期間約1年、婚姻約16年、未成年の子3人という事案で、更新申請を失念したものとされ、通常の1年ではなく「日本人の配偶者等(3年)」の許可が出ています。平成29年分の同許可第4事例も、在日約6年11月、違反期間約7月、婚姻約6年11月、未成年の子1人で、更新申請の失念により「日本人の配偶者等(3年)」の許可です。婚姻期間が長く違反期間が短い、しかも違反の原因が手続の失念にとどまるという構造は、事実上、正規在留を継続していたのと同等に評価されています。

なお、令和6年3月改定のガイドラインは、不法在留期間の長期化を明示的に消極要素と位置づけました(ガイドライン第2の5)。従前は積極にも消極にもなり得るとされていた点が変わっていますので、違反期間が長期にわたる事案では、その期間中に築いた家族関係・地域社会との関係を積極要素として別途主張していく必要があります。

夫婦間の子がいる場合はどう変わるのか

子の存在は、統計的にもはっきりと結果に現れています。A類型の許可事例59件のうち34件は子がある事例です。これに対し、不許可事例56件のうち子があると記載された事例は5件にとどまります。

日本国籍の子については、夫婦間の子でなくても評価されています。平成26年分のA類型許可第3事例は、現在の夫との間に子はないものの、前夫との間に生まれた日本国籍の実子を養育していた事案で許可されました。令和3年分の同許可第5事例は、不法就労助長で警察に逮捕され入管法違反により罰金30万円の判決を受けた事案でありながら、日本国籍を有する未成年の連れ子があることが記載され、許可されています。妊娠中の段階でも考慮されており、令和2年分の同許可第3事例は在日約1年4月・婚姻約6月・夫婦間の子を妊娠中という事案での許可です。

令和6年3月改定のガイドラインは、「本邦で家族とともに生活をするという子の利益の保護の必要性」を積極要素として明示しました。これは参議院附帯決議14項を踏まえた改定であり、子の利益を独立の考慮事項として主張する法的な足場が明文化されたものと理解できます。日本国籍の子が日本の小学校・中学校に通っている事案では、就学状況そのものを積極要素として立証すべきです。

出頭申告と逮捕・摘発で結果は変わるのか

変わります。A類型の許可事例59件のうち44件は、自ら地方出入国在留管理官署に出頭した事例です。摘発が8件、警察逮捕が7件にとどまります。他方、不許可事例56件では、警察逮捕が30件と過半を占め、出頭申告は18件です。

現行ガイドラインは、不法滞在を申告するため自ら出頭したことを積極要素として掲げています(ガイドライン第2の9)。逮捕や摘発によって発覚した場合、この積極要素を得られないだけでなく、通常は刑事事件が併走することになり、刑事処分という別個の消極要素が加わります。もっとも、逮捕により発覚した事案でも許可された例は現に存在します。先に述べた令和6年後半分の許可第2事例、令和6年前半分の許可第3事例(警察逮捕・不法残留・入管法違反で懲役1年・執行猶予3年)はいずれもそれに当たります。逮捕されてしまった時点で結論が決まるわけではありません。

偽装結婚を疑われた場合はどうなるのか

この類型では最も回復が難しい消極要素です。ガイドラインは、日本人との婚姻を積極要素とする際に「偽装婚を除く」と明記しています。そして、婚姻届が虚偽であるとして電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪で有罪判決を受けた事例は、事例集でも一様に不許可です。令和元年分のA類型不許可第3事例(電磁的公正証書原本不実記録・同供用により懲役2年・執行猶予3年)、令和2年分の同不許可第3事例(偽装結婚であることが判明して在留資格を取り消され、逮捕後に別の日本人と婚姻したもの)、令和6年前半分の同不許可第1事例(同罪により懲役1年6月の実刑。婚姻約7年・未成年の子3人という家族関係がありながら不許可)がそれです。

この罪は刑法上の文書偽造等に関する罪に位置づけられ、令和5年改正入管法第50条第1項ただし書が適用され得る類型でもあります。すなわち、在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる「特別の事情」がある場合に限って許可される枠に入ります。したがって、この点は刑事段階で徹底的に争うべき論点です。婚姻の動機に在留資格の取得という要素が含まれていたことと、婚姻意思が全く存在しなかったこととは、法的に別の問題であり、後者が認定されない限り本罪は成立しません。

被退去強制歴があるとどうなるのか

A類型の不許可事例56件のうち15件に、被退去強制歴があると記載されています。他方、許可事例59件の中に被退去強制歴が記載された事例は1件もありません。回数が重なるほど評価は厳しく、平成26年分のA類型不許可第1事例は、出頭申告・不法残留・在日約10年5月・婚姻約11月・刑事処分なしという構成でありながら、被退去強制歴3回のみを理由に不許可とされています。平成29年分の同不許可第4事例は被退去強制歴3回、同不許可第5事例は送還後に偽名で不法入国し過去の送還歴を秘匿したまま出頭したという事案です。

過去の在留特別許可歴も同様に働きます。令和6年前半分のA類型不許可第2事例、令和6年後半分の同不許可第1事例には、いずれも在留特別許可歴があると記載されています。一度与えられた機会をどう用いたかが問われる構造です。

もっとも、旧事例では被退去強制歴があっても許可された例が確認できます。平成17年分の許可第8事例は、他人名義旅券で不法入国して退去強制を受けた後、自己名義の旅券で再入国し不法残留した事案ですが、同居実態が確認され婚姻の真摯性が認められて「日本人の配偶者等(1年)」の許可となりました。回数と、その後の生活実態の積み上げのバランスで判断されているものと解されます。

刑事処分の内容で結果はどこまで変わるのか

まず実刑です。A類型で拘禁刑の実刑判決を受けた事例は、いずれも不許可となっています。平成26年分の不許可第4事例(強盗致傷・懲役3年)、平成30年分の同不許可第4事例(覚せい剤取締法違反・懲役1年2月)、令和元年分の同不許可第2事例(覚醒剤取締法違反・懲役1年6月)、令和5年分の同不許可第3事例(覚醒剤取締法違反・懲役1年6月の実刑)と同不許可第4事例(常習累犯窃盗・懲役2年6月の実刑)、令和6年前半分の同不許可第3事例(強制わいせつ・懲役4年6月の実刑)などです。婚姻期間が18年、19年に及ぶ事案(令和5年分の不許可第3事例・第4事例)でも結論は変わっていません。

次に執行猶予です。執行猶予が付いた事案は、罪名によって結果が分かれます。入管法違反(不法残留)のみで執行猶予を受けた事案は、令和6年前半分の許可第3事例、令和6年後半分の許可第2事例のように許可された例があります。他方、薬物法令違反で執行猶予を受けた事案は、平成27年分の不許可第4事例(覚せい剤取締法及び入管法違反・懲役2年6月・執行猶予3年)、平成28年分の同不許可第5事例(大麻取締法違反・懲役8月・執行猶予3年)、令和3年分の同不許可第3事例(麻薬及び向精神薬取締法違反・懲役1年6月・執行猶予3年)、令和6年後半分の同不許可第3事例(大麻取締法違反・懲役6月・執行猶予3年)と、不許可が並びます。

これは条文の構造から説明できます。入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としますが、刑の全部の執行猶予を受けた者は除外されます。ところが、同号チは薬物関係法令違反により有罪の判決を受けた者を退去強制事由としており、こちらには刑期や執行猶予による除外がありません。したがって、薬物事件では執行猶予判決を得ても退去強制事由は残ります。「執行猶予が付いたから日本に居られる」という理解は、この号ごとの構造の違いを見落としています。

罰金・略式命令の事案では、許可例と不許可例が混在しています。令和2年分の許可第4事例は売春防止法違反(勧誘)により罰金5万円の略式命令を受けながら「日本人の配偶者等(1年)」の許可を得ています(在日約23年7月・婚姻約23年5月・成年の子1人)。令和4年分の許可第5事例は入管法違反(不法就労助長)により罰金20万円の略式命令を受けた事案での許可です。他方、令和5年分の不許可第5事例は、同じ不法就労助長で罰金30万円の略式命令、在日約29年9月・婚姻約30年3月という長期の関係がありながら不許可です。同年の許可第3事例が、業として外国人の不法就労のあっせんをしたと記載されつつ刑事処分がなく許可されていることと対比すると、有罪処分の有無が結果を分けた一因と読み取れます。

だからこそ、刑事段階の目標設定が決定的です。執行猶予の獲得ではなく、不起訴処分の獲得を最優先目標に据える必要があります。不起訴となれば、有罪判決を前提とする退去強制事由(薬物の4号チ、拘禁刑実刑の4号リ、文書偽造等の4号ハなど)の該当性そのものが生じません。不法残留・不法入国という違反態様が残る場合でも、消極要素として積み上がる刑事処分を一つ減らせることの意味は大きいのです。逆に言えば、起訴後に量刑だけを争う段階に入ってからでは、選べる手が限られてしまいます。

令和6年の法改正で実刑の事案はどうなったのか

令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)は、在留特別許可に申請手続を新設し(入管法50条1項)、考慮事情を法律上明示しました(同条5項)。同時に、無期又は1年を超える拘禁刑の実刑に処せられた者などについては、「在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情」がある場合に限り許可されるという、ただし書の枠が置かれました。

注目すべきは、令和6年後半分の事例集で、このただし書該当の許可事例が独立の類型として掲載されたことです。A類型のただし書該当許可事例は、覚醒剤取締法違反により懲役1年2月の実刑判決を受けた方について、本人の在留資格が「永住者」であり、在日約22年4月、婚姻期間約24年5月、未成年の子1人という事情の下で、「定住者(1年)」の許可がなされたものです。従前であれば実刑一つで結論が定まっていた場面において、永住者としての生活基盤、20年を超える婚姻関係、未成年の子の監護という要素の複合が「特別の事情」として評価された実例と解されます。

もっとも、これは1件の事例です。同じ令和6年後半分のA類型では、傷害・道路交通法違反により懲役2年2月の実刑を受け、配偶者及び子と別居し在留特別許可歴もあった事案が不許可となっています。実刑があれば必ずただし書で救われるということではなく、その事案において人道上の配慮の必要性をどこまで具体的に立証できるかの問題です。

この類型で許可を得るために何を準備すべきか

以下は一般的な解説であり、個別の事案における助言ではありません。実際に何をどこまで提出すべきかは事案によって大きく異なります。もっとも、事例集を通読すると、審査が繰り返し見ている事項ははっきりしています。

  • 同居の実態を示す資料:住民票の写しに加え、同一住所での公共料金の領収書、賃貸借契約書、郵便物、共同で撮影した日常の写真(旅行の記念写真だけでなく生活の場面のもの)、近隣の方の陳述書。事例集で不許可の決め手となっている「同居実態への疑義」に、正面から答える資料群です。
  • 家計の一体性を示す資料:生活費の送金・引落しの履歴、共同名義又は相互に用いている口座の記録、家族名義の保険の加入状況、扶養の実態を示す資料。ガイドラインが求める「相互に扶助している」ことの立証です。
  • 別居がある場合の合理的説明:単身赴任の辞令、入院・介護の記録、就労先の所在地の資料等。別居の事実を隠すのではなく、理由を証拠で示すことが重要です。
  • 婚姻の経緯を示す資料:交際期間中の連絡記録、双方の親族との交流の記録、結婚式・親族の集まりの写真。旧事例では「配偶者の親族も婚姻を承知している」ことが婚姻の信憑性の認定材料として挙げられています。
  • 子に関する資料:戸籍・認知に関する書類、母子健康手帳、在学証明書、通知表、担任の先生や学校関係者の陳述、日本語での学習状況を示す資料。日本国籍の子については、その国籍と監護養育の実態の双方を示します。
  • 納税・社会保険の記録:住民税の課税・納税証明書、国民健康保険料や年金保険料の納付状況。ガイドラインは税納付状況を考慮事項に挙げています。滞納がある場合は、可能な範囲で解消し、その経緯を説明します。
  • 地域社会との関係:勤務先の在職証明・上司の陳述、町内会や自治会での活動、ボランティア、子の学校行事への関与等。
  • 本国事情・帰国困難性:帰国した場合に家族が受ける具体的な不利益、本国での医療・就学の可否等。
  • 刑事事件が併走している場合の資料:不起訴処分告知書、示談書、被害弁償の受領書、贖罪寄付の受領証明、反省文、身元引受書。刑事段階で作ったこれらの資料が、そのまま入管手続の積極要素の立証資料になります。

加えて、手続の順序を意識することが必要です。退去強制手続は、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査(認定)、特別審理官の口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出という段階を踏みます。在留特別許可は最後の異議申出段階の判断ですが、そこで初めて動いたのでは遅い場面が多くあります。違反審査の段階から、退去強制事由への該当性そのものを検討し、積極要素を裏付ける資料を提出しておくべきです。ガイドライン注4は、退去強制令書発付後の事情変更は原則として考慮されないとしています。発付前に何を出せたかが、そのまま結果を左右します。

公表事例に自分と同じ事案が見当たらないとき

最後に、必ず申し上げておきたいことがあります。事例集は、各年20件前後を抜粋して掲載しているにとどまり、実際の許可件数のごく一部です。網羅的なものではありません。ですから、公表事例の中に自分と同じ類型の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。

当事務所が担当した事案の中には、入管庁の公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でありながら、在留特別許可を獲得したものがあります。公表事例の傾向は、検討の出発点であって結論ではありません。他方、傾向に反する結果を得るには、理論構成と立証の設計が必要です。何もしなくても覆るという意味ではないことを、あわせて申し添えます。

また、事例集は逆向きにも使えます。過去に同種の事情で許可された実績があるのに、本件についてのみ不許可とすることは、合理的な理由なく異なる取扱いをするものであって、法の下の平等を定める憲法14条1項に反すると主張する余地があります。行政自身が「許可相当」と判断した先例だからこそ、この主張には重みがあります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野として運営しております。

この類型に近接する解決事例を、いくつかご紹介します。

観光目的で来日された相談者が、日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案がありました。婚姻と認知が未了で、当局から一旦は受理されなかったところ、憲法的観点から当局と交渉して婚姻と認知を成立させ、入管法違反の刑事裁判を意識した被告人質問・証人尋問を実施しました。国籍国発行の公的書類がほとんど存在しないという困難な状況の下でも有利な証拠を収集し、入管当局の過去の許可事例を分析することで、1回の手続で在留特別許可を獲得しています。本記事で述べた「婚姻の実態」と「日本国籍の子」の立証を、刑事手続と並行して組み立てた事案です。

不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に直面された女性を救済する裁判では、「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務を問い直すべく、責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を係争中です。この事件では、入管庁の公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型でありながら、在留特別許可を獲得しております。

刑事事件の側では、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者につき、徹底した証拠分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した事例があります。特殊詐欺の受け子で複数回再逮捕された事案で、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議により全件不起訴処分を獲得した事例もございます。薬物事件は執行猶予でも退去強制事由が残る類型であり、無罪又は不起訴を目指す意味が最も大きい分野です。

当事務所の弁護方針として、次の点を申し上げます。

第1に、不起訴目標主義です。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制となります。起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標に据え、そこから逆算して初動を組み立てます。

第2に、松村弁護士の全工程直接対応です。接見の初動から公判の結審まで松村弁護士が直接担当し、事務員や若手弁護士による代行は行いません。

第3に、外国人事件に精通した中国語専属通訳の常駐です。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者本人のために動く立場の通訳が同席します。供述調書の訳出のわずかなニュアンスが、後の公判と入管手続の双方を左右します。

第4に、提携行政書士による在留資格サポートです。刑事手続の終了後、在留資格の更新・変更手続までワンストップで対応いたします。

結語

日本人配偶者がいる類型は、在留特別許可の可能性が最も開かれた類型です。しかし、その可能性を現実のものにするのは、婚姻の実態を客観的な資料で示す準備と、刑事段階から入管手続を見通した初動対応です。事例集を読む限り、結果を分けているのは運ではなく、早い段階で何を整えたかです。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

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ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

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