舟渡国際法律事務所

平成18年の在留特別許可事例49件(許可24件・不許可25件)と第1次ガイドライン策定の意味

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平成18年の在留特別許可事例49件(許可24件・不許可25件)と第1次ガイドライン策定の意味

平成18年の在留特別許可事例49件(許可24件・不許可25件)と第1次ガイドライン策定の意味

2026/08/06

平成18年10月、法務省入国管理局は在留特別許可のガイドラインを初めて策定しました。それまで公表されていたのは事例だけで、積極要素・消極要素という形で判断の枠組みが文書として示されたことはありませんでした。同じ年に公表された事例は、許可25件(原典は事例7を欠番とするため実際の掲載は24件)と不許可25件です。基準が明文化される直前と直後の運用が同じ年に重なっているという点で、この年の事例は独特の位置を占めます。本記事では平成18年の49件を1件ずつ辿り、第1次ガイドラインが何を明文にし、その後の改定で何が変わったのかを整理します。

本記事の要点

  • 平成18年10月に第1次ガイドラインが策定され、それまで事例から推し量るしかなかった積極要素・消極要素が初めて文書で示されました。
  • 平成18年の許可事例で目を引くのは、難病の治療を必要とする子や本人の存在です。子の難病、父の脳出血後の後遺症など、医療上の必要性が家族全体の許可を導いています。
  • 摘発や逮捕の後に婚姻が成立した事案でも、それ以前からの同居の積み上げが確認されれば許可されています。逆に、不許可事例では「別居」「同居の事実なし」の認定が繰り返されます。
  • 不許可事例には、自ら経営する店で外国人を不法就労させた事案や売春に関与した事案が並びます。もっとも、この類型でも在留特別許可を得られた実例があります。
  • 当時は昭和47年や昭和38年頃からの超長期の不法在留がむしろ定着として評価されていましたが、令和6年3月改定ガイドラインは不法在留期間の長期化を明示的な消極要素としました。

第1次ガイドラインは何を変えたのか

第1次ガイドラインは、第3次出入国管理基本計画(平成17年3月)と規制改革・民間開放推進3か年計画(平成18年3月31日閣議決定)に基づいて策定されました。内容は、在留特別許可の判断における積極要素と消極要素を例示するものです。

意義は2点あります。第1に、判断の枠組みが行政の内部運用から外部に開かれた文書になったことです。それまでは、事例を集めて基準を推測するほかありませんでした。第2に、例示という形式によって、申請者側が主張を組み立てる際の共通の言語が用意されたことです。「本件は積極要素のうち家族関係に当たる」という形で、行政と同じ枠組みの上で議論できるようになりました。

もっとも、限界も明らかです。ガイドラインはあくまで例示であり、法規ではありません。積極要素があればそれだけで許可されるわけではなく、消極要素があれば一切許可されないわけでもないという注記は、当初から置かれています。その後、平成21年7月の第2次改定で、本邦の小中学校で相当期間教育を受けた子等を特に考慮する旨が明示され、「特に考慮する積極要素」と「その他の積極要素」の区別が導入されました。さらに令和6年3月の第3次改定で、改正法50条5項の考慮事情に沿った体系的な整理がなされ、不法在留期間の長期化が消極要素と明示される一方、子の利益の保護の必要性が積極要素として明示されました。

平成18年に在留特別許可がされた24件

原典は事例7を欠番とし、事例6の次を事例8としています。したがって番号は25まで振られていますが、実際の掲載は24件です。

医療上の必要性が家族全体の許可を導いたもの

第2事例 「特定活動(外交官家事使用人)1年」で入国後、稼働を続けて不法残留となった母(33歳)と6歳の子の事案。母は本国の同国人男性との離婚手続中で日本人男性との婚姻も未了でしたが、子が難病で入院中であり本国の医療事情から本邦での治療継続が必要とされ、母子とも「定住者(1年)」。

第3事例 平成2年と平成5年に入国して不法残留となった父(42歳)・母(38歳)と平成12年に生まれた子(6歳)の事案。父が脳出血を起こし緊急手術後の後遺症を抱え、本国の医療事情から本邦での治療継続が必要とされ出頭申告し、出頭後に婚姻届を提出して全員に「定住者(1年)」。

第24事例 平成7年に母が子を伴い入国して不法残留、父は寄港地上陸許可の後に不法残留となり、同居して第2子・第3子が生まれた家族5名の事案。一家全員で出頭申告し、第3子が難病で3度の手術を受け本邦での治療継続が必要とされ、全員に「定住者(1年)」。

この3件は、いずれも婚姻の形式や在留期間ではなく、医療上の必要性が結論を導いています。現行ガイドライン第2の7(1)の「難病等により本邦での治療を必要としていること、又はそうした治療を要する親族の看護」に正面から当たる類型で、この部分の運用は現在も維持されています。診断書・治療計画・本国の医療体制に関する客観的資料をどれだけ具体的に揃えられるかが実務上の鍵になります。

摘発・逮捕の後に婚姻が成立したもの

第1事例 平成12年に稼働目的で不法入国した41歳女性が、飲食店等で稼働中に知り合った日本人男性と平成17年から同居して婚姻し、平成18年に不法入国で逮捕され起訴猶予となった事案。過去に1回の退去強制歴がありながら、同居の事実と夫の親族が婚姻を承知していること等から婚姻の信憑性が認められ「日本人の配偶者等(1年)」。

第5事例 平成元年に他人名義の旅券で不法入国した41歳男性が、稼働先の日本人女性と交際して平成10年の子の出生に伴い当該女性の家族と同居し、平成17年に不法入国の現行犯で逮捕された後に婚姻届を提出した事案。妻及び妻の両親との同居の事実と、子が胎児認知されていることから「日本人の配偶者等(1年)」。

第18事例 平成13年に稼働目的で不法入国した32歳男性が、同僚の日本人女性と同居し、平成17年に不法入国で逮捕されて懲役2年6月・執行猶予4年となり、その後婚姻が成立した事案(懲役は当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。婚姻の信憑性が認められ「日本人の配偶者等(1年)」。

第4事例 平成7年に親族訪問で入国後に不法残留となった29歳女性が、「定住者」の同国人男性と交際・同居し、平成18年に摘発された後に婚姻が成立した事案。同居の事実と婚姻の信憑性が認められ「定住者(1年)」。

第11事例 平成12年の入国後に稼働目的で不法残留となった34歳男性が、日系三世で正規在留の同国人女性と同居して平成17年に婚姻した後、入管法違反で逮捕され起訴猶予となった事案で「定住者(1年)」。

第17事例 平成12年の入国後に不法残留となった39歳男性が、「永住者」の同国人女性と平成17年に同居・婚姻した後、入管法違反で逮捕され起訴猶予となった事案で「永住者の配偶者等(1年)」。

第19事例 「留学1年」で入国後に不法残留となった26歳男性が、平成16年から「定住者」の日系三世女性と同居して平成17年に子が生まれ、平成18年に逮捕され起訴猶予となった後に婚姻した事案。書類の不備により届出が遅れたと認定され、妻の親族も婚姻を承知していたことから「定住者(1年)」。

第20事例 「興行6月」で入国後に稼働目的で不法残留となった27歳女性が、「永住者」の男性と平成15年から同居して平成17年に婚姻したところ不法残留の容疑で摘発された事案。同居の事実と婚姻の信憑性が認められ「永住者の配偶者等(1年)」。

第23事例 平成14年に稼働目的で不法入国した母(22歳)が、本国の恋人との子を出産した後ホステスとして稼働し、稼働先の日本人男性と平成16年から子連れで同居して平成18年の摘発後に婚姻届を提出した事案。2年以上の同居歴から婚姻の信憑性が認められ、母は「日本人の配偶者等(1年)」、3歳の子は「定住者(1年)」。

第25事例 平成12年に稼働目的で不法入国した34歳女性が、「永住者」の日系一世男性と平成16年から同居して平成17年に婚姻した後に出頭申告した事案で「永住者の配偶者等(1年)」。

この群は、平成18年の許可事例の中心を占めます。共通しているのは、婚姻届の提出が発覚の後であっても、それ以前に相当期間の同居が積み上がっており、配偶者の親族もこれを承知していたという点です。第19事例で「書類の不備により届出が遅れた」と明示的に認定されていることは、届出の遅れそれ自体が不利益に直結するわけではないことを示します。もっとも、これらの事案では逆に、発覚後に慌てて婚姻届を出しただけの事案は救われないことも読み取れます。

日本人の実子を監護養育しているもの

第8事例 昭和63年の入国後に不法残留となった母(44歳)が、日本人男性と交際して平成元年に子を出産した母子の事案。同居はありませんでしたが生活費の支援を受け、平成13年に子が認知され平成16年に出頭申告し、母が稼働して17歳の子も義務教育終了後に稼働して生計を支えていました。母は「定住者(1年)」、子は「日本人の配偶者等(1年)」。

第12事例 平成15年の入国後に不法残留となった26歳女性が、ホステスとしての稼働先の日本人男性と交際して子を出産し、平成17年に出頭申告して婚姻が成立した事案。子は胎児認知により日本国籍を取得しており「日本人の配偶者等(1年)」。

第14事例 「日本人の配偶者6月」で入国した後、日本人夫と離婚して不法残留となった母(34歳)が、別の日本人男性と交際して平成12年に子をもうけ(認知はされたものの婚姻には至らず)、平成17年に出頭申告した事案。子の監護養育が認められ、母は「定住者(1年)」、6歳の子は「日本人の配偶者等(1年)」。

第15事例 平成8年に寄港地上陸許可の後に不法残留となった37歳女性が、稼働先の日本人男性と同居して平成13年に子が生まれ平成15年に婚姻した事案。子は認知により日本国籍を取得しており「日本人の配偶者等(1年)」。

第22事例 平成15年に稼働目的で不法入国した25歳女性が、日本人男性と交際して子をもうけ(胎児認知により日本国籍を取得)、婚姻には至らないまま生活費の支弁を受けて子を監護養育し、平成17年に出頭申告した事案で「定住者(1年)」。

この群では、婚姻の有無を問わず、日本国籍の子を現に監護養育していることが決定的です。第8事例のように同居がなく生活費の支援にとどまる場合でも、認知と扶助の事実が積み上がれば足りるとされています。現行ガイドライン第2の2(1)に対応し、令和6年改定で子の利益の保護の必要性が明示された後は、より正面から主張できる論点です。

家族全体の定着・子の就学を理由とするもの

第16事例 平成2年に父母が入国して不法残留となり、平成3年に第1子、平成5年に第2子が生まれた家族4名の事案。入国以来家族として生活し、第1子が義務教育を修了して高校1年、第2子が中学校1年に在学していたことから、全員に「定住者(1年)」。

第6事例 平成4年に「留学」で在留中の父を訪問して入国後に不法残留となった41歳男性が、本邦で小中高を卒業して大学に在学し、平成17年に出頭申告した事案。学費・滞在費の支弁能力が認められ「留学(1年)」。

子が本邦の教育機関で相当期間教育を受けていることは、現行ガイドライン第2の2(3)に対応します。就学の実績と、本国での教育継続が困難な事情を具体的に示すことが要点です。

特殊な経緯・高齢・長期在留

第9事例 過去に不法残留により退去強制となった29歳女性が、本国で氏名を変更して平成17年に初回入国と偽って入国し、前回の在留中に知り合った日本人男性と婚姻した事案。変更申請の際に上陸拒否期間中の入国を自ら申告して上陸許可を取り消されましたが、同居の事実が確認され婚姻の信憑性が認められ「日本人の配偶者等(1年)」。自ら申告したことが評価された点が重要です。

第10事例 平成8年に本邦で出生した後、在留資格取得の手続をせず不法残留となった9歳男児の事案。実母に養育の意思がなく乳児院に預けられ、平成10年から日本人夫婦に養育されて出頭申告し、実父母とも所在不明で、養育してきた日本人夫婦との養子縁組が成立しており「定住者(1年)」。

第13事例 昭和47年に不法入国してその後現在まで本邦で生活してきた65歳男性が、平成17年に出頭申告した事案。相当期間本邦で生活し本国に身寄りがなく、生計の安定が認められ「定住者(1年)」。

第21事例 昭和38年頃に不法入国したとして平成17年に出頭申告した68歳男性が、既に死亡した内縁の妻との実子と称する日本人と同居していた事案。親子関係の客観的な証拠はありませんでしたが、当該実子が引き続き面倒を見るとしたことから「定住者(1年)」。

第13事例と第21事例は、40年以上に及ぶ不法在留それ自体が本邦への定着として評価された例です。現行運用では、不法在留期間の長期化は消極要素と明示されており、この2件をそのまま現在の見通しの根拠とすることはできません。もっとも、高齢で本国に身寄りがないこと、生計を支える親族が本邦にいることは、現在も人道上の配慮として主張し得る事情です。

平成18年に在留特別許可がされなかった25件

同居・婚姻の実体がないもの

第3事例 「就学1年」で入国して「留学」に変更したものの入学後まもなく退学して不法残留となった26歳男性が、平成17年に日本人女性と婚姻して入管法違反で起訴猶予となったものの、婚姻後も同居せず正規在留の同国人の叔母と同居しており、別居に合理的な理由がなく夫婦の実態がないとされた事案。

第13事例 「技能1年」で入国してコックとして稼働していた41歳男性が、稼働先の倒産により不法残留となり、日本人女性と婚姻して入管法違反で起訴猶予となったものの、過去の退去強制歴が判明し当該女性が離婚を考えていた事案。

第14事例 平成9年に稼働目的で不法入国した33歳女性が、平成17年に日本人男性と婚姻して出頭申告し起訴猶予となったものの、当該男性の生活の本拠が供述と異なり実家にあって同居の事実がないとされた事案。

第16事例 「興行3月」で入国後に稼働目的で不法残留となった30歳女性が、日本人男性と同居して平成17年に婚姻し出頭申告したものの、調査で別居が判明し合理的な説明がなく婚姻の信憑性に疑義があるとされた事案。

第21事例 「短期滞在15日」で入国後に不法残留となった40歳女性が、ホステスとして稼働し平成16年に日本人男性と婚姻して出頭申告したものの、調査で別居が判明し、本人も自宅から離れた場所で週の大半を泊まり込みで稼働していると認めた事案。

第24事例 平成13年に日系人と偽って不法入国し、更新申請の不許可後に所在不明となった19歳男性が、平成18年に逮捕され起訴猶予となった後、同国人の永住者との婚姻が成立したものの、夫婦間の申立てに著しい齟齬があり相互の協力扶助も認められなかった事案。

第4事例 平成14年に稼働目的で不法入国した27歳男性が、平成16年から日本人女性と同居して他人の身分事項で婚姻し、平成17年に日本人の子が生まれたものの、女性への暴力により別居し、平成18年に当該女性への傷害で逮捕されて起訴猶予となった事案。配偶者暴力防止法に基づく保護命令が出され、逮捕後に離婚が成立して親権も当該女性が有していました。

許可群と並べると、線は明快です。婚姻届の有無ではなく、同居と扶助の実体があるかどうかが分水嶺です。許可群の第1事例・第5事例・第23事例では発覚後に婚姻届が出されていても許可され、不許可群の第16事例・第21事例では婚姻届が先にあっても別居が判明して不許可となっています。第24事例のように夫婦間の説明に著しい食い違いがある場合、その食い違い自体が決定的な不利益になります。

婚姻関係が破綻した後の犯罪

第6事例 平成12年に入国して日本人男性と婚姻し「日本人の配偶者等」となった47歳女性が、平成14年に窃盗・暴行で懲役2年・執行猶予4年、猶予期間中の平成16年に不法残留と窃盗で懲役1年となり執行猶予を取り消されて服役した事案。日本人男性とは約4か月しか同居せず、刑事裁判でも婚姻の実体の喪失が指摘され、服役中の面会もありませんでした。

第9事例 本国で婚姻した日本人男性との同居で「日本人の配偶者等1年」で入国した37歳女性が、平成14年に離婚して別の日本人男性と婚姻し、平成18年に売春防止法違反で懲役6月・執行猶予3年となった事案。現夫と直近2年間同居せず合理的な理由もありませんでした。

第12事例 平成16年に不法残留となったものの入国前から日本人女性と婚姻していたことの信憑性が認められて在留特別許可を得た26歳男性が、平成17年に麻薬特例法違反で懲役1年1月となった事案。逮捕前に妻子と別居し他の日本人女性と同棲して夫婦関係が実質的に破綻していました。

第18事例 「短期滞在90日」で入国後に不法残留となり、平成16年に日本人女性と婚姻して在留特別許可を得た42歳男性が、平成18年に売春防止法違反で懲役1年6月・執行猶予3年となった事案。日本人女性とは既に別居が判明していました。

第19事例 平成10年に不法残留中に日本人男性と婚姻して在留特別許可を得た48歳女性が、離婚して再び不法残留となり退去強制された後、船舶で不法入国し不正に取得した日本の旅券で出入国を繰り返して平成16年に懲役2年となった事案。

この群は、一度在留特別許可を得た後に婚姻関係が破綻し、犯罪に至った事案です。過去の在留特別許可歴は積極要素ではなく、むしろ与えられた機会を活かさなかったという評価につながっています。第12事例のように薬物関係の事犯が加わると、現行法では入管法24条4号チにより執行猶予でも退去強制事由となります。

実刑を伴う重大事犯・薬物事犯

第2事例 平成4年に日系二世の父母と入国して日系三世として「定住者」となり小学校に編入した22歳男性が、14歳頃から覚醒剤取締法違反等で少年院への入退院を繰り返し、平成16年に覚醒剤取締法違反で懲役1年4月となった事案。覚醒剤使用の常習性が指摘されています。

第10事例 平成7年に入国して日系三世として「定住者」となった29歳男性が、強盗致傷・銃砲刀剣類所持等取締法違反・窃盗・覚醒剤取締法違反で懲役6年となった事案。日系二世の父と兄が在留していました。

第23事例 日系三世として「定住者3年」で入国した24歳男性が、工員等として稼働中の平成15年に強制わいせつ致傷で懲役2年となり服役した事案。逮捕前は日本人女性と同居していましたが、当該女性は身元引受を拒否していました。

第25事例 「就学6月」で入国して日本語学校に通学中の平成15年に、強盗致傷・強姦・窃盗で懲役4年となり服役した24歳女性の事案。判決後に日本人男性と婚姻届を提出したものの、在留状況が悪質で同居歴がなく、逮捕当時は同国人の恋人と同居していたことが判明しました。

第1事例 平成2年に入国後に不法残留となり、平成10年に日本人女性と婚姻して平成11年に「日本人の配偶者等」で在留特別許可を得た38歳男性が、平成13年に盗品等有償譲受・同処分あっせんで懲役2年6月・執行猶予4年となり別居も判明して更新不許可で不法残留となり、別の日本人女性と再婚して実子をもうけたものの平成15年に再び盗品等有償譲受で懲役2年4月となり服役し、平成17年に再婚した妻とも離婚した事案。

第8事例 「人文知識・国際業務」の父の扶養で「家族滞在1年」で入国して父母と同居していた22歳男性が、平成17年に窃盗・詐欺で懲役2年・執行猶予3年となった事案。

重大事犯の実刑に加え、家族関係が失われていることがこの群の共通点です。第2事例のように幼少期から本邦で育ち小学校に編入した経歴があっても、薬物の常習性が認定されると許可には結びついていません。現行運用でも、薬物法令違反は実刑・執行猶予いずれも強い消極要素です。

売春関係・不法就労助長

第5事例 平成7年に不法入国し、平成12年に日本人男性と婚姻して平成13年に「日本人の配偶者等」で在留特別許可を得た41歳女性が、経営するスナックで同国人女性に借金を負わせてホステス兼売春婦として稼働させ、平成17年に売春防止法違反と入管法違反(不法就労助長)で懲役2年6月・執行猶予4年となった事案。過去に2回の退去強制手続歴もありました。

第15事例 「就学1年」で入国して日本語学校・専門学校・大学に進学した27歳男性が、平成17年に「留学」で正規在留する同国人女性と婚姻した後、不正電磁的記録カードの所持で懲役1年・執行猶予3年となった事案。判決で「不合理な弁解を繰り返し反省の情が薄い」と指摘されています。

売春に自ら関与する行為と、他の外国人の不法就労に関わる行為は、現行ガイドライン第2の3(エ)・(イ)で明示的な消極要素とされています。第5事例は、自ら経営する店での不法就労助長と売春の双方が重なった、最も重い類型です。

資格外活動・在留資格該当性を欠くもの

第7事例 留学中の同国人夫との同居で「家族滞在1年」で入国した40歳女性が、平成16年6月から平成17年11月まで個室マッサージ店を経営し、平成17年12月に風俗営業適正化法違反で罰金30万円となった事案。専ら収入を伴う事業の運営に当たり、警察の指導後も継続していました。

第17事例 平成18年に「技能1年」で入国してコックとして稼働したものの報酬条件の相違により退職し、以後約半年間、本国の妻子への送金等の目的で別会社の青果物の仕分け・梱包・運搬に専従した34歳男性の事案。

第22事例 留学中の同国人夫との同居で「家族滞在2年」で入国した34歳女性が、生活費と本国の両親・子への送金のため平成16年から約1年8か月間マッサージ店で稼働し、報酬200万円を本国に送金した事案。専ら報酬を受ける活動に当たると認定されました。

第11事例 平成18年に「短期滞在90日」で入国した33歳女性が、日本語学校への入学を希望したものの受付期間が終了していたため稼働して不法残留となり摘発された事案。入学の手続を何ら承知せず、入学手続も行っていませんでした。

第20事例 「短期滞在15日」で入国後に不法残留となった69歳女性が、平成8年に出頭申告した後に所在不明となり、平成14年に不法残留で逮捕され起訴猶予となった事案。本国に実子があり、本邦在留を認めるべき理由が特に認められないとされました。

資格外活動の事案は、在留資格該当性を欠く活動に専従していたかどうかが判断の中心です。第7事例のように警察の指導を受けた後も継続していた場合、その継続それ自体が評価を悪化させています。第20事例は、一度出頭申告した後に所在不明となった経緯が重く見られた例で、現行運用における仮放免・監理措置中の条件違反の評価と通じるものがあります。

旧運用と現行運用はどこが違うのか

平成18年の事例と現行ガイドラインを対照すると、共通点と相違点がはっきり分かれます。

共通しているのは、医療上の必要性(許可群の第2事例・第3事例・第24事例)、日本国籍の子の監護養育(第8事例・第12事例・第14事例・第15事例・第22事例)、子の本邦での就学(第16事例)、養子縁組による家庭の形成(第10事例)を積極要素とし、同居・婚姻の実体の欠如、重大事犯、売春関与、不法就労助長、資格外活動を消極要素とする構造です。これらは現行ガイドラインの第2の2、第2の3、第2の7にほぼそのまま対応します。

最も大きな相違点は、不法在留期間の評価です。許可群の第13事例は昭和47年からの33年、第21事例は昭和38年頃からの42年に及ぶ不法在留であり、いずれも期間の長さが本邦への定着として肯定的に評価されています。これに対し令和6年3月改定ガイドラインは、不法に在留している期間が長いことを出入国在留管理秩序の侵害として消極的に評価する旨を明示し、期間の終期を出入国在留管理庁が不法滞在の事実を認知した時点としました。したがって、「40年住んでいるのだから許可されるはずだ」という主張の立て方は、現在では通りません。長期の在留は、その間に築いた家族関係・地域社会との関係・納税や地域ルールの遵守といった中身を証拠で示し、積極要素の側へ組み替えて初めて意味を持ちます。

もう1つの相違は、被退去強制歴の評価です。許可群の第1事例は1回の退去強制歴がありながら許可され、第9事例は上陸拒否期間中の入国でありながら自ら申告したことが評価されて許可されています。近年の事例集では、被退去強制歴(特に複数回)が不許可の主要な理由として繰り返し現れます。もっとも、第9事例が示す「自ら申告した」という要素は、現行ガイドライン第2の9の自主出頭の評価に連なるものであり、現在も重要です。

刑事段階で不起訴を獲得できていれば結果は変わったか

平成18年の許可事例では、起訴猶予すなわち不起訴となった方が目立ちます(第1事例・第11事例・第17事例・第19事例)。他方、不許可事例の多くは有罪判決を受けています。この対比は、刑事処分の内容が在留の可否に直結することを示しています。

現行法の構造は、より明確です。入管法24条4号リは「無期又は1年を超える拘禁刑に処せられた者」を退去強制事由としますが、全部執行猶予の場合は除かれます。他方、4号チに当たる薬物関係法令違反による有罪は、執行猶予でも退去強制事由となります。不許可群の第2事例(覚醒剤取締法違反)、第10事例(強盗致傷等と覚醒剤)、第12事例(麻薬特例法違反)は、現行法のもとでも同様に厳しい評価を受ける類型です。これらの事案は、刑事段階で不起訴処分を獲得できていれば、退去強制事由該当性そのものを生じさせずに済んだ可能性があります。ただし、実際にどこまで争えたかは証拠関係によるものであり、遡って断定することはできません。

したがって、弁護活動は起訴前の段階で不起訴処分を獲得することを最優先目標として組み立てる必要があります。執行猶予の獲得を最終目標に据えると、刑事裁判では成功したように見えて在留の場面で失うものが大きくなりかねません。

とりわけ不許可群の第5事例のような不法就労助長の類型では、経営者が従業員の在留資格や就労可能性をどこまで認識していたかが核心になります。刑事段階で故意・過失を徹底して争っておくことが、後の入管手続における主張の基礎を成します。この点、入管実務では退去強制事由の判断に故意・過失は要件でないとする運用が長年踏襲されてきました。当事務所は、不法就労助長の事案において、責任主義の射程を行政処分にどこまで及ぼすべきかという観点からこの運用を正面から問う訴訟を係争中です。現在進行形の重要論点として、事案の見通しを立てる際に踏まえておくべき点です。

違反審査の段階から何を争うべきか

退去強制手続は、入国警備官の違反調査、入国審査官の違反審査(認定)、特別審理官の口頭審理(判定)、法務大臣への異議申出という順に進みます。在留特別許可は最後の異議申出段階の判断ですが、実質的な勝負は違反審査の段階で決まっています。

平成18年の事例を見ると、この点は明瞭です。不許可群では「調査で別居が判明」(第16事例・第21事例)、「生活の本拠が供述と異なる」(第14事例)、「夫婦間の申立てに著しい齟齬」(第24事例)という認定が結論を支えています。いずれも違反調査・違反審査の段階で入国警備官・入国審査官が積み上げた事実です。他方、許可群では「書類の不備により届出が遅れた」「妻の親族も承知している」(第19事例)、「夫の親族が婚姻を承知している」(第1事例)という認定が結論を支えています。

つまり、争点は事実の評価である以上に、事実の説明の一貫性です。住民票・賃貸借契約・家計や送金の記録・写真・親族や近隣の陳述を早い段階で揃え、本人と配偶者の説明が食い違わないよう準備しておくことが実際的です。医療上の必要性を主張する場合は、診断書に加えて本国の医療体制に関する客観的資料を揃える必要があります。

あわせて、認定・判定に対する不服を留保せずに従うと争点が事実上封じられるため、口頭審理の請求と異議申出を適切に行う必要があります。退去強制令書の発付後の事情変更は原則として考慮されないため(現行ガイドライン注4)、婚姻届や認知を令書発付後に整えても間に合わない場合があります。

公表事例に同じ類型がなくても諦める必要はない

平成18年分は許可25件(実際の掲載24件)・不許可25件の抜粋です。同年の実際の許可件数はこれをはるかに上回っており、公表されているのはごく一部にすぎません。不許可事例に自分と似た事情が載っていることは、直ちに結論を意味しません。

当事務所が担当した不法就労助長の事案では、入管庁の公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら、在留特別許可を獲得しています(許可を得た後も、違反認定処分そのものの取消しを争っています)。平成18年不許可群の第5事例が、まさに自ら経営する店で外国人を不法就労させた類型であることを踏まえると、公表事例の傾向は出発点であって結論ではないことがよく分かります。もっとも容易な道ではなく、結果をお約束できるものでもありません。どの許可事例をどう引き、どの不許可事例との差異をどう論ずるかという設計が重要になります。

当事務所のご案内

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の方を中心とする外国人の刑事弁護と入管手続に注力しています。松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当いたします。

当事務所は、不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に瀕した女性の事案において、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得しました。この事件では、あわせて「退去強制事由には故意・過失が不要」とする従来の実務を覆すべく、責任主義・過失責任主義の射程を問う訴訟を係争中です。在留特別許可を得た後も、違反認定処分そのものの取消しを争っています。

また、観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻と認知が未了で当局から一旦受理されなかったところ、憲法的な観点から当局と交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な証拠を集め、入管当局の過去の許可事例を分析することで1度の申請で在留特別許可を獲得しています。刑事段階では、特殊詐欺の出し子とされた20代女性について、指示役からの欺罔・脅迫的な状況と犯意の不存在を総合的に主張して不起訴処分を獲得しました。

当事務所の基本方針は、不起訴処分の獲得を最優先に据えることです。多くの罪名では、執行猶予判決を得ても結果として退去強制に至ります。そのため起訴前の段階から見通しを立て、刑事処分の内容そのものを動かすことを目指します。

松村弁護士は、接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当いたします。事務員や若手弁護士による代行は行いません。あわせて、外国人事件に精通した中国語の専属通訳が常駐しています。捜査機関が指定する通訳とは別に、依頼者ご本人のために動く立場の通訳です。刑事手続が終わった後の在留資格の更新・変更についても、提携する行政書士と連携してワンストップで対応いたします。

結語

平成18年の事例が示すのは、基準が明文化されても、結論を左右するのは生活の実体だという点です。医療の必要性、子との関係、同居と扶助の積み上げは、いずれも発覚の前から存在していた事実です。だからこそ、逮捕直後や入管に出頭する前の段階で、何を積極要素として立証できるかを弁護人と検討しておくことが大切です。

本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。

本記事は2026年8月時点の情報です。

執筆者

松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士

第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)

舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)

中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。

覚醒剤取締法違反(営利目的所持)での無罪判決獲得、特殊詐欺事案での不起訴処分獲得、難関とされた在留特別許可の獲得等の解決実績を有する。

舟渡国際法律事務所

ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/

微信ID:matsumura1119

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舟渡国際法律事務所
住所 : 東京都豊島区高田3丁目4-10布施ビル本館3階
電話番号 :050-7587-4639


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