平成15年・母の離婚・帰国後に大学入試に失敗して不法残留、国立大学に合格して在学中に出頭申告した男性に在留特別許可|留学1年(平成15年許可第23事例)
2026/08/07
事例の概要
学業を続ける意思と実績が正面から評価された事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成15年の在留特別許可26件のうち第23事例です。本人は東アジア出身の23歳男性で、1997年に「定住者6月」で、日本人男性と婚姻した母に伴われて入国しました。母はその後離婚して本国に帰国しています。本人は学業を希望して「就学」に変更しましたが、大学入試に失敗して不法残留となりました。翌年に国立大学に合格し、在学中の2001年に自ら出頭申告しています。結果は留学(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成15年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、判断基準は公表されておらず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭して不法滞在を申告したこと。加えて、別表第一の在留資格の該当性を有することも同じ項目に掲げられています。本件では国立大学に在学しており、留学の該当性が現に備わっていました。
- 積極要素・その他:入国の経緯に本人の違法な関与がなく、母の離婚と帰国という自らの意思によらない事情で在留の基礎を失ったこと。
- 消極要素・第2の6と第2の5:不法残留と、その期間。入試の失敗から出頭までは数年です。
結論を分けた一線はどこか
許可の内容が定住者や日本人の配偶者等ではなく留学であることが、この事例の性格を端的に示しています。家族関係で天秤を傾けたのではなく、在留資格の該当性が現に存在する点が評価されたと読めます。国立大学への合格という客観的な事実が、学業継続の意思の裏づけになったと考えられます。同じ年の第25事例も大学在学中の学生に留学(1年)が認められた事案で、学業の継続が独立した積極要素として働き得ることが分かります。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、在留資格の該当性を先に整えることです。在留特別許可を求める場面でも、正規の在留資格の要件を満たしていることを示せれば、判断は大きく動きます。在学証明、成績、学費と生活費の負担の見込み、卒業後の予定を、資料として揃えておく意味があります。学校側の受入れの継続に関する書面も有効です。
第2に、現行運用との違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情が法律上明示されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのも令和6年改定であり、当時と同じ結論が今も導かれるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
公表があったのは許可26件のみで、不許可事例はありません。学業を理由とする主張が認められなかった事案があったのかどうかは、この年の資料からは分かりません。事例集は各年の抜粋であり、そこに似た例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
不法就労助長罪に問われ強制退去の危機に至った女性の事案では、公表事例に不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、在特の取得後もなお違反認定処分そのものの取消しを求める訴訟を係争中です。退去強制事由の判断に故意・過失を要しないとする従来の実務の当否を、正面から問うものです。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
学業の継続は、客観的な資料で裏づけられれば独立した主張になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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