平成15年・短期滞在15日で入国して約11年不法残留、日本人男性と婚姻し子1人を得て出頭申告して在留特別許可|日本人の配偶者等1年(平成15年許可第16事例)
2026/08/07
事例の概要
10年を超える不法残留の後に許可された事例です。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成15年の在留特別許可26件のうち第16事例です。本人は東アジア出身の30歳女性で、1991年に「短期滞在15日」で入国した後、不法残留の状態になりました。2002年に日本人男性と婚姻し、夫婦間に子が1人あります。同じ2002年に自ら出頭申告しています。結果は日本人の配偶者等(1年)です。入国から出頭までは約11年で、その大部分が不法残留の期間に当たります。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成15年当時、在留特別許可の判断基準は公表されていません。第一次ガイドラインの策定は平成18年10月であり、本件は法務大臣の広範な裁量による個別判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。
- 積極要素・第2の2(1)(ウ):日本人と法的に婚姻し、夫婦間に子があること。
- 積極要素:本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。明示は令和6年3月改定によります。
- 積極要素・第2の9:婚姻と同じ年に自ら出頭して申告したこと。
- 消極要素・第2の5と第2の6:約11年に及ぶ不法残留。ここが本件で最も重い消極要素です。
結論を分けた一線はどこか
10年を超える不法残留を覆したのは、婚姻の実体と子の存在、そして自主的な出頭であったと読めます。同じ年の第10事例は、就労資格で入国し3回の更新を経て約6年で出頭申告した事案で、許可は日本人の配偶者等(3年)でした。同じ家族関係でも、正規在留の履歴と違反期間の長短が許可の在留期間に反映されている可能性があります。もっとも、この年の資料だけでは確かめられません。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、長期の不法残留を今どう扱うかです。本件で最も注意を要するのは、不法在留期間の長期化が令和6年改定で明示的に消極要素と位置づけられた点です。当時は積極にも消極にもなり得るとされ、長く日本にいたこと自体が生活基盤の証明として働く場面もありました。現在は、期間の長さを打ち消す方向の事情、すなわち地域社会との関係、納税、第三者による支援などを、意識的に積み上げる必要があります。
第2に、手続の変化です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情が法律上明示されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でしたから、立証の責任を事実上申請者側が負う場面が増えています。過去の許可事例を分析して同種事情との均衡を主張する手法が、より重要になっています。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この年の公表は許可26件のみで、不許可事例は含まれません。10年を超える不法残留で許可された例がある一方、同じ期間で許可されなかった例は示されておらず、当時の線引きは推測にとどまります。事例集は抜粋であり、似た例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局から一旦不受理とされた婚姻・認知を憲法的観点からの交渉で成立させ、入管当局の過去の許可事例を分析して1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
長期の不法残留は、現在の運用では正面から消極要素です。それを打ち消す事情の積み上げが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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