平成15年・法律上の婚姻がなく事実婚のまま認知された子2人を養育する女性に在留特別許可|不法入国から約11年でも定住者1年(平成15年許可第14事例)
2026/08/07
事例の概要
婚姻届を出していなくても、子の認知があれば評価は大きく変わります。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成15年の在留特別許可26件のうち第14事例です。本人は東南アジア出身の38歳女性で、1992年に成田から不法入国しました。その後、日本人男性と交際し、2000年と2001年に子を2人出産しています。子はいずれも認知されており、事実婚として監護養育していました。2001年に自ら出頭申告し、結果は定住者(1年)です。入国から許可までは約11年です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成15年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、判断基準は公表されておらず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。
- 積極要素・第2の2(1)(イ):認知により日本人の実子となった未成年の子2人を、相当期間同居して監護養育していること。法律上の婚姻がなくてもこの要素に当たります。
- 積極要素:本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。明示は令和6年3月改定によります。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭して不法滞在を申告したこと。
- 消極要素・第2の6と第2の5:不法入国と、約11年に及ぶ不法な在留期間。
結論を分けた一線はどこか
決定的だったのは、子2人がいずれも認知されていた点であったと読めます。認知があれば、子は日本国籍を有する日本人の実子として扱われ、その監護養育者である本人は第2の2(1)(イ)の積極要素に直接乗ります。仮に認知がなければ、この事案は不法入国から約11年という数字だけが残ることになりました。許可された資格が日本人の配偶者等ではなく定住者であるのは、本人が日本人と法律上の婚姻をしていないことに対応するものと考えられます。
弁護士のコメント
2点を挙げます。
第1に、認知の手続を先に整えることです。当事務所が担当した事案でも、婚姻と認知が未了のまま在留資格を失い、当局から一旦は届出を受理されないという事態が生じました。憲法的な観点から交渉して婚姻と認知を成立させ、その上で在留特別許可を得ています。身分関係の手続は入管手続の前提であり、順序を誤ると立証の土台が失われます。
第2に、現行運用との距離です。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、約11年という期間は今日ではより重く見られる可能性があります。また令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も明示されました(同条5項)。当時の結論をそのまま持ち込むことはできません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成15年分は許可事例26件だけの公表で、不許可事例はありません。当時の公表は透明性の第一歩でしたが、対比のできない片側だけの資料でした。事例集は抜粋であり、そこに似た例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失い、不法滞在で逮捕・起訴された事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、過去の許可事例の分析を踏まえて1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
婚姻届がない場合でも、認知の有無で見通しは大きく変わります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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