平成15年・インドシナ定住難民の女性が万引きで有罪となり勾留中に在留期限が切れても在留特別許可|夫の疾病と子2人の就学が評価された事例(平成15年許可第3事例)
2026/08/07
事例の概要
刑事事件をきっかけに在留資格を失っても、それだけで結論が決まるわけではありません。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料の、平成15年の在留特別許可26件のうち第3事例です。本人は東南アジア出身の32歳女性で、1994年にインドシナ定住難民として入国し、定住者の夫と本邦で出生した子2人とともに在留していました。スーパーで食料品を万引きして逮捕され、身柄を拘束されている間に在留期限が経過しています。刑事処分は懲役10月執行猶予3年でした。夫はC型肝炎を抱え、子2人は小学校3年と2年に就学していました。結果は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成15年は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前で、判断基準は公表されておらず、法務大臣の広範な裁量による個別判断でした。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)への当てはめです。
- 積極要素・第2の4:インドシナ難民として本邦に入国した経緯。現行ガイドラインが明示する類型です。
- 積極要素・第2の2(2):定住者の在留資格を持つ夫との婚姻関係。別表第二の在留資格者との家族関係です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けている子2人と、その監護養育者であること。
- 積極要素・第2の7(1):治療を要する親族の看護の必要性。夫の疾病がこれに関わります。
- 消極要素・第2の6:窃盗による有罪判決と、これに伴う不法残留。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、難民として入国した経緯と、家族4人が本邦で生活の基盤を築いていたという事実の重みであったと読めます。刑事処分は執行猶予付きにとどまり、在留期限の経過は身柄拘束という事情の下で生じたものでした(懲役は事例集公表当時の原典表記であり、現行法では拘禁刑に相当します)。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、刑事段階での不起訴です。1年を超えない自由刑で全部執行猶予が付いた場合、入管法24条4号リには当たりません。本件で退去強制事由を生じさせたのは、身柄拘束中に在留期限が経過した点です。逮捕直後の72時間は勾留の可否を左右しますから、起訴前の段階で不起訴処分を獲得し早期に身柄が解放されていれば、期限内に更新の申請ができた余地があったと考えられます。
第2に、現在との差です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、不法在留期間の長期化が消極要素として明示されたのは令和6年改定です。当時と同じ結論が今も導かれるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成15年分について公表されたのは許可26件だけで、不許可事例は示されていません。当時の透明性は限定的で、どこで線が引かれたのかを対比から読み取れませんでした。事例集はいずれの年も抜粋であり、そこに似た例がないことは許可の可能性がないことを意味しません。当事務所は、公表事例に不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
覚醒剤取締法違反(営利目的所持)で起訴された依頼者について、証拠の徹底した分析と被告人質問・反対尋問により無罪判決を獲得した実績があります。裁判員裁判対象事件や報道された重大事件にも多数対応しています。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、当局との交渉により婚姻・認知を成立させ、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
軽微に見える事件でも、身柄拘束が在留資格の帰趨を左右します。早期の身柄解放と不起訴の獲得が要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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