平成15年・日本人母から本国で出生した男性が出頭申告して在留特別許可|在留約17年の不法残留でも日本人の配偶者等3年が認められた事例(平成15年許可第2事例)
2026/08/07
事例の概要
親の一方が日本人でも、生まれた場所と時期によって日本国籍がない場合があります。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料に収められた、平成15年の在留特別許可26件のうち第2事例です。本人は東アジア出身の41歳男性で、1961年に本国で同国人の父と日本人の母との間に出生し、本国で成育しました。1986年に「4-1-16-3」で入国しています。これは平成元年改正前の在留資格の表記です。その後、更新と変更を経てから不法残留となり、2003年に自ら出頭申告しました。他に法令違反はありません。結果は日本人の配偶者等(3年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成15年当時、在留特別許可の判断基準は公表されていませんでした。第一次ガイドラインは平成18年10月の策定ですから、この事例は法務大臣の広範な裁量による個別判断です。整理の便宜として現行ガイドライン(令和6年3月改定)に当てはめます。
- 積極要素・第2の2(1)(ア):日本人の母の実子であること。許可された資格が日本人の配偶者等である点も整合します。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭して不法滞在を申告したこと。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間の長期化。入国から許可までは約17年に及びます。
- 消極要素・第2の6:不法残留の状態にあったこと。
結論を分けた一線はどこか
決定的だったのは、日本人の実子という身分関係と、自ら出頭したという態度の組合せであったと読めます。許可された在留期間が1年ではなく3年であることは、身分関係の安定性が高く評価されたことを示すものと考えられます。もっとも、昭和59年改正前の国籍法は父系優先の血統主義を採り、日本人の母から生まれても日本国籍を取得しない場合がありました。本人の国籍の具体的な経緯は記載からは判明しません。
弁護士のコメント
3点を挙げます。
第1に、出頭申告の意味です。摘発や逮捕で発覚した場合と比べ、自ら申告した事案は許可側に振れやすい傾向が旧運用から現在まで一貫して見られます。ただし出頭の前に、身分関係と生活の実体を示す資料を揃えておくべきです。
第2に、現行運用との違いです。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのは令和6年改定であり、当時は積極にも消極にもなり得るとされていました。約17年という期間を、そのまま今日に持ち込むことはできません。
第3に、手続の変化です。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)で申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情も法律上明示されました(同条5項)。当時の恩恵的措置とは構造が異なります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この年の公表は許可事例26件のみで、不許可事例はありません。比較の対象がないため、公表事例から読み取れる傾向は限られます。裏返せば、自分と似た事情の許可例が見つからないことも、許可の可能性がないことを示すものではありません。当事務所は、公表事例では不許可が並ぶ不法就労助長の類型で在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、公的書類の乏しい状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在を総合的に主張し、不起訴処分を獲得しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
日本人の親から生まれたのに国籍がない場合、身分関係の立証が出発点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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