平成15年・日本人父に監護養育され小学4年に就学していた本邦出生の子に在留特別許可|在留資格取得の手続がとられず不法残留となった事例(平成15年許可第1事例)
2026/08/07
事例の概要
日本で生まれたのに在留資格がない、という状態は現実に起こります。法務省入国管理局が平成20年12月に公表した資料に収められた、平成15年に在留特別許可をした26件のうちの第1事例です。本人は、日本人の父と、不法在留中であった東南アジア出身の母との間に本邦で出生しましたが、在留資格取得の許可を受けなかったため不法残留の状態になっています。父母は内縁関係で、出生から約1年後に別居し、以後は日本人の父の監護養育を受けて、小学校4年に就学していました。結果は定住者(1年)です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
以下は令和6年3月改定の現行ガイドラインへの当てはめです。もっとも、平成15年の判断は第一次ガイドライン策定(平成18年10月)より前のもので、当時は判断基準が公表されておらず、法務大臣の広範な裁量の下で個別に判断されていました。
- 積極要素・第2の2(1):日本人の父から相当期間にわたり同居して監護養育を受けている未成年の子という関係にあります。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けている点。小学校4年までの就学が認定されています。
- 積極要素:本邦で家族とともに生活するという子の利益の保護の必要性。これが明示されたのは令和6年3月改定です。
- 消極要素・第2の6:不法残留の状態にあったこと。
- 消極要素・第2の5:不法在留期間の長期化。出生時からの期間がそのまま違反期間となります。
結論を分けた一線はどこか
天秤を傾けたのは、本人が日本で生まれ育ち、日本人の父の下で就学を続けていたという生活の実体であったと読めます。不法な状態が生じた原因は、出生後に必要な手続がとられなかったことにあり、幼少の本人に帰責性を求められる場面ではありません。なお平成15年分は不許可事例が公表されていないため、反対の結論の事例と直接対比することはできません。不許可事例の公表が始まるのは平成17年分からです。
弁護士のコメント
2点を述べます。
第1に、現在との違いです。令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)により申請手続が新設され(入管法50条1項)、考慮事情が法律上明示されました(同条5項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。不法在留期間の長期化が明示的に消極要素とされたのも令和6年改定であり、同じ事情でも評価は動き得ます。
第2に、用意すべき資料です。出生に関する届出、父子関係の法的な状況を示す書類、在学証明と学校生活の記録、養育の実態を示す家計の資料が中心になります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しませんから、提出は早い段階が望ましいところです。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成15年分は許可事例26件のみが公表され、不許可事例は公表されていません。事例集はどの年も抜粋で、その年の許可の全部を示すものではありません。似た事情の許可例が見当たらないことは、許可の可能性がないことを意味しません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
日本で生まれた子に在留資格がない状態は、手続の遅れから生じることがあります。就学と養育の実体を資料で示せるかが要点です。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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