平成16年・父母の身分詐称で上陸許可を取り消された大学生に在留特別許可|小中高を日本で終えた本人に留学1年(許可第27事例)
2026/08/07
事例の概要
本人の行為ではない事情で在留の基礎を失った事案です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第27事例で、本人は東アジア出身の20歳男性。1995年に、日本人の子であるなどと装った父母に伴われ「定住者1年」で入国しました。日本で小学校、中学校、高校に進学しています。その後、身分の詐称が発覚し、上陸許可等が取り消されました。父母は退去強制となりましたが、本人は大学に在学し、学費と生活費の援助を受けられる状況でした。結果は「留学(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は判断基準が非公表の時期で、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けたこと。小中高を日本で過ごしています。
- 積極要素・第2の9:別表第一の在留資格の該当性。大学在学と学費等の援助が確保されており、「留学」の要件を満たすと評価されたと読めます。
- 積極要素:在留の基礎を失った原因が父母の行為であり、本人に帰責性がないこと。
- 消極要素・第2の6:上陸許可等の取消しにより在留の資格を失ったこと(該当する号は条文に当たって確認する必要があります)。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法は、積極要素が消極要素を明らかに上回るかを見ます。本事例では、日本での就学歴と、不法な状態が生じた原因が本人にないことが評価されたと読めます。平成17年の不許可第24事例は、在留特別許可を一度得た後に更新申請をせず不法残留となり、改ざんした合格証明書を提出していた事案で不許可でした。同じ学生の身分でも、本人自身に虚偽が認められるかどうかで結論は分かれると考えられます。平成16年分は許可事例のみの公表です。
弁護士のコメント
第1に、帰責性の切り分けです。親の行為によって在留の基礎が失われた場合、本人の認識と関与を明確に区別して主張することが要点になります。戸籍や入国の経緯に関する資料、本人の年齢と当時の立場を示す資料が中心です。
第2に、就学の継続を支える条件です。在学の証明、学費と生活費の負担者、卒業までの見込みを具体的に示すことで、別表第一の在留資格の該当性を裏づけられます。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続が新設された現在(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行、入管法50条1項。考慮事情は同条5項)と同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年分は許可28件のみが公表され、不許可事例と読み比べることができません。抜粋に載っていないことから結論を導くことはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄を拘束された段階からの積み上げが結論を左右した例です。
海外のSNSでの侮辱被害について、日本の警察と国際刑事警察機構(インターポール)の捜査により刑事告訴が受理された事例を扱いました。国境を越える事案の窓口としても対応しています。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
親の行為と本人の帰責性は分けて主張する必要があります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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