平成16年・監視のもとで稼働させられていた女性が逃れて出頭し在留特別許可|人身取引被害者に特定活動3月(許可第24事例)
2026/08/07
事例の概要
支配から自ら逃れた後に出頭した事案です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第24事例で、本人は東南アジア出身の21歳女性。2004年に名古屋で不法入国し、監視のもとで稼働させられていたとされています。その状況から逃れ、自ら出頭しました。結果は「特定活動(3月)」で、本邦での保護を続けるための在留資格が認められています。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は第一次ガイドライン(平成18年10月策定)より前の運用で、判断基準は公表されていませんでした。当時は法務大臣の広範な裁量による個別判断です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した整理です。
- 積極要素・第2の7:人道上の配慮の必要性。支配下に置かれていた状況からの保護が中心にあります。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭したこと。
- 現行法では、人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留する場合が、在留特別許可の対象として法律上明示されています(入管法50条1項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。
- 消極要素・第2の6:不法入国。被害者性が認められる場合、この評価は大きく変わります。第2の3(エ)には当たりません。被害者と認められる事案は、売春に関わる消極要素の事例とは全く異なる評価を受けます。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成16年の第23事例と同様、本事例も「特定活動(3月)」であり、帰国を希望した第19事例・第20事例の「短期滞在(90日)」とは異なる内容です。共通するのは、被害者と認定されたことが判断の中心にあるという点です。他方、平成17年の不許可事例には、売春に関わる業務への従事で有罪となり許可されなかった例(不許可第22事例)があります。支配下に置かれた被害者と評価されるかどうかで結論が正反対になると考えられます。平成16年分は不許可事例の公表がありません。
弁護士のコメント
第1に、逃れた直後の対応です。所持金や身分事項の資料を持たない状態で出頭することが多く、事情を説明する条件が整っていません。被害の経過を時間の流れに沿って整理し、支援機関の関与を得ておくことが要点になります。
第2に、刑事手続との関係です。不法入国について刑事処分の対象となる場合も、被害者としての事情が正確に伝われば処分が変わり得ます。断定はできませんが、不起訴処分の獲得を目標に据える意味があります。本人のために動く通訳の確保が、その前提になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年に公表されたのは許可28件のみで、不許可の側は一件も示されていません。抜粋にすぎない資料から自分の可能性を測ることはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
卸業の依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。被害を受けた側の立場からの事件解決にも対応しています。
特殊詐欺の受け子として複数回再逮捕された事案では、徹底した取調べ対応と不当な取調べへの抗議を積み重ね、全件について不起訴処分を獲得しました。身柄を拘束された段階からの積み上げが結論を左右した例です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
支配から逃れた直後の状況は不安定です。支援機関と弁護士の関与が要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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