平成16年・在日大使館に助けを求めて出頭した人身取引被害者に在留特別許可|特定活動3月が認められた事例(許可第23事例)
2026/08/07
事例の概要
被害を受けた方が自ら助けを求めて手続に入った事案です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第23事例で、本人は南米出身の28歳女性。2002年に関西で不法入国し、借金と脅迫のもとで稼働を強いられていたとされています。在日の大使館に助けを求め、そこから出頭に至りました。結果は「特定活動(3月)」でした。帰国を前提とする許可ではなく、本邦での保護を続けるための在留資格が選ばれたと読めます。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年当時は判断基準が公表されておらず、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した整理です。
- 積極要素・第2の7:人道上の配慮の必要性。支配下からの離脱と保護が中心にあります。
- 積極要素・第2の9:自ら出頭したこと。大使館という第三者の関与も、事情を裏づける要素になります。
- 現行法では、人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留する場合が、在留特別許可の対象として法律上明示されています(入管法50条1項)。
- 消極要素・第2の6:不法入国。もっとも被害者性が認められる場合、評価は大きく異なります。第2の3(エ)の消極要素には当たりません。被害者と認められる事案は、自ら売春に関わった事例とは全く異なる位置に立ちます。
結論を分けた一線はどこか
同じ平成16年の第19事例と第20事例は「短期滞在(90日)」で、帰国を希望する方に帰国のための在留を認めたものと読めます。これに対し本事例は「特定活動(3月)」であり、本邦にとどまって保護を受ける形が選ばれています。被害者としての保護という積極要素が共通する一方、その後の希望に応じて許可の内容が使い分けられていると考えられます。なお平成16年分は不許可事例が公表されていないため、被害者性が認められなかった場合の扱いを同じ年の資料から知ることはできません。
弁護士のコメント
第1に、相談の経路です。本事例では大使館が入口になっています。支配下にある方が単独で警察や入管に向かうことは容易ではありませんから、大使館、支援団体、弁護士といった複数の窓口があること自体に意味があります。
第2に、保護の記録です。公的機関や支援団体が作成した記録は、後の判断で被害の構造を示す中心的な資料になります。本人のために動く通訳を確保し、事情が正確に残るようにすることも大切です。当時は職権発動による恩恵的措置であり、申請手続が新設された現在(令和5年改正入管法・令和6年6月10日施行、入管法50条1項。考慮事情は同条5項)と同じ結論になるとは言えません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年分は許可28件の抜粋にとどまり、不許可事例の公表がありません。似た事例が載っていないことを、道がないことの根拠にはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
卸業の依頼者が取り込み詐欺の被害に遭った事案では、刑事告訴を端緒として相手方を特定し、7,500万円の解決金を獲得しました。被害を受けた側の立場からの事件解決にも対応しています。
特殊詐欺の出し子とされた20代女性の事案では、指示役からの欺罔や脅迫的な状況、犯意の不存在などを総合的に主張し、不起訴処分を獲得しました。起訴前の段階で処分を止めることが、在留資格を守る最短の道になる場面があります。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
支配下にある方が外部とつながる経路をどう確保するかが、最初の課題になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
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