平成16年・人身取引の被害者と認定された10代女性に帰国支援のための在留特別許可|短期滞在90日が認められた事例(許可第19事例)
2026/08/07
事例の概要
被害者としての保護を目的とする許可です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第19事例で、本人は南米出身の女性、資料では当時17歳とされています。2003年に関西で不法入国し、来日の費用の名目で500万円の借金を負わされ、支配下で稼働を強いられていました。送検されましたが、人身取引の被害者であると認定されています。本人は帰国を希望し、結果は「短期滞在(90日)」でした。帰国のための在留を認める趣旨の許可と読めます。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は判断基準が非公表の時期で、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の7:人道上の配慮の必要性。被害者としての保護と帰国支援が中心にあります。
- 現行法では、人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留する場合が、在留特別許可の対象として法律上明示されました(入管法50条1項)。当時は職権発動による恩恵的措置でした。
- 消極要素・第2の6:不法入国。もっとも、被害者性が認められる場合には、その評価は大きく異なります。
- 第2の3(エ)(自ら売春を行い又は他人に行わせる等の行為)には当たりません。被害者と認定される事案は、売春に関わる消極要素の事例とは全く異なる位置に立ちます。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法は、積極要素が消極要素を明らかに上回るかを見るものです。本事例では、被害者と認定されたことが判断の中心にあったと読めます。平成17年の不許可第1事例は、日本人と婚姻していた女性が風営法違反で罰金となり、供述から売春業務への従事が認められ、配偶者と長期に別居していた事案で不許可でした。外形が似て見える事情でも、支配下に置かれた被害者と評価されるかどうかで、結論は正反対になると考えられます。平成16年分は許可事例のみの公表です。
弁護士のコメント
第1に、刑事手続における立場です。送検されても、被害者としての事情が正確に伝われば処分は変わり得ます。事実関係を早い段階で整理し、不起訴処分の獲得を目標に据えることが、その後の在留の判断にも影響します。断定はできませんが、被害の構造を示す資料の有無が分岐点になります。
第2に、通訳の体制です。捜査機関が用意する通訳とは別に、本人のために動く通訳がいるかどうかで、供述に被害の実情が反映されるかが変わります。年少の方の事案では、児童の保護に関わる公的機関の記録も重要な資料になります。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
この資料には、人身取引の被害者に関する事例は原則として統計から除かれる旨の説明がありますが、平成15年と16年の一覧には含まれています。収録の範囲自体が限られており、平成16年は不許可事例も公表されていません。掲載の有無から可能性を測ることはできません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
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結語
被害を受けた立場にある方の事案では、被害の構造を正確に伝える体制が要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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