平成16年・家族4人が全員で出頭申告し一家に在留特別許可|高校1年と小学2年の子の就学が評価された事例(許可第15事例)
2026/08/07
事例の概要
家族の全員が揃って出頭した事案です。平成16年に在留特別許可をした28件のうちの第15事例で、対象は南アジア出身の夫婦と長女、本邦で出生した長男です。夫婦は1990年と1993年に「短期滞在」で入国しました。1995年に偽造旅券で長女を呼び寄せており、長女は不法入国となります。1996年に長男が出生し、いずれも不法残留の状態でした。2002年に家族全員で出頭申告しています。夫は自営で生活は安定し、長女は高校1年、長男は小学2年で就学していました。結果は一家全員「定住者(1年)」です。
ガイドラインのどの評価要素に当たるか
平成16年は判断基準が非公表の時期で、第一次ガイドラインの策定は平成18年10月です。以下は現行ガイドライン(令和6年3月改定)に置き直した読み方です。
- 積極要素・第2の2(3):本邦の初等中等教育機関で相当期間教育を受けた子と、その監護養育者。
- 積極要素・第2の9:家族全員での出頭申告。子の利益の保護の必要性も令和6年改定で明示されました。
- 消極要素・第2の5:12年前後の不法在留期間。
- 消極要素・第2の3(ウ):偽造旅券の使用は、公的書類の偽変造等に関わる重い消極要素です。第2の6の不法入国・不法残留も消極要素です。
結論を分けた一線はどこか
第3の判断手法は、積極要素が消極要素を明らかに上回るかを見ます。本事例では、子の長期の就学と家族全員の出頭が、偽造旅券に関わる経緯を上回ったと読めます。もっとも、この点は現在そのまま当てはめられません。公的書類の偽変造等が特に考慮する消極要素として明示され、不法在留期間の長期化も令和6年改定で明示的な消極要素とされました。平成17年の不許可第24事例は、在留特別許可を一度得た後に再び不法残留となり、改ざんした証明書を提出していた事案で不許可でした。書類の偽りが結論を左右した例です。平成16年分に不許可の公表はありません。
弁護士のコメント
第1に、家族全員で出頭する場合の準備です。子の在学の記録、本国での就学が困難である事情、家計の状況、地域との関係を、家族ごとに整理しておくことが要点になります。注4は令書発付後の事情変更を原則として考慮しません。
第2に、書類の偽りが関わる事案の難しさです。当時許可された事情でも、現在は消極要素として明示されています。当時は職権発動による恩恵的措置で、令和5年改正入管法(令和6年6月10日施行)による申請手続の新設(入管法50条1項)と考慮事情の明示(同条5項)の前でしたから、当時の結論を現在の見通しに直結させることはできません。
公表されていない事案でも許可はあり得ます
平成16年分は許可28件のみの公表で、不許可事例が示されていないため、傾向を片側からしか読めません。掲載の有無を根拠に諦める必要はありません。当事務所が担当した不法就労助長の事案は、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を得ており、許可後も違反認定処分の取消しを争っています。
当事務所のご案内
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区)は、中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護と入管手続を主たる注力分野とし、松村大介弁護士(第一東京弁護士会・登録番号59077・2019年登録)が担当します。
観光目的で来日した相談者が日本人女性との間に子を授かったものの在留資格を失った事案では、婚姻・認知が未了で当局から一旦不受理とされたところ、憲法的観点から交渉して婚姻・認知を成立させ、国籍国発行の公的書類がほとんど存在しない状況下でも有利な資料を集め、1回の申請で在留特別許可を獲得しました。
不法就労助長罪に問われて退去強制の危機に至った女性の事案では、公表事例では不許可が並ぶ類型でありながら在留特別許可を獲得し、さらに退去強制事由には故意・過失が不要とする従来の実務を正面から問う訴訟を現に係争中です。
多くの罪名では執行猶予判決でも結果として退去強制となるため、当事務所は起訴前段階からの不起訴処分の獲得を最優先目標とします。松村弁護士が接見の初動から公判の結審まで全工程を直接担当します。外国人事件に精通した中国語専属通訳が常駐し、依頼者本人のために動く立場で対応します。刑事手続終了後の在留資格の更新・変更は、提携行政書士とワンストップで対応できます。
結語
家族単位の事案では、家族ごとに積極要素を整理して示すことが要点になります。本記事は一般的な解説であり、個別事案については弁護士に直接ご相談ください。過去の解決事例は個別の事情に基づくものであり、同様の結果を保証するものではございません。
本記事は2026年8月時点の情報です。
執筆者
松村 大介(まつむら だいすけ)/弁護士
第一東京弁護士会所属(登録番号:59077/2019年登録)
舟渡国際法律事務所(東京都豊島区高田三丁目4番10号 布施ビル本館3階)
中国籍の依頼者を中心とする外国人刑事弁護・入管手続を主たる注力分野とする。
舟渡国際法律事務所
ウェブサイト:https://matsumura-lawoffice.jp/
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